金利の引き上げのペースはやや加速するのか

米国のインフレは依然として深刻な状況ですが、FRBがどのような金融政策をとっていくのかという点については、まだ明らかなことはないような気がします。もちろん引き締めを継続していくということは確定的ですが、その加減というものはまだかなり幅を持たせているように思います。それだけFRBも慎重に考えているということでしょう。そのような発言を多くの関係者がしています。そして今日はその中の一つについてみていきたいと思います。

利上げのペースが上がるかもしれない

米セントルイス連銀のブラード総裁はイベントにて以下のような発言をしました。

米セントルイス連銀のブラード総裁は15日、11、12両月の年内残り2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合について、利上げ幅を予想するには時期尚早だとしつつも、両会合で0.75ポイントずつの利上げを決める可能性を残す趣旨の発言を行った。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局は6、7、9月の3会合連続で0.75ポイントの利上げに踏み切った。当局者は9月に発表した最新の四半期経済予測の中央値で、年内に計1.25ポイントの追加利上げ見通しを示し、11月に0.75ポイント、12月には0.5ポイントの利上げを想定していることを示唆。2023年も0.25ポイントの追加利上げ予想を示していた。

  ブラード総裁はワシントンで開かれたイベントでFOMCについて、「想定ないし提示されているような一部利上げを23年から今年12月の会合に前倒ししたいと委員会が望むかどうか、それは判断には時期尚早と考えられる」と話した。

  そうした追加の引き締めが年内になるか、23年1-3月(第1四半期)になるか、マクロ経済の観点からはおそらく大差ないと総裁は指摘。ただ、自分としては利上げの「前倒し」を支持しており、インフレを抑制する水準にまで早急に金利を引き上げた段階で一時停止し、状況を評価できるようにしたい考えだとあらためて説明した。

  その上で、米金融当局と民間エコノミストの見込み通りのインフレ鈍化が来年あれば、「基本的にその場にとどまり鈍化の様子を見守ることができるだろう」としつつも、「インフレがさらに加速するリスクも多くあり、その場合には対応しなければならない」と語った。

  一方、ブラード総裁はパネル討論会で、連邦準備制度が月間最大950億ドル(約14兆1200億円)のペースで進めているバランスシート圧縮を巡り、しばらくの間、現行ペースで続けることに支持を表明。「この政策を近いうちに変更すると言うにはあまりに時期尚早だ」と述べた。

  今年のFOMCの投票権メンバーであるブラード総裁は、0.75ポイントの連続利上げでも市場の大きな混乱を招いていないとして満足の意を表明。「金融ストレスが比較的低水準のままでここまで進めることができた」と語った。

  また、米利上げを受けたドル高進行を巡っては「驚きでない」とコメント。米金融当局が利上げを進めてインフレに十分な下降圧力を加えることができると考えられる地点にまで達する一方、他国・地域の中央銀行が政策を変更してもっと積極的になれば、「ドルには別の動きが見られるかもしれない」と指摘した。

引用:Bloombergより

ブラード総裁はこのように述べ、今後の金融政策について、まだ確定したことはないが想定よりも早めの利上げを支持していることを示しました。理由についてはわかりませんが、おそらくは金融政策の幅を持たせておきたいということでしょう。今後は景気の減速も見込まれます。そしてインフレについてもさすがにそう遠くない時期に上昇はしなくなるでしょう。そうなったときにより柔軟な対応をできるように金利を引き上げておきたいということでしょう。もちろん急激な利上げというのはそれだけで経済にとって大きな影響があるため、その判断は慎重に行われると思われます。しかし、最近では早期の利上げを主張する関係者の話も多く出てきており、当初考えられていたよりも早く金利を上げていくのかもしれません。

ドルは短期的には上昇を続ける

また、利上げによってドル高が進行している現状については全く関心を持っていないような感じがします。金利を引き上げているので当然ではありますが、それを危機的なことだとは思ってはいないようです。つまりドル高は米国にとって悪い状況ではないということでしょう。インフレという状況を考えればドル高は輸入物価の押し下げ圧力となるためむしろ望ましいと思っているかもしれません。いずれにせよ米国が現状を悪と認識していない以上、日本をはじめ諸外国がいくらドル高を是正しようと思っていたとしてもあまり効果はないのだろうという感じです。今後日本をはじめ多くの国がドル高について懸念を述べ、介入などの対抗処置をしてくるかもしれませんが、はっきり言って効果はあまり期待できません。米国もあからさまな政治の介入には反発するかもしれませんが、現状に大きな影響を与えないようなものであれば黙認するのではないかと思います。これだけドル高になるような金融政策をしておいて、さらに他国の金融政策に対しても介入してくるとなると諸外国の反発も大きくなると思われるからです。ガス抜き程度の介入くらいであれば問題ないのかなという印象です。ただ、それでは何の変化も起きず、ドル高というのはしばらく続いていくことでしょう。

まとめ

今日は今後の金融政策について考えてみました。金利の引き上げというのは数か月前に想定していた以上のペースで行われる可能性というのがやや高くなったのかなという印象です。それは景気がかなり悪化の兆候があることと、労働市場がいまだ堅調であるということが要因です。今後、そう遠くない時期にインフレと景気後退の相反する問題に対処しなくてはならなくなる可能性が出てきます。そうなったときにより柔軟な政策をできるような環境を作っておきたいということでしょう。なので可能な限り早期に利上げを完了させ、その後訪れる景気後退に対処できるようにするべきと考えているのだろうということです。そのような発言は最近多くなっています。そういう意味では年内の利上げはこのままハイペースで行われるのかもしれません。そして為替についてはさらにドル高が進行するでしょう。金利が上昇するのであれば当然といえば当然です。しかし、それはそんなに長くはないのではないかと思います。先ほども述べましたが、早期に利上げを完了させたいとFRBは考えている可能性があります。であれば利上げ自体はそう長くは続かないということです。いったん利上げが停止してしまえば今度はドルは安くなる可能性が大いにあります。米国で金利が上昇しなくなっても諸外国ではまだ利上げの余地がある国もありますし、相対的に行き過ぎたドル高の修正も起こってくるでしょう。そういう意味でも今後もドル高は続いていくとは思いますが、長くは続かないと思います。むしろ来年はドルが安くなるのかなという風に思っています。