2月の求人件数は大きく減少。労働市場はやや緩みだしてきた。

FRBが懸念しているインフレですが、強い引き締めの効果が少しずつ現れてきたようです。2月の求人件数は大幅に減少し、労働市場が順調に冷えてきたことが伺える結果となりました。これがインフレ抑制の結果となればよいのですが、景気後退をせずうまくインフレを抑制できるのかということはまだなんとも言えない状態です。

2月の求人は大きく減少

2月の米国での求人件数は大幅に減少し、タイトだった労働市場が落ち着きを見せてきていることが確認できました。

2月の米求人件数は2021年5月以来の低水準に減少した。労働力の需要が冷えてきたことが示唆されたが、米金融政策という観点では依然雇用市場はタイト過ぎることがうかがわれる。

  この統計は月間で大きく変動することがあるが、労働力の需給がバランスを取り戻しつつある兆候を示した。しかし賃金圧力の緩和につながるには、特にサービスセクターにおいてさらなる進展が必要とされる。インフレ率を目標の2%に下げたい米連邦公開市場委員会(FOMC)にとって、強さの残る雇用市場は依然大きなハードルとなっている。

  全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は、2.6%に小幅上昇。自発的離職者は約400万人に相当する。 

  失業者1人に対する求人件数は1.67件に減少し、21年11月以来の少なさ。前月は約1.9件だった。新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となる前は、1.2件前後で推移していた。

  ブルームバーグエコノミクスのエコノミスト、スチュアート・ポール氏は「労働力の需要は供給に近づいており、紛れもない労働市場の冷却が示された。緩みの大半は求人の減少によるもので、これでFOMCは賃金物価スパイラルの可能性をさほど懸念せずに済むはずだ」と述べた。

  FOMCはこのレシオを注視しており、失業を急増させることなく、労働市場ひいてはインフレを抑制することができる根拠に、求人件数の高止まりを挙げている。

  求人件数が特に減少したのはビジネスサービスや医療、社会支援、運輸、倉庫、公益事業など。増加したのは建設と娯楽エンターテインメントだった。雇用は軟化した一方、レイオフも減少した。

引用:bloombergより

このように、タイトだった労働市場は徐々に落ち着きを見せてきています。インフレが高止まりする現在、強すぎる労働市場というのは非常に厄介な問題です。強すぎる労働市場はインフレを助長します。かと言って急激に引き締めれば労働市場は軟化したとしても経済に与える影響は小さくないでしょう。そういう意味では非常に難しい問題に米国は直面していると言っていいのだろうと思います。しかし、今のところはそこまで大きな問題を起こすことなく、インフレは抑制できているとも言えるのかもしれません。経済悪化してきていると言っても思っていたほど急激な減速はしていませんし、労働市場も少しずつ減速してきているという状況です。そういう意味では問題はあるのかもしれませんが、FRBはなんとかうまくやっていると言っていいのかなという印象です。

まだまだ安心はできない

とりあえずはいいニュースなのかなとは思いますが、まだまだ油断はできないと言っていいでしょう。特に今週末には雇用統計の発表を控えており、労働市場の動きがどのようになっているのか判断するにはまだ早いと思います。おそらくこの結果を見る限り、雇用統計の数値もこれまでのような強いものにはならないような気はします。なので労働市場もついに弱くなってきたと言えるようになるのかもしれません。いずれにせよ、インフレ抑制は今の所ベストとは言えないかもしれませんが、最悪の事態にはなっていないような気がします。しかし、今後については非常に不安定要素も多く、注意が必要です。特に金融不安がまだ完全に収束していない状態で、今後もまだしばらく引き締めは続いていきます。であれば破綻する金融機関が出てきても全くおかしくはありません。そうなれば経済の悪化は避けられず、急激な景気後退の可能性も十分にあるでしょう。今後もFRBは難しい金融政策の舵取りをを迫られることでしょう。

まとめ

今日は2月の求人件数について見てきました。労働市場はようやく落ち着きを見せてきました。これがインフレ抑制の良い兆候であればいいのですが、そんなにかんたんにインフレが落ち着くとは思いませんし、事実FRBもその様な認識をしています。そういう意味ではまだまだ戦いは長期化すると見たほうがいいでしょう。その中で金融不安への対処もしなければならず、大変厳しい道のりは続きそうです。