悲観的な見通しが相次いで発表される

最近の株式市場は一時期よりは悲観的な空気は薄れたような気がしますが、それでも予想外に強いインフレによって現実に引き戻された印象です。今後の株価についてもあまり明るい見通しは立っておらず、厳しい展開が予想されます。そしてそれを後押しするようなレポートが金融大手より発表されています。

短期的に上昇も、中期的には下落傾向

モルガンスタンレーが昨日は発表したレポートによると、短期的には株価は上昇する可能性はあるものの、中期的には下落トレンドであるとしています。

モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、米国株について短期的に強気に転じた。企業利益悪化の逆風に直面する前にまだしばらく上昇が続く余地があるとの見方を示した。

  6日のリポートで「米株相場は先週、重要な下値支持レベルを下回らなかった。弱気相場の中の現在の上昇はまだ終わろうとしてはいないことを示唆する」とコメントした。

  同氏はS&P500種株価指数が200日移動平均を下回らなかったことを指摘し、ドル下落と債券利回り低下が今後も続けば、一段の上昇余地があるかもしれないと分析した。

  ウィルソン氏は、次の上値抵抗線は3日終値を約2.5%上回る4150とみている。現在の上げは短期的な反発にとどまり、中期的には一段と下落すると予想。企業利益を中心にファンダメンタルズの悪化は続いていると指摘した。

  相場は上昇しているが、それは「依然として高過ぎるとみられる利益見通しと株価バリュエーションを踏まえ、現在多くの銘柄のリスク・リワードは極めて低いとの当社の見方を変えるものではない」とし、企業の利益率は現在の市場予想を「大幅に」下回るだろうとの見方を示した。

  同氏によれば、発表された利益とキャッシュフローの乖離(かいり)はここ25年で最大。過剰在庫と資本化費用がまだ反映されていないと同氏は指摘した。

  JPモルガンのミスラブ・マテイカ氏も慎重な見方で、現在の相場上昇の機会を生かして株式へのエクスポージャーを減らすことを推奨。金融引き締めの影響は株式市場に遅れて表れると説明した。

引用:bloombergより

このようにモルガンスタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は述べており、短期的には持ち直す可能性が高いが、中期的にはあまり期待できるものではないとしています。

同じようなレポートがほかにもある

このような見通しはJPモルガンからも発表されています。

世界の株式相場は1-3月(第1四半期)に上昇した後は下げに直面すると、JPモルガンのストラテジストが予測した。「より正常な」ポジショニングや強弱が混在する企業決算、一段の政策引き締め、企業活動の前向きなサプライズが終わりそうなことが背景にある。

  ミスラブ・マテイカ氏率いるチームはリポートで、堅調な株価に対して企業利益は低下しつつあるなど、相場を影響する主な要因に乖離(かいり)が生じつつあると述べ、高水準の株価収益率と債券利回りの上昇も整合していないと指摘した。

  同氏らの見通しによれば、下期に企業活動の活発化は見込めず、中央銀行は利上げ停止からほど遠い。投資家には株価上昇に際してエクスポージャーを縮小するよう勧めた。

引用:bloombergより

このようにJPモルガンも短期的に上昇した後は株価は下落していくものとみています。株価は堅調ではあるものの、実体経済とは大きく乖離してきており、その修正が起こるものとみています。また、今後も金利は上昇することが見込まれており、株価を押し下げる要因ともなるということでしょう。

何らかのきっかけで大きく下落していくのだろう

去年から今年は厳しい年になるという予想は出てきていましたが、その予想の範囲内で推移しているという印象です。インフレ鈍化を期待したときはやや楽観的な空気も出てきていましたが、それも既定路線に収束してきたという感じです。やはりそんなに簡単にはいかないということです。今後は強いインフレを背景にFRBはより強力な引き締めに出てくるとみられます。そして企業業績はさらに悪化を続け、株価との乖離はより大きくなっていくことでしょう。そして何らかのタイミングでその習性が起こり、大きく株価は下落していくものとみられます。そして労働市場がいつまで強さを見せるのかということにも注目されます。これまでは何が起きても落ちることがなかった労働市場ですが、さすがに永遠にこの強さを維持できるとは思えません。企業業績が悪化し、雇用を維持できなくなった時にマーケットは一気に楽観論から悲観論へと移行するような気がします。そういう意味では今後は労働市場がどのようになるかということは非常に注目されるところであり、今週発表される雇用統計は今後を左右するような重要なものとなる可能性もあるでしょう。

まとめ

今日は今後の米国経済の先行きについて考えてきました。やはり今年はあまりよい年とはならないような気がします。どう見ても企業業績は悪いし、インフレも落ち着くようには見えません。最後の頼みの綱の雇用の安定についてもそう長くは続かないでしょう。そういう意味ではそう遠くない将来に米国経済の急減速が起こっても不思議ではありません。