雇用統計の結果を受けても金融政策に大きな変更はないだろう

雇用統計の結果を受け、市場にはやや金融政策に対する期待感が出てきましたが、実際のところはまだそこまで緩和期待というのは持つべきではないのかなという感じがします。FRB内部からもまだ慎重姿勢を貫くような声が聞こえてきており、インフレ収束への道はまだまだ長そうです。

FRBはまだ楽観的ではない

先日の雇用統計の結果を受け、クリーブランド連銀総裁のメスター氏は以下のように述べています。

米クリーブランド連銀のメスター総裁は、米国のインフレはこのところ改善が見られるものの、なお高過ぎると指摘。また労働市場は依然として力強いとの認識を示した。

  総裁は1日、クリーブランド連銀と欧州中央銀行(ECB)が主催した会議で講演。事前に配布された原稿によれば、政策当局者は今後の政策判断を伝える上で、経済がどう変化しているかを精査するため市場と経済データを注視する必要があると語った。追加利上げが必要か否かや、米連邦公開市場委員会(FOMC)が9月19、20日の会合でどのような決定をすべきかについては、具体的な発言はなかった。

  メスター総裁は「ある程度進展はしているが、インフレはなお高過ぎる」と指摘。「金融政策における問題は、フェデラルファンド(FF)金利の現水準が十分に景気抑制的かどうか、そしてインフレ率を持続的かつ時宜を得た形で当局目標の2%へと低下させていく上でどの程度の期間、抑制的な水準で維持する必要があるかということだ」と述べた。

  8月の米雇用統計発表後に講演した総裁は、金融当局の行動も一助となり労働市場ではバランスが改善してきているが、雇用は依然として力強いと指摘。「今後の政策判断はリスク管理、そして金融政策の引き締めが過度な場合と不十分な場合とでの異なるコストをどう管理するかだ」と述べた。

引用:bloombergより

このようにメスター総裁はまだ金融政策を緩めることについては消極的なようです。実際問題、インフレは依然として高く、目標とする2%にはまだまだ道半ばというところであることは事実です。そういう意味ではこのような厳しい姿勢でいるということはまあ妥当というところなのかなと思います。しかし、市場ではやや緩和期待が先行している感があり、そこに大きなギャップが出てきているような感じがします。

年内利上げのシナリオは今の所変更なし

このようなマーケットと金融当局の感覚のズレというのはいつも事なので驚くようなことではないですが、相変わらずマーケットは楽観的に動いているなと感じます。FRB内部にも引き締めを一旦緩めるべきという声もないわけではないので、状況によってはその方向へと進む可能性も十分にあるとは思いますが、雇用統計の結果はそれを進めるのにはまだまだ足りないと言ったところだと思います。そういう意味ではまだ引き締めは継続される見込みであり、今年中にあと1回程度の利上げは行われる可能性は非常に高いままであると思われます。

まとめ

今日は雇用統計の結果を受けての今後について考えてみました。マーケットでは相変わらず期待先行という感じですが、FRBはそこまで楽観的に考えていないことは事実だと思います。そういう意味ではいつもどおりだなという感じです。おそらくこのまま行けば1回程度の利上げが行われるのは確実でしょう。よほどの過熱感や経済失速などの事態が起こらなければ、そのシナリオに変更はないのかなという感じです。