個人消費支出は予想外に減少。インフレは確実にピークに近づいているが、正常化への道は険しい。

米国のインフレは確実に転換点を迎えてきているようです。昨日発表された2月の個人消費支出は市場予想を下回る結果となり、インフレが確実に鈍化してきていることが示されました。これまで長く続いてきた金利の引き上げについてもようやく最終段階に入ってくるのだろうと思われます。ただ、依然としてインフレは高水準であり、落ち着いてきたと言っても期待するほど順調に下落していくかどうかはまた別の問題です。そういう意味ではあまり期待しすぎないほうがいいでしょう。

インフレは確実に落ち着いてきている

先日発表された2月の個人消費支出は市場予想を下回る結果となり、物価の上昇圧力は確実に落ち着いてきていることが確認できました。

米国では2月、金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コア価格指数の伸びが市場予想を下回った。当局による積極的な利上げサイクルが終了に近づいている可能性が示唆された。

  インフレ調整後の実質PCEは前月比0.1%減。1月は1.5%増だった。2月は財とサービス共に支出が減少した。

  インフレ鈍化は明るいニュースではあるものの金融当局にとっては依然高過ぎる水準で、当局としては金融の安定を維持しつつ、インフレをさらに減速させる必要がある。金融当局者らは、最近の銀行破綻に伴うリスクを注視しながらも、インフレ対応が最重要課題であることを明確にしている。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、ジョナサン・チャーチ、スチュアート・ポール、イライザ・ウィンガーの3氏はリポートで、「シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻を受けて金融環境の引き締まりが予想されることも踏まえると、今回のPCE統計で予想以上のインフレ鈍化が示されたことは、フェデラルファンド(FF)金利のピークが遠い先ではないことを示唆している」と記した。

  サービス業界では、賃金の力強い伸びも背景にインフレが特に根強い。そうした状況から、インフレ率が当面は金融当局の目標を上回り続けるリスクはある。

  ただブルームバーグの算出によれば、住宅・エネルギーサービスを除いたサービス業の価格指数は前月比0.3%上昇で、伸びは前月から鈍化した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレ見通しを分析する上でそうした指標に着目することの重要性を強調している。同指数は前年比では4.6%上昇と、伸びがやや加速した。

  消費支出を見ると、2月は底堅さが示唆された。1月は、暖冬と力強い雇用市場を背景に消費支出は大幅に増加していた。2月のインフレ調整前の個人消費支出は前月比0.2%増だった。

  インフレ調整後では、財の支出は前月比0.1%減。主として自動車・同部品での落ち込みが影響した。サービス支出は約1年ぶりのマイナス。外食での支出減が目立った。

  インフレ調整後の実質可処分所得は前月比0.2%増だった。

  賃金・給与はインフレ調整前で前月比0.3%増。貯蓄率は4.6%と、約1年ぶり高水準となった。

引用:bloombergより

このように、米国の個人消費は確実に減速してきています。インフレ鈍化を示す指標は最近散見されるようになっていますが、今回の結果もそれと矛盾するものではありません。そういう意味ではやはり物価の上昇というのはそろそろピークを迎え、政策金利の引き上げというのも終わりに近づいたと言っていいのだろうと思います。金融不安や経済状況の悪化を背景に、これ以上の金利引き上げは厳しくなる状況だったために、物価の落ち着きというサインは金融政策の柔軟性を担保するという観点から見ても非常に良い兆候と言っていいのかなという感じです。

経済正常化への道のりは険しい

しかし、これを持って問題が解決するというわけではありません。ピークを打ったからと言ってすぐに目標とする2%の物価目標へと落ち着くかどうかはまた別問題です。落ち着いてきたとはいえ、歴史的に高水準に物価水準があるという事実に変わりはありません。そしてその状況で停滞するリスクというのもまだ多くあります。むしろ、金融不安と物価の落ち着きを背景に、引き締めを緩めたせいでなかなか物価が下がってこないという状況になるかもしれませんし、その可能性は高いと言っていいでしょう。そうなると強い経済成長というのを期待することはできなくなり、正常化というのはまたさらに先の話となってしまいます。そういういみではなかなか判断の難しい状況というのは続く可能性は高いのだろうと思います。

まとめ

今日は2月の個人消費支出について見てきました。インフレはそろそろピークを迎えるというのはほぼ間違いないのではないかと思います。ただ、すぐにインフレが落ち着くかどうかはまだなんとも言えないというのが実情でしょう。むしろ、金融不安を背景に、引き締めを緩めた結果、インフレがダラダラと続いていくという可能性は高いのではないかと感じています。そういう意味では経済正常化への道のりはまだまだ長いと思っておいたほうがいいでしょう。あまり楽観的すぎる思い込みはしないほうがいいでしょう。