22日のパウエル議長の議会証言から、ソフトランディングの可能性は低くなったのかな。

22日にFRBのパウエル議長の議会証言がありました。今後の金融政策を占う非常に重要なイベントです。今回の議会証言でパウエル議長はどのような発言をしたのか非常に注目されており、当然ながら株式市場にも大きな影響があるでしょう。というわけで今日は先日行われたFRBのパウエル議長の議会証言についてみていきたいと思います。

議会証言の要旨

まず、今回の議会証言の要旨については以下の通りです。

  • *FRBの利上げ、ガソリンや食品価格を押し下げず
  • *一連の追加利上げ、織り込み済みで妥当
  • *直近のインフレ指標、利上げペース加速の必要性を示唆
  • *インフレ問題の全容を認識している
  • *インフレ問題に精力的に対応
  • *物価安定は経済の基盤
  • *物価安定を取り戻す必要があり、そうすることが不可欠
  • *市場、FRBの反応機能をまずまず適切に読み取った
  • *金利上昇に向け、継続的かつ迅速な進展が見られるだろう
  • *インフレ押し下げに強くコミット
  • *労働市場を望ましい状況に回復させることが必要
  • *実質金利がマイナスとなっているのは超短期ゾーンのみ
  • *物価上昇、マクロ経済の問題
  • *FRBのツール、エネルギーや食品インフレに影響を与えることできない
  • *FRBが対処可能な部分のインフレに焦点を当てる
  • *米インフレ、他国よりも需要に左右される
  • *中国のロックダウン(都市封鎖)の全面的な影響、まだ確認せず
  • *世界的なサプライチェーンを強化し改善する方策を模索すること重要
  • *需要の伸び抑制に向け努力
  • *議会は中期的に供給増に寄与できる可能性
  • *農産業の現状は非常に困難
  • *米政策金利はなお比較的低水準
  • *政策金利をより「中立的な」水準に引き上げたい考え
  • *インフレが目標を上回り続ける中、(前回のFOMCで)75bpの利上げ実施が重要と納得した
  • *長期的な中立金利は2.5%近辺
  • *金利を適度に抑制的な水準に引き上げることが適切
  • *非常に高水準にあるインフレの抑制に向け、金利がその水準を上回ることが必要
  • *どの程度まで金利を引き上げるかはデータ次第
  • *入手されるデータを見極めつつ、柔軟に対応へ
  • *利上げが景気後退を招く可能性はある
  • *世界情勢、われわれが達成したいことを困難にしている
  • *バランスシートの縮小が十分に進んだ段階でMBS売却を検討へ
  • *将来のある時点でMBSを売却する必要がある可能性
  • *労働市場は持続不可能なほど過熱
  • *FRB、インフレ面で目標達成にほど遠い
  • *インフレ抑制によって、最大雇用を確保できる経済状態に戻す
  • *景気後退を引き起こす必要があるとは考えず
  • *労働市場が恩恵を受けるよう、物価安定の回復は不可欠
  • *賃金の上昇が平坦化しつつある一定の証拠
  • *賃金の低下は望まず、より持続的な上昇ペース望む
  • *2%のインフレ目標と整合する形でいずれ、賃金が最も持続可能なペースで上昇すること望む
  • *金利上昇がかなり急速に住宅価格に影響する見通し、住宅市場は減速している
  • *適正な価格の住宅物件が十分にない可能性
  • *住宅市場をより持続可能な軌道に戻したい
  • *われわれの目標はソフトランディングだが厳しい課題、過去数カ月でかなり厳しくなった
  • *ソフトランディングを達成するFRBの能力、コントロール外の要因にある程度左右される
  • *FRBが物価安定を回復できなければ、インフレ期待が上昇するリスク
  • *インフレ引き下げで失敗はできない
  • *大規模な懸念される影響を招くことなく、インフレを2%に低下させる道筋は存在する
  • *景気後退を招かず、インフレを抑制することがわれわれの目標
  • *物価が急落する可能性を伴う特異な状況の可能性もある
  • *供給面での進展を確認する必要あるが、それを待ってはいない
  • *われわれの責務は需要を持続可能な水準に押し下げ、供給が追いつくことを可能にする
  • *銀行システムは非常に堅調
  • *市場はまずまず適切に機能している
  • *金利上昇は痛み伴うが、インフレを抑制するツール
  • *現在の高インフレ継続を許せば、最大の痛みに
  • *インフレ対応に向けた取り組み、遅すぎることはない
  • *仮想通貨に対するより良い規制が必要
  • *堅調な労働市場を維持しながら2%のインフレを達成することがわれわれの目標
  • *100bp利上げに関する質問に対し、「いかなる利上げ幅も排除しない」
  • *物価安定の回復に向け、必要とされるあらゆる手段を講じる
  • *消費者部門は総じて金融面で極めて堅調
  • *消費支出はしっかりと持ちこたえている
  • *インフレ鈍化を示す説得力のある証拠はない
  • *コア個人消費支出(PCE)価格指数の伸びは今年和らいだが、望ましい水準を大幅に上回っている
  • *景気後退の可能性が特に高まったとは見受けられず
  • *米経済は足元堅調
  • *金融情勢は明らかに引き締まり、成長は減速した
  • *ステーブルコイン(法定通貨を裏付け資産とする仮想通貨)や他のデジタル資産に規制の枠組みが必要

引用:ロイターより

ソフトランディングの可能性は低くなった

今回の発言を見ると、米国経済のソフトランディングの可能性というのはなかなか厳しいのかなという印象です。パウエル議長もそれを目指しており、その可能性はあると述べてはいますが、非常に困難であると述べています。これだけ明確に難しい状況であるということを公で発言するということは相当に難しい状況なのだろうということでしょう。そういう意味ではやはり今後の米国経済は大幅な景気後退の可能性も十分にあり得るのではないかと思います。利上げについても7月は0.75bpでほぼ確定でしょう。9月に関しては0.5の可能性も指摘されてきており、市場もその可能性を織り込み始めています。ただ、いずれにせよ今後の経済指標によっては想定以上の利上げという可能性も十分に考えられており、そのことはパウエル議長も述べています。そういう意味では9月の利上げがどのようになるのかということはあまり想定しない方がいいと思います。最悪を想定した準備が必要となるでしょう。いずれにせよ、利上げをはじめ金融政策がどのようになるのかというのは今後の経済指標次第といったところです。今のところはこのような感じですが、今月の消費者物価のようにサプライズがあれば柔軟に政策を変えてくるはずです。その可能性はパウエル議長も述べていますし、その他の連銀総裁も述べています。そういう意味でも今後も発表される雇用統計や消費者物価等の指標には注意が必要です。

まとめ

今日は先日行われたFRBのパウエル議長の議会証言についてみてきました。特別大きなサプライズはありませんでしたが、今後の展開についてやや厳しい見方をしているような発言があったことで、その可能性はやや高まったのかなという印象です。やはり8%を超えるインフレを抑制させるということは並大抵のことではないのでしょう。インフレだけを見ておけばいいというのならまだしも、今はウクライナ情勢や世界的なエネルギー価格や食品価格の高騰などやることがあまりにも多すぎて対処しづらいのだろうと思います。そういう意味でも今後はしばらく低調な展開が続くのだろうなという印象です。