SVB破綻によって悲観論が台頭してきた

インフレ懸念が一番の関心事だった米国経済に突如として現れた金融不安が市場を席巻しています。SVBに続いてシグネチャー・バンクも事業停止を発表し、リーマンショックのような金融不安の再来かという声まで出てきています。流石にそこまでの大事にはならないような気がしますが、不安心理は一気に広がり、銀行株を中心に大きく株価は下げることになりました。明らかに市場はパニックに陥っていると言っていいでしょう。

先行きに対する悲観論が台頭している

SVB破綻によって市場には悲観論が大きく台頭してきています。

弱気で知られるモルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、シリコンバレー銀行(SVB)破綻を受けた米当局の支援措置で米国株が反発すればその機会に売ることを勧めた。

  同氏は13日のリポートで「SVBや他の銀行の差し迫った流動性危機を沈静化させるための政府介入によって株価が上昇した場合、売ることを提案する。少なくとも弱気相場の中の新たな底を付けるまでは売りだ」と論じた。

  ウィルソン氏は、SVB破綻とシグネチャー・バンク事業停止は米連邦準備制度の引き締め政策の影響を明瞭にしたと分析。経営難銀行の預金保護を米当局が表明しているため、SVBとシグネチャーの件が2008年の世界金融危機時のような広範なシステミック問題に発展するとはみていないとしながれも、これらの銀行破綻が経済成長に悪影響をもたらすとは考えている。

  米当局の12日夜の支援行動からのプラス効果は素早く薄れ、13日朝の株式市場はこの件からの悪影響が終わりには程遠いことを示唆している。

  ファースト・リパブリック・バンクは13日朝の通常取引開始前の時間外取引で70%下落。パックウェスト・バンコープは40%余り、ウェスタン・アライアンス・バンコープは30%、チャールズ・シュワブは約20%下げている。

  ウィルソン氏は、預金者が伝統的な銀行から資金を引き出し利回りの高い証券に投資する流れは、銀行が預金金利を引き上げない限り続くとみている。しかしそれは銀行の利益を圧迫し、融資余力を低下させると同氏は指摘した。

  ウィルソン氏は「先週のイベントは偶然あるいは特異な衝撃というよりは、利益の伸びに関する当社のネガティブな見通しを支える追加の要素だと見なしている」と指摘。「つまり、米連邦準備制度の政策が響き始めているということで、仮に金融当局が利上げや量的引き締め(QT)を停止してもこれが反転するとは考えにくい。すなわち、企業利益がアナリスト予想や自社見通しを下回ることはもはや既定路線だ」と分析した。

  銀行からの与信の引き締めが小型株に特に大きな重しとなるとも予想した。

引用:bloombergより

このようにルガンスタンレーは短期的に反発があったとしてもそれはあくまで一時的であり、トレンドは下落傾向であることには変わりないと見ているようです。米国は今回の事態において救済策を素早く発表し、一時的には安心感も出てきていますが、そのような回復があったとしてもそれは一時的であり、金融システムが正常化するには時間がかかると見ているのでしょう。なので短期的な反発があった場合は絶好の売りどきということであり、自体が正常化したわけではないという渓谷を発しています。

金融政策にも大きな影響を与えることになるだろう

今回の事態についてはFRBの金融政策にも大きな影響を与えることになるでしょう。3月の利上げは50bpになる可能性が高くなっていましたが、今回の事態を受けてやや状況は変わったと思われます。これだけ金融システムが不安定になっているときに強い引き締めを行うということは流石に厳しいのではないかという声も多くあり、おそらくは考えられていたよりも引き締めはゆるくなっていくことでしょう。しかし、当然ながらそれではインフレが落ち着く可能性は低くなり、金融引き締めが長期化するという懸念はますます高くなったと言っていいでしょう。そういう意味では米国経済の先行きというのはますます混沌としてきたと言っていいと思います。

まとめ

今日はSVB破綻が起こした金融不安について見てきました。事態はかなり深刻と言っていいでしょう。おそらくFRBの金融政策にも大きな影響を与えることとなり、インフレ収束や経済正常化にも大きな影響を与えることはまず間違いありません。そういう意味ではますます不透明感が強くなってきたと思います。しかし、短期的には厳しいかもしれませんが、長期的に見ればこのような株価暴落というのは良い買い場であったということはよくあることです。特に今は株価の良し悪しに関わらず売られているような状況です。当然ながらその中には今回の影響をほとんど受けない事業を行っている企業もたくさんあるでしょう。そういう企業を探し出し、安くなったときに買うことができれば後に大きな利益を得ることができるはずです。そういう意味では今回の事態というのは大きなチャンスだとも言えますし、あまり慌てることなく冷静に対処したいところです。