非常に少なくなってきたハト的な意見

今後の金融政策については年内にあと2回の利上げが行われる見込みです。パウエル議長をはじめ、ややタカ派的な意見を言う人が多くなっており、市場もそのように見ているとは思いますが、当然ながら異なる意見を持っている人も存在します。先行きに対しては常にあらゆる可能性を考え、行動するべきでしょう。思い込みで行動を起こして失敗するということを誰しも経験したことがあるはずです。そういう意味では今こそハト派の人の意見も聞いておいたほうがいいでしょう。

現在の金利水準は適切

アトランタ連銀のボスティック総裁は先日行われた公演にて、現在の政策金利について据え置くべきとの考えを示しました。

米アトランタ連銀のボスティック総裁は、インフレ率を2%目標へと引き下げる上で金融当局は既に十分な措置を講じたと改めて指摘。政策金利を据え置く論拠があると、ハト派寄りの認識を示した。

  総裁は、連邦公開市場委員会(FOMC)が2022年3月から講じてきた積極的な引き締め策は物価の沈静化に十分だろうとの考えを示した。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長ら一部当局者が今週送ったタカ派的なメッセージとは対照的だ。

 ボスティック総裁は23日、ジョージア大学のテリー経営大学院が主催したアトランタでのイベントで講演。「政策金利は5-5.25%だ。適度に景気抑制的な水準であり、現在の状況から見て、インフレ率を2%目標へと戻すのに十分な可能性がある」と発言。「現在得られている情報には満足しており、今の水準を年内、そして来年に入っても長く据え置くことに違和感はない」と語った。

  引き締め継続の必要性を訴える政策当局者が多い中、ボスティック総裁は辛抱強さを求めるハト派寄りの当局者の1人として存在感を表してきている。

  米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は今週の議会証言で、6月のFOMC会合では政策金利を据え置いたものの、経済成長を減速させ、物価圧力を抑制するため、金利は上昇する必要があるとの見解を示した。年内に0.25ポイントの利上げがあと2回行われるとのFOMC参加者の予測については、米経済がほぼ予想通りのパフォーマンスなら、実際にそうなる可能性を「極めて的確に反映した推測だ」と説明した。

  ボスティック総裁はこのドット・プロット(金利予測分布図)について、「非常に活発な議論が行われるだろう」とし、「情勢についての情報とガイダンスがさらに増えるにつれ、今後数カ月にわたって議論が続けられると考えている」と述べた。

引用:bloombergより

このようにボスティック総裁は現在の政策金利についてインフレ抑制のために十分な水準であり、この水準を維持すべきとの考えを示しました。6月のFOMCでは金利は一旦据え置かれたものの、今後も引き上げを求める声が多く上がっています。そういう中にあってボスティック総裁のようなややハト派よりの意見というのは非常に珍しい気がします。特に最近はパウエル議長がタカ派的な発言をしていることもあり、そちら側の意見が多くメディアでも取り上げられることが多くなっているのではないかと思います。しかし、そうでない意見ももちろん存在し、中では活発な議論がかわされているのは間違いないでしょう。そういう意味ではこのような発言が出てくるのは当然であり、非常に重要なことなのかなという感じがします。

少数の意見も重要

ボスティック総裁はややハト派的な立ち位置のようですが、おそらくはFRB内では現状は少数派なのかなと思います。漏れてくる声を聞く限り、パウエル議長を始め、多くの人がまだまだ引き締め継続を求めるような気がします。その中にあって反対の意見を言うボスティック総裁のような人たちというのは非常に貴重な存在となるでしょう。正直、私には金融政策の正解はわかりません。ある問題を見れば引き締めが正解のように思えるし、また違う問題を見れば引き締めをするべきではないと感じています。そういう意味では非常に難しい問題なんだろうとは思います。個人的には今回のインフレは非常に粘着性が高く、やはり強めの引き締めを行う必要があるのではないかと思いますが、やりすぎれば当然ながら経済に大ダメージを与えることになり、そのバランスというのは非常に難しいことはわかります。そういう意味ではハト派の意見というのも十分理解できるところです。

まとめ

今日はFRB内部でのハト派の意見について見てきました。最近はタカ派の意見がより目立つ状況のため、このような意見を目にすることはやや少なくなっているような気がします。しかし、あまり思い込みを持たず、幅広い意見を取り入れ、しっかりと考えていくということは非常に大事なことでしょう。そういう意味ではボスティック総裁のような意見を聞くということは今後の展開を考えていく上で重要なことだと思います。