食料安定供給のためにバイオ燃料はやめるべきか

ウクライナ情勢により、世界的に食料供給に対する懸念が出てきています。小麦をはじめとしてロシアとウクライナは多くの食料を世界中へ輸出してきました。それが今後はかなり制限されることがほぼ確実な情勢です。加えて世界的な需要増加に生産が追いついておらず、ただでさえ供給不安が起きているところにインフレも重なり、食料の安定供給がかなり危うくなってきました。そして食料というのは何も人間が食べるだけではなく、エネルギー源としてもバイオ燃料として利用されています。そのため、バイオ燃料に対する批判も増えてきました。今後も食料の安定供給は非常に重要な問題であり、これらの議論は激しくなると予想されます。そういうわけで今日は食糧問題について考えていきます。

食糧事情は悪化の一途

ウクライナ情勢やコロナ後の経済活動再開を受けて食料価格が非常に上昇してきました。ロシアとウクライナは食料を世界中に供給してきた重要な国です。そこからの供給が今後はかなり不安定な状況になることはほぼ確実となっています。そして世界経済正常化による需要の増加に供給が追いついておらず、食料価格がどんどん上昇しているのです。世界的な気候変動の影響もあり、食料の安定供給というのが非常に難しくなってきています。そういう意味でも今後は食料の安定した確保というのが非常に重要になってくるのです。

バイオ燃料に対する風当たりが強くなる

そんな中、食料をエネルギーとして利用するバイオ燃料に対する風当たりが非常に強くなってきています。食料をエネルギーに利用するのであれば当然その分の食料が減ることになります。そうなるとただでさえ厳しい食料供給に拍車をかけることになり、やめるべきだというのです。

米シンクタンク、国際食糧政策研究所(IFPRI)は「今は(各国政府が)人為的な奨励策や強制的な混合目標を策定して農作物のエネルギー転換を促すべき時ではない」と指摘する。ロシアとウクライナは合わせて世界のトウモロコシの20%弱、ヒマワリ油の50%強を生産しているが、両国からの農作物輸出は紛争前の水準から激減した。グテレス国連事務総長は8日、紛争に起因する食料不足で数億人が「飢餓と困窮」の危機に直面していると警告した。米調査会社グロ・インテリジェンスによると、バイオ燃料に使われる農作物の総量は年間で19億人分のカロリー消費量に相当する。食料危機が悪化した場合、それと同量の農産物をエネルギー利用から食用に転換できるということだ。

引用:日本経済新聞社より

このように世界的な食糧危機に直面している現在、貴重な食糧をエネルギーなど他の用途に転用するのは良くないというのです。

バイオ燃料を規制すれば問題解決になるのか

たしかにこの言い分は正しいように思います。しかし、当然ながら反論もあり、バイオ燃料を規制したところで現在の食料供給の問題の解決にはならないというのです。

だが、エタノール業界はその例えを不公平だと反論する。燃料の原料となる穀物の大部分はパンに使う製粉用小麦ではなく、家畜向けの飼料用小麦だという。同業界の幹部はバイオ燃料に使われる小麦がごく少量にとどまると主張する。ドイツの業界団体UFOPによると、小麦生産量の2%ほどだという。「その程度しかないのに、現在のパンの供給不足の問題を小麦由来のエタノールと結びつけて語るのはいささか見当外れだ」。欧州最大の穀物バイオ燃料プラントをハンガリーに持つクロンバイオ社(アイルランド)とエタノール・ヨーロッパの投資ディレクターを務めるエリク・シーバース氏はこう切り返した。

引用:日本経済新聞社より

現在バイオ燃料に用いられている小麦は飼料用の小麦であり、その量はごく少量であるというのです。それは全体の約2%程度であり、そこを規制したところで何の問題解決にもならないというのです。この主張が正しいのであれば確かにそうでしょう。たった2%程度の量を規制したところで全体に与える影響というのはたかが知れています。そういう意味ではバイオ燃料への規制というのは全く意味のないものだと思います。

大局的に考える必要があるのだろう

正直この問題についての答えというのはわかりません。ただ、少なくとも食料価格が高騰しているということと、供給が不安定であり、多くの人が食料を確保できずに困っているということは事実です。そういう意味では食料生産をはじめとしてこの問題をそのままにしておいていいということはないでしょう。これは食料だけではなくエネルギーや環境問題など様々な問題とかかわってきます。そういう意味ではいろいろな面から多角的に議論していく必要があるでしょう。しかし、現状世界中の国はあまりその議論を真剣にしていくという感じはしません。国連もあまり機能していない現在、食糧問題は長期化していくのだろうと思います。

まとめ

今日は現在の食糧問題について考えてみました。今起きている価格高騰や供給問題は簡単には解決しない問題でしょう。それはエネルギーや環境などいろいろな問題が複雑に絡み合った問題であるため、解決は容易ではないと思われるからです。そういう意味では今後も食料問題は長く続いていくと思われます。投資家としてはそこにチャンスがあるのだろうと思っています。食料価格が落ち着くということは当分ないでしょう。であればそこで利益を上げられる企業もたくさん存在するはずです。そのような企業を見つけることができれば資産をより増やすことができるのです。