3月の求人件数は大幅に減少

労働市場の鈍化の流れは加速しているようです。3月の求人件数は市場予想よりも大幅に減少し、労働市場が急激に減速してきていることがわかりました。一時期はどんな状況になっても強かった労働市場ですが、ここへ来てかなりの鈍化となってきています。ようやく引き締めの効果が出てきたという感じがしますが、加減を間違えると大変なことになるためFRBには慎重な対応が求められるところです。

3月の求人件数は予想以上に減少

昨日発表された3月の求人件数は市場予想よりも大幅な減少となりました。

3月の米求人件数が予想以上に減少した一方、レイオフ数は大幅に増加し、労働需要が軟化していることを示唆した。

 今回の統計は労働需要が緩やかに鈍化していることを示唆しており、最終的に雇用市場のバランスが良くなり、賃金の上昇圧力を抑制するとみられる。ハイテク企業や金融機関など一部で人員削減が実施されているが、労働市場全体はなお底堅い。

  レイオフ数は建設業や宿泊関連、外食産業、ヘルスケアを中心に増加し、2020年12月以来の高水準となった。離職者が減少し、雇用確保を巡る懸念が出始めていることを示唆した。

  全雇用者に占める自発的離職者の割合である離職率は2.5%に小幅低下し、2年ぶり低水準に並んだ。自発的離職者は約390万人。主に宿泊や外食産業で減少した。

  失業者1人に対する求人件数は1.6件に小幅減少し、21年10月以来の少なさ。新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となる前は、1.2件前後で推移していた。

  米金融当局はこのレシオを注視しており、失業を急増させることなく、労働市場ひいてはインフレを抑制することができる根拠に、求人件数の高止まりを挙げている。

  ブルームバーグエコノミクスのエコノミスト、スチュアート・ポール氏は「労働市場が鈍化し始めていることは間違いない。求人件数の減少と離職率の低下は米金融当局に歓迎される動向だろう。リスクバランスが物価安定よりも雇用最大化の確保にシフトするためには、労働市場がもっと急速に悪化する必要がある」と述べた。

  企業はレイオフを始める前に採用を凍結する傾向にあるため、労働省雇用動態調査(JOLTS)は今後数カ月の労働市場を見極める上で主な指標となりそうだ。3月の採用数は前月からほぼ変わらず。

  JOLTSの回答率が低いため、信頼性を疑問視するエコノミストもいる。回答率は昨年末までに約31%に低下し、3年前のおよそ半分となった。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は大幅に鈍化してきています。強いインフレを抑えるため、FRBはこれまで急激な引き締めを継続してきました。しかし、なかなかインフレは落ち着かず、特に労働市場のタイトさには頭を悩ませていたところだと思います。しかし、ようやくその労働市場も南下してきたようです。企業では人員整理の動きが活発となり、この様な結果は時間の問題だと思われてきました。なので驚くようなことではありません。特にインフレ抑制という目的を考えるとある程度の労働市場の落ち着きというものも重要になってくるため、望ましい動きとも言えるでしょう。しかし、その副作用として多くの金融機関の経営を圧迫するという問題も出てきています。急激な金利引き上げの結果、経営状態が悪化し、破綻する銀行が相次いでいます。今月に入ってまた銀行の破綻が起きました。金利の引き上げはインフレ抑制という観点から見れば必要なことですが、金融機関からすると経営を圧迫する大問題です。そういう意味ではそのバランスが重要であるを言えます。緩めればインフレは長く居座ることになり、引き締め過ぎれば多くの金融機関などの企業経営を圧迫し、景気の大幅な抗体を招くなどの悪影響が出てくるのです。そういう意味では今後もFRBの金融政策には非常に注目が集まるところであり、慎重な行動が求められるでしょう。

今後の金融政策に注目

最近の経済指標を見る限り、インフレは確実に落ち着いてきていることは確かです。問題はそれでもなおインフレは高く、FRBの言葉を借りれば粘着性が高いということです。おそらく今回のインフレは落ち着くまでに相当な時間を要することになり、引き締めも長期間に渡ることになるでしょう。そういう意味では経済には長期間締め付けを行うこととなり、大きなダメージを与えることになるということです。そういう意味では今の所3つの金融機関の破綻が起きていますが、これで終わるという保証はどこにもないということです。むしろ今後も同じ様な破綻が起きる可能性は非常に高く、無視できるものではないと言っていいでしょう。そしてその様な状況をFRBがどのように見ているのかということが非常に重要です。おそらくは5月の利上げは25bpとなると思いますが、問題はそれ以降の利上げがどのようになるのかということです。もし、6月以降も厳しい引き締めを継続するということになればすぐにでも破綻する金融機関が出てもおかしくないと思います。それだけ米国の金融機関の経営は悪化しています。そうなれば米国経済はますます悪化し、回復への道のりは更に遠のくと言っていいでしょう。そういう意味ではFRBが今後の金融政策についてどの様な考えを持っているのかということに非常に注目が集まるところです。

まとめ

今日は3月の求人件数について見てきました。労働市場は順調に冷え込んできています。インフレが健在であるため、落ち着くことはいいことですが、加減を間違えると経済も大きく悪化してしまうため、非常に力加減が難しいところです。その下限をうまくできるのかということが非常に問題ということでしょう。