12月の生産者物価指数は大幅に下落。インフレは確実に落ち着いてきている。

米国のインフレは確実に落ち着いてきています。12月の生産者物価指数は新型コロナウィルスパンデミックが始まって以来の低水準となっており、インフレが確実に抑制されてきていることが改めて確認されることとなっています。まだまだ難しい状況は続いてはいますが、状況は確実に変化してきているといっていいのだろうと思います。

12月の生産者物価指数は大幅に低下

18日に発表された12月の生産者物価指数は市場予想を大きく下回る結果となり、改めてインフレが落ち着いてきていることが確認されました。

昨年12月の米生産者物価指数(PPI)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来の大幅低下となった。ここ数カ月インフレ圧力の緩和が続いており、米金融当局に利上げペース減速の余地を与えている。

  前月比では特に財の価格低下が大きく、中でもエネルギーと食品の値下がりが目立った。

  先週発表された12月の米消費者物価指数(CPI)でも、物価上昇圧力の緩和が示されていた。サプライチェーンの正常化が進み、財の需要が世界的に減速する中、需給バランスは改善しつつある。

  だが米金融当局のインフレとの闘いはまだ、終了から程遠い。中国のゼロコロナ政策転換に伴う経済再開で、商品(コモディティー)価格が下支えされるリスクが生じている。ドルはこのところ軟調で、米国製品の競争力を高めている。タイトな労働市場と消費者の根強いサービス需要が相まって、インフレ率は当局目標を上回る水準にとどまる恐れがある。

  12月は食品価格が前月比1.2%低下と、ここ2年で最大の値下がり。サービスの価格は同0.1%上昇と、4月以来の小幅な伸びにとどまった。サービス価格の上昇は、主に燃料の小売りマージン拡大が反映された。

  食品とエネルギー、貿易サービスを除くPPIは前月比0.1%上昇し、予想を下回る伸びにとどまった。前年同月比では4.6%上昇した。

  生産過程における比較的早い段階での物価を反映する中間財のコストは、前月比2.8%低下と、20年4月以来の大幅マイナス。その約3分の2はディーゼル燃料のコスト低下が要因だった。

引用:Bloombergより

このようにインフレは確実に減速してきています。消費者物価の数値も併せてみてもそれは間違いないのだろうという感じです。そういう意味では状況は確実に変化してきているといっていいでしょう。

経済はさらに悪化

しかしながら、経済は確実に悪化してきています。12月は製造業の現場も小売りも業績が大きく落ち込み、景気は依然として不透明感を増してきています。

昨年12月の米小売売上高は市場予想以上に落ち込み、1年ぶりの大幅減となった。高インフレと急ピッチの利上げを受け、米経済成長を維持してきた消費の堅調さが若干失われつつあることが示唆された。

  12月は13カテゴリーのうち、自動車や家具など10で減少。ガソリン価格が下落していたことを受け、ガソリンスタンドの売上高は4.6%減少した。

  JPモルガン・アセット・マネジメントのボブ・マイケル最高投資責任者(CIO)はブルームバーグに対し、昨年は「中央銀行による非常に積極的な引き締めと量的引き締めが行われた。それが経済に大きな影響を及ぼし始めている」と述べた。

  小売売上高は2022年通年では9.2%増加と、1993年にさかのぼるデータで2番目に大きな伸びを記録した。ただ、この数字には急激な物価上昇も反映されている。

  消費者は昨年の大半でサービスへの支出を増やしたが、12月は低調だった。米小売売上高で唯一のサービス分野である飲食店は0.9%減と、約1年ぶりの大きさで落ち込んだ。

  国内総生産(GDP)の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高は0.7%減少した。

引用:Bloombergより

米製造業の生産が昨年12月に2021年2月以来の大幅減少となった。内外で需要の伸びが減速する中で、製造業の活動がさらに軟化したことが示唆された。

  米製造業は世界経済の軟化や借り入れコストの上昇、消費財の買い控えなど数々の試練に取り囲まれている。リセッション(景気後退)への警戒が広がる中、企業がコスト削減の取り組みとして設備投資を取りやめるリスクもある。

  今回の統計では製造業の設備稼働率が77.5%と、前月から1ポイント下げたことが明らかになった。約1年ぶりの低水準で、長期平均を0.7ポイント下回る。

  生産指数の詳細を見ると、ビジネス機器が2%減少と、21年2月以来の大幅なマイナス。前月と合わせた2カ月での減少率は新型コロナウイルスがパンデミック(世界的な大流行)となって以来の大きさとなった。

  12月の製造業生産では機械や自動車、家具など幅広い分野で落ち込みが見られた。自動車を除いたベースの指数は1.3%低下した。

  公益事業の生産は3.8%上昇。寒冷な天候が暖房需要を押し上げたという。鉱業の生産は0.9%低下。石油・ガス田の掘削は2.6%下げた。

引用:Bloombergより

このように米国の経済は確実に悪化してきています。インフレが抑制されてきていることはいいことですが、経済もかなり危ない状況だといっていいでしょう。そういう意味では非常に不透明感は増してきているといっていいのかなと思います。

まだまだ楽観はできない

生産者物価が落ち着いてきているということはとりあえずよいニュースといっていいでしょう。とにかく今はインフレの抑制が何よりも最優先です。そういう意味では物価の落ち着きを示す指標というのは悪いニュースということはありません。問題はインフレが落ち着くまで経済が持つのかというところです。経済状況はかなり悪化してきてはいますが、労働市場が何とか保っているので今のところはかなりうまくいっているのではないかと思っています。しかし、これだけ経済が悪化してくると雇用にも当然ながら影響は避けられないでしょうし、今後は大きく労働市場も悪化してくることが予想されます。そしてその時にFRBが柔軟な金融政策を行えるのかというとやはり疑問が残ります。落ち着いてきたとはいえ、いまだにインフレは非常に高いままで健在です。そういう状況であればそう簡単に金融を緩めるということはできないでしょう。そうなると景気悪化や雇用の不安定化が起きてもなかなかこれまでのような強力な金融政策での後押しというのは期待できず、さらなる景気後退に陥る可能性というのは十分にあり得るのだろうという感じです。

まとめ

今日は12月の生産者物価指数についてみてきました。インフレは確実に落ち着いてきています。これは非常に良いニュースですが、いかんせんインフレがあまりにも高すぎて、落ち着くまでには相当な時間がかかりそうです。それまで経済や雇用が持ってくれればいいのですが、なかなか厳しいのではないかというのが正直な感想です。ただ、予想外に強い労働市場など思いがけない良い結果も出てきてはいるので何とかいい方向へと予想が外れてくれることを願うばかりです。