パウエル議長の緩和期待はどう捉えるべきなのか

今週もいろいろなことが起きましたが、一番のサプライズはなんと言ってもパウエル議長の発言だったかなという感じです。予想外に金融緩和に関しての言及をし、市場を動揺させました。その糸については正直なんとも言えませんが、多くの人が戸惑い、その意図について考えを巡らせていることでしょう。

パウエル議長の発言は市場の動揺を誘う

今週のFOMCにて、政策金利の据え置きが決定されましたが、その後のパウエル議長の発言は多くの関係者の注目を集めることになりました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が今週、すでに金融緩和への転換を織り込んでいた市場をさらに前のめりにするような発言を行ったことで、市場関係者からはとまどいの声が一部で上がっている。

  15日には、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が3月利下げを議論するのは時期尚早だと発言。市場の高揚感を抑えようとけん制したが、今週の値上がりを巻き戻すには至らなかった。

  フランクリン・テンプルトンのソナル・デサイ債券担当最高投資責任者(CIO)はブルームバーグテレビジョンで、パウエル議長の記者会見での発言について「困惑している」と述べた。「金利低下の動きをあおることが必要だと議長がなぜ判断したのか全く分からない。金利の上昇に伴い、適切な金融引き締め環境をもたらす市場の役割についてこれまで認めていたことを踏まえればなおさらだ」と述べた。

  その上で「米金融当局が一定の慎重姿勢を示したいと考えれば、向こう数週間に市場の熱狂を少し抑えようとするだろう」と続けた。

  ゴールドマン・サックス・グループの金融環境指数(FCI)は今週低下し、国債利回りが急上昇していた10月下旬の水準を1ポイント余り下回った。

  ウィリアムズ総裁の発言を受けた後でも、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合に連動するスワップ契約は、来年およそ150ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを織り込んでおり、3月利下げ開始の予想確率は約8割に上っている。

  アクサ・インベストメント・マネジャーズでコア投資の最高投資責任者(CIO)を務めるクリス・イッゴ氏は、ウィリアムズ氏の発言に先立つ15日付けのリポートで「利下げのタイミングに関しては、米金融当局から押し戻す発言が幾分出てきそうだが、利上げ終了と金融緩和を特徴とするサイクルの次の局面という点に関してはもう隠されていない」と指摘。「市場の勢いをシフトさせるのは難しい」とみている。

引用:bloombergより

このようにパウエル議長の発言は多くの人にとって意外なものだったようです。事実、この発言後に為替市場では大きくドルが売られる展開となり、ドル円レートも大きく円高にシフトすることになりました。それだけ今回の発言は予想外だったということの現れだと思います。それだけに市場関係者皆がパウエル議長の真意はどこにあるのだろうと困惑しているところです。この発言の影響は非常に大きく、後に発言の影響を和らげようとする声がFRB内部からも上がってきましたが、とても落ち着く様子は見られません。しばらくはこの発言の意図について考える時期となりそうです。

発言の真意はわからない

今週のこの発言は本当に意外だったなという印象があります。最近では一番のサプライズだったと個人的には思います。なぜここまで金融緩和に対する期待を煽る必要があったのでしょうか?実際、市場では最近の経済指標の弱さから来年早期にも金利が引き下げられるだろうとの観測が出ていました。しかし、それはやはり楽観的すぎるだろうという声も多く上がっていましたし、個人的には私もそう思っていました。それだけに今回のパウエル議長の発言というのは意外というほかありません。ただでさえ緩和期待が高まっているところへ諌めるのではなく、油を注ぐようなことをする理由が全くわかりません。これまでのパウエル議長やFRBの行動を考えれば、実際のデータ次第で金融政策はいくらでも変更してくることが予想されます。つまり金融緩和をするかもしれませんが、予想外に引き締まる可能性だって十分にあるでしょう。そういう意味ではここまで緩和期待を煽るというのは理解不能と言わざるを得ないと言ったところです。おそらくは今後もデータ次第で金融政策は変わってくることでしょう。市場が期待するほどの政策変更は出てこない可能性も十分にあります。そのときに市場が大きく動くかどうかで今回の発言をどの程度市場が受け入れていたのかがわかるのかなという感じがします。個人的には今回の発言についてはあまり鵜呑みにしないほうがいいような気がしています。

まとめ

今日は今週のパウエル議長の発言について考えてきました。正直その真意についてはわからないとしか言えません。しかし、これまでのことを考えればこの発言を持って金融政策が緩和へと変更されるとはならないような気がします。今回のインフレの粘着性の高さを考えれば、予想外にインフレ指標が低下しない可能性も十分に考えられますし、そうであれば躊躇なく高金利を維持、もしくは引き上げるという鼓動も撮ってくると思われます。そういう意味ではあまり真に受けないほうがいいのかなと個人的には思っています。