ADP雇用者数でも労働市場の減速を確認する

労働市場の原則が更に確実なものとなってきました。昨日発表されたADP発表の3月の雇用者数は市場予想を下回り、労働市場が減速傾向にあることが確認されました。先日発表の求人数に続き、ADPのデータでも労働市場の減速が確認されたことで、よりその可能性は高まったと言えるでしょう。今週末発表の雇用統計の値もおそらくはこの流れに続くものと見られます。

ADP雇用者数も減速を確認

ADPが発表した3月の民間雇用者数は市場予想を大きく下回り、雇用環境の過熱感がようやく落ち着いてきたことが確認されました。

3月の米民間雇用者数は市場予想を下回る伸びにとどまった。賃金の上昇率も鈍り、労働需要がいくらか鈍化の兆候を示していることを浮き彫りにした。

  業種別では娯楽・ホスピタリティーや貿易・運輸・公益、建設での雇用増加が目立った。製造業や金融、専門職・ビジネスサービスでは減少した。

  地域別で減少したのは南部だけだったが、全米の一部中規模企業でも雇用が削減された。

  今回の統計は過去1年に及ぶ米利上げが労働市場を圧迫し始めている可能性を示唆。大手テクノロジー企業で当初見られた人員削減の動きが、他のセクターにも広がり始めている。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で、「この3月の雇用データは景気が減速しつつあることを示唆する複数のシグナルのうちの一つだ」と指摘。「雇用主は1年に及んだ採用強化の動きを後退させている。賃金の伸びは3カ月にわたって頭打ちとなった後で減速している」と続けた。

  ADPのデータによれば、同じ仕事にとどまった人は3月に賃金が前年比6.9%上昇と、約1年ぶりの低い伸び。仕事を変えた人では賃金の伸び率は中央値で前年比14.2%と、昨年1月以来の小幅な伸びとなった。同データでは2500万人余りの米労働者の給与を分析する。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は徐々に軟化してきています。一時は何があっても雇用の強さが目立つ米国経済でしたが、流石にそれも限界を迎えたようです。昨日の求人数も減少傾向であったように、雇用環境の強さはかなり軟化してきています。この結果により、金曜日に発表される雇用統計もおそらくは弱いものとなると思われます。そういう意味ではようやく労働市場にも金融引き締めの効果が出てきたのかなという印象です。

上昇が止まったとはいえ、正常化への道のりは長い

やっとこのときが来たという感じですが、ようやく労働市場も緩んできました。正直これまでの強さが異常であり、これだけ引き締めを続けていれば当然だろうと言う感じです。もちろんこの結果が必ずしも雇用統計の値と一致するとは限りません。過去にもADPと雇用統計の数値に乖離が見られたこともあります。なのでまだ決めつけることはできませんが、今回の結果以外にも多くの雇用の数値が減速を示していることを考えると雇用統計の値もそれなりになるのではないかという感じがします。ただ、労働市場がゆるんだからと言ってFRBが素直に緩和に動く可能性というのは低いと言わざるを得ないのかなと思います。緩んできたと言ってもインフレは歴史的に見てまだ高水準です。そして、上昇が止まったとはいえ、安定的な水準へと移行するにはまだまだ時間がかかると見られています。事実、FRBも今回のインフレは非常に粘着性が高いと述べており、正常化への道は非常に困難で時間がかかると考えていることがわかります。FRB関係者の発言もまだ利上げの必要性を述べていたり、インフレ抑制は時間がかかると発言しているのです。そういう意味ではようやく労働市場が落ち着いてきたと言っても、正常化への道のりはまだ始まったばかりと言っていいのだろうと思います。

まとめ

今日は3月の民間雇用者数について見てきました。米国の労働市場がようやく減速してきました。ただ、これを持って正常化がもうすぐだとは言えず、その道のりはまだまだ長いと認識する必要があります。そういう意味では良い兆候ですが、楽観はしないほうがいいでしょう。長い成長化への道の中で、何度も上げ下げを繰り返しながらインフレは沈静化していくものと見られます。慌てずゆっくりと初志貫徹です。