2月の消費者物価は強いものとなったが、引き締めはそこまで強くはできないでしょう

突如とした現れた銀行不安が株式市場を揺るがせていますが、インフレが依然として堅調であることには代わりありません。そしてそのインフレを考える上で非常に重要な指標が昨日発表されました。2月の消費者物価は依然として強いものであり、市場予想を大きく上回るものでした。これによりさらなる引き締めを予想させそうですが、金融システムの不安定化によりそれもなかなか厳しそうな状況です。FRBは本当に難しい決断を迫られていることでしょう。

2月の消費者物価は更に強いものとなる

昨日発表された2月の消費者物価は市場予想を上回るものとなりました。

2月の米消費者物価指数(CPI)統計では、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数が前月比ベースで5カ月ぶりの大きな伸びとなり、市場予想も上回った。銀行セクターにこれ以上の動揺を与えず、依然高い水準のインフレを落ち着かせたい連邦公開市場委員会(FOMC)にとっては難しい綱渡りが続く。

  米経済は1年に及ぶ利上げに対する耐性を総じて示しており、今回の統計はインフレ沈静を目指すFOMCの取り組みが容易にはいかないことを改めて浮き彫りにした。シリコンバレー銀行(SVB)破綻が金融安定を揺さぶる中で、依然高過ぎるインフレへの取り組みをどう位置付けるかが新たな課題となっている。

  SVB危機が顕在化する直前、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は利上げペースの再加速に道を開いていた。しかし今では多くのエコノミストが今月のFOMC会合について、小幅利上げの継続もしくは利上げ休止を予想している。0.25ポイントの利下げを予想するエコノミストもいる。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のグローバル経済調査責任者、イーサン・ハリス氏は「この泥沼に陥ったのは、多くの中央銀行と多数のエコノミスト、そしてFRBがインフレは死んだも同然と考え始めたからだ」とブルームバーグテレビジョンで発言。「今起きているのは大規模な巻き返しだ」と指摘した。

  統計発表後、米金融政策との連動性が高い2年債利回りは上昇。S&P500種株価指数も上昇し、ドルはもみ合う展開。金利スワップ市場は依然、今月のFOMCで0.25ポイントの利上げがあるとの見方を織り込んでいる。

  コア指数の月間ベース上昇に寄与したのは住居費のほか、娯楽、航空運賃など。食料品・飲料品の月間上昇率は2021年5月に迫る低さで、中でも鶏卵価格が大きく低下。新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となった直後数カ月に見られたような大幅な値下がりとなった。

  ここ数カ月、全般的なインフレを押し下げてきた財のディスインフレは失速。食品とエネルギーを除いた財の価格は前月と変わらず。中古車価格はほぼ1年ぶりの大幅低下。前年比では13.6%下げ、1960年に迫る下落率となった。

  エネルギー価格は低下。天然ガスと燃料油の大幅な価格低下が反映された。一方で電力コストは上昇した。

  総合CPIの約3分の1を占める住居費は前月比0.8%上昇。家賃と帰属家賃はいずれも前年同月比で8%以上の上昇率を記録した。ホテル宿泊費は前月比で昨年10月以来の大きな伸びとなった。

  ブルームバーグの計算に基づけば、エネルギーと住宅を除いたサービス価格は0.5%上昇、昨年9月以来の大幅な伸びとなった。パウエル議長をはじめ金融政策当局者は、インフレ動向を見極める上でこうした指標が重要だと強調してきた。ただ当局の計算は別の統計に基づく。

  この日発表された別の統計によると、2月の実質平均時給は前月比0.1%減少。前年同月比では1.3%減少した。

引用:bloombergより

このように米国のインフレは依然として堅調です。一時期落ち着いてきたと思われたインフレですが、それは幻であったと言っていいでしょう。インフレは依然として米国経済を苦しめ続けているということです。このためFRBには皿なり金利引き上げ圧力がかかることになるでしょう。

ますます混沌とした状況となってきた

非常に厳しいインフレが健在であることが確認されましたが、次回の利上げはやはりマイルドなものとなるでしょう。突如として現れた銀行破綻問題はFRBの政策にも大きな影響を与えることになるはずです。これまで3月の利上げは強いものとなる可能性を示唆してきたFRBですが、ここへ来てややトーンダウンしたような発言も見受けられるようになってきたかなとも思います。今回の出来事がリーマンショックのような大事件になる可能性は今のところ低いような気はしますが、それでもFRBが全く無視して金融政策を実行できるほどのものではないでしょう。そういう意味ではしばらくは引き締めも弱いものとなりそうな感じはします。そうなると当然ながらインフレ抑制というのはまた遠のくことになるわけであり、より米国経済は厳しい状況に追い込まれたと言っていいと思います。企業業績も悪化の一途をたどっていますし、好調な労働市場もいつまでも順調であるはずがありません。そうならないためにも一刻も早くインフレを抑制する必要があります。しかし、今回の銀行の破綻によってその目論見が完全に崩れてしまいましたそういう意味では予想外の自体によってますます混沌とした状況に陥ってしまったと言っていいでしょう。

まとめ

今日は2月の消費者物価の数値から今後の先行きについて見てきました。米国経済の先行きは更に不安定化したと言っていいでしょう。今回のSVB破綻から始まった一連の事件によってますます見通しが立たなくなっています。そういう意味では株価もさらなる下落というのを覚悟しなければならないかもしれません。ただ、短期的に見れば厳しくとも10年、20年というスパンで見れば十分成長の可能性はあると思うので投資に対して悲観的になることはないと考えています。