3月の雇用統計も堅調。より厳しい引き締めが予想される。

軟化が予想された労働市場ですが、意外とまだ力強さを残しているようです。昨日発表された3月の雇用統計は市場予想を上回る結果となり、依然として労働市場は強さを維持していることが確認されました。もちろんこれまでのよりも弱さも含んでおり、強弱織り込んだものとなっていますが、予想は大きく超えてきており、依然として労働市場はタイトであると言っていいでしょう。そのため今後も厳しい引き締めは継続するものと見られます。

雇用は依然として堅調

3月の雇用統計は市場を上回る結果となり、依然として雇用環境はタイトであることが確認されました。

米国では3月、雇用者数が堅調なペースで増加し、失業率は再び過去最低付近に低下した。米連邦公開市場委員会(FOMC)としては、次回会合で利上げする道が開かれた格好だ。

  平均時給が前年同月比で2021年6月以来の低い伸びとなり、市場軟化の兆しは見られる。だが1、2月の力強い内容も踏まえて3月の雇用統計全般を見ると、経済の他の分野が減速する中で労働需要の底堅さが特に際立っていることが分かる。年初からの雇用者の増加幅は合計100万人を超えている。

  ネーションワイド・ライフ・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は「データ自体はやや強弱が混在しているが、労働市場は十分力強く、インフレはなお高止まりしており、FOMCは5月に0.25ポイントの追加利上げに動くだろう」と分析。その上で、それが「この引き締めサイクルでの最後の利上げとなり、その後長期間据え置かれる可能性はある」と述べた。

  次回のFOMC会合は5月2、3日に開催される。当局者らが同会合前に入手できる雇用統計はこの3月のものが最後となるが、インフレと雇用コストに関する最新データはまだこれから入手が可能だ。銀行セクターでこのところストレスが見られるものの、当局者らはインフレ抑制のため政策金利はさらに少し上昇し、その高い水準で今年いっぱいは維持される必要があるとのメッセージを変えていない。

  平均時給は前月比では0.3%増で、特に気掛かりな増加ペースにはなっていない。これまで賃金の大きな伸びを受けて消費の堅調さが続き、それが物価上昇圧力につながってきたことから、金融当局者らは賃金動向の指標を特に注視している。

  今回の統計は、労働力の需給バランス改善が進みつつあることを示唆している。この傾向が続けば、賃金増加ペースのさらなる鈍化につながり得る。根強い労働力不足を背景に、小規模の事業者やサービス業をはじめ多くの企業が依然として人材の獲得・維持に苦慮している。

労働参加率

  労働参加率は若干上昇して62.6%と、3年ぶりの高い水準となった。

  雇用は娯楽・ホスピタリティーや医療など、これまで労働力不足に悩まされてきた一部セクターでの伸びが大きかった。

  一方、需要鈍化に対応し採用にブレーキをかけている業種もある。小売りと人材派遣の分野では雇用者は減少した。また恒久的に職を失った人の数は2020年以降で最も大きく増えた。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏とスチュアート・ポール氏は「労働市場の軟化は漸進的だ。減速のペースは遅く、失業率がFOMC参加者の年末予測の中央値4.5%を下回るリスクがある。そうなった場合、FOMCは5月の後さらに2回ほど追加利上げを余儀なくされるだろう」と分析した。

  週平均労働時間は34.4時間に減少し、20年4月以来の低水準に並んだ。需要が鈍化した際、雇用主は人員削減を行う前に従業員の勤務時間短縮で対応する傾向があることから、週平均労働時間の減少は懸念要素となる可能性がある。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は依然として力強さを維持しています。最近では雇用関係の指標が弱含む傾向があったために、今回はもう少し弱さを見せることを予想していました。しかし、まだまだ米国の労働市場は堅調であると言っていいでしょう。しかし、平均時給が大きく鈍化してくるなど弱さを見せる部分も出てきています。そういう意味ではこれまでのような強さはもうないのかなとは思います。しかし、高インフレが維持される中、金融政策を緩める根拠となるにはあまりにも強い結果と言わざるを得ないでしょう。そういう意味では今後も引き続き厳しい金融政策を実行させる理由として今回の結果は十分すぎると言っていいと思います。次回のFOMCは5月に行われます。雇用統計は今回のものが最後になりますが、それ以外の重要な指標の発表はまだいくつか残っています。そのためまだ結論は出せるものではありませんが、最近のFRB関係者の発言等を考えると利上げは今後も継続されるものと見て良さそうです。

新たな金融不安の可能性

個人的にはもう少し弱いものが出てくると思っていましたが、米国の労働市場の強さというものには本当に驚かされます。5月の利上げというのはほぼ確実に行われることになるでしょう。問題はその後についてどうなるかということです。これまでは5月で一度打ち止めになるのではないかという意見も多くありましたが、今回の結果を受けてさらなる利上げの可能性について論じる向きもあります。そういう意味では更に厳しい状況になったと言えるでしょう。金利が引き上げられれば、現在苦しい状況にある金融機関をさらに追い詰める結果となり、新たな破綻を生む可能性も高くなります。そういう意味ではなかなか難しい状況であると言っていいのかなと思います。

まとめ

今日は3月の雇用統計の結果について見てきました。米国の労働市場はまだまだ力強さを残しています。そのため今後も厳しい金融政策は続いていくことでしょう。なので新たな金融不安や株価の低迷など心配事は尽きないなという印象です。これがいつまで続くかわかりませんが、当分明るい景色は見られそうもないといった印象です。