新規失業保険申請件数は大幅に増加。労働市場は確実に軟化してきている。

落ち着きを見せてきた労働市場ですが、その傾向は今も継続しているようです。先週申請された新規失業保険申請件数は大幅に増加となり、労働市場も一段と落ち着きを見せてきました。インフレを抑えるべく引き締めを継続してきたFRBにとっては朗報と言えると思いますし、金融不安が一段と増す中、インフレの落ち着きを示す傾向は非常に良いことと受け取っていいでしょう。

新規失業保険申請件数は大幅に増加

昨日発表された先週一週間での新規失業保険申請件数は大幅な増加となり、労働市場の軟化を示す結果となりました。

先週の米新規失業保険申請件数は6週間ぶりの大幅増加となった。一方で、失業保険の継続受給者(4月22日終了週)は昨年7月以来となる大幅な減少。相対的に堅調を維持する労働市場で若干の軟化が示唆された。

  労働市場は一部で弱さを見せ始めているとはいえ、他の経済指標に比べると冷え込みのペースはかなり遅い。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は5月2、3日に開催した定例会合で、主要政策金利を0.25ポイント引き上げることを決定。今後は引き締め効果が経済に浸透するのを待つべく利上げを停止すると見込まれており、米金融当局者はいずれ労働市場も冷却化することを望んでいる。

  失業保険申請件数は季節調整前ベースでは前週比約5500件減の21万9619件。州別ではニューヨーク州の減少が目立った。

   より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は23万9250件に増加した。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は一段と南下してきているようです。厳しいインフレとともにタイトな状態が続いてきた労働市場ですが、ここへ来て流石に軟化を示す指標が相次いでいます。これだけ引き締めが継続されれば流石に労働市場もいつまでもタイトな状態であるというのは厳しかったということでしょう。企業経営も悪化の一途をたどっており、人員整理の動きも以前より活発です。そういう意味では労働市場の悪化というのも自然なことと言っていいのではないかと思います。

金融不安がどう影響してくるか

労働市場の悪化の傾向については現状を考えると良いことだと言っていいでしょう。インフレを抑制するためにはある程度の労働市場の軟化が必要なことです。そういう意味では景気を後退させない程度の労働市場の悪化はプラスと捉えるべきです。問題はそれが景気後退に陥る程の強いものになってしまうことですが、今のところはその心配は少ないのかなという印象です。それよりも今は金融不安が与える影響のほうが重要というところでしょう。金融不安は今もなお進行中です。金融機関の破綻が相次ぎ、銀行株は毎日のように下落を続けています。そのため金利の引き上げも今後は一旦停止されるのではないかという観測も出されていますし、FOMC後の会見ではその可能性を示唆する発言をパウエル議長はしています。そういう意味では今後の金融不安の展開次第では状況は大きく変動することになるでしょう。そしてその結果、インフレがうまく抑制されてくれればいいのですが、そうならなかった場合はインフレが長く定着することとなり、株価の回復をさらに遅らせる結果となるかもしれません。そしてその可能性というのは小さくはないのかなと感じています。

まとめ

今日は労働市場の動きから今後のことについて考えてきました。労働市場の軟化のサインは非常に良いことだと思いますが、現状では金融不安を始めとした不安要素が多すぎてなんとも言えないというのが正直なところでしょう。おそらく今後は当初予定していたよりも引き締めの程度は軽くなる可能性が高いと思います。それがインフレ抑制に対してどのように作用するのかが注目されますし、あまり良い結果にならないのではないかと感じています。