4月の雇用統計の結果は予想外に強いものに。

インフレとの戦いはまだまだ終わりそうもありません。昨日発表された4月の雇用統計は予想外に強いものとなり、インフレ圧力が依然として健在であることが示されました。このため、今後の利上げについて当初期待していたような弱いものにはならない可能性も出てきています。

4月の労働市場は相変わらずの強さ

昨日発表された4月の雇用統計の結果は市場予想を大きく上回るものでした。

米国では4月、雇用者数と賃金の伸びがいずれも加速した。景気が向かい風に直面する中、労働市場の強靱(きょうじん)さと新たなインフレ圧力が示唆された。

  雇用は幅広い分野で増加。ヘルスケアや専門職・ビジネスサービス、娯楽・ホスピタリティーでの伸びが特に目立った。ただし、2-3月の雇用者数は合わせて14万9000人下方修正された。

  高金利やインフレ、与信環境の引き締まりが景気に及ぼす影響を巡り懸念が強まりつつあるにもかかわらず、今回の統計は労働需要の底堅さを浮き彫りにしている。一部企業は採用を停止あるいは従業員を削減しているが、人材確保を目指し賃金をなお引き上げている企業もある。

  平均時給は前年同月比では4.4%増加した。市場予想は4.2%増だった。

  米金融当局は今週、インフレ抑制に向けて現在の利上げサイクルで10回目となる引き上げを決定。今回で利上げ打ち止めとなる可能性もあるが、そうなるにはトレンドを下回る成長や労働市場環境の軟化が一定期間続く必要があるだろうと、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はこれまでに述べている。

  KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「労働市場はかなり逼迫(ひっぱく)した状態が続いている」と指摘。「米金融当局が追加利上げへ可能性を残したのには理由がある。今回の統計は利上げ休止に関してわれわれが望むほどの安心感をもたらすものではない」と話した。

  25-54歳の労働参加率は83.3%に上昇し、2008年以来の高水準となった。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏とスチュアート・ポール氏、イライザ・ウィンガー氏は「予想外に堅調な4月の雇用統計は、シリコンバレー銀行(SVB)破綻以降の銀行セクターの緊張が労働市場にまだ影響していないことを示している」と指摘。「とはいえ、与信環境タイト化の影響が実体経済に広がるには時間がかかる。米金融当局はそれを考慮に入れるだろう」と述べた。

  週平均労働時間は34.4時間で前月から変わらず。20年4月以来の低水準に並んだ。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は相変わらずタイトです。労働市場も一時期ほどの勢いはなくなったとはいえ、インフレ抑制のための利上げを停止させるほど無視できるようなものではないでしょう。そういう意味では今後の金融政策に与える影響も小さくはないと思われます。もちろん今回の結果は現在の金融不安を正しく反映していないとは思います。おそらく今後の雇用関係の統計ではその影響が出てくると思われますし、5月以降の雇用統計にはその影響も出てくるでしょう。そういう意味ではそこまで気にする必要もないかもしれませんが、不透明感が増したことは事実であると言っていいと思います。

金融不安にどのように対応していくのか

米国の労働市場の強さは本当にしつこいと言っていいでしょう。ここまで引き締めを行っているのにも関わらず、これだけ強さを維持できるのですから大したものです。ただ、やはりインフレが高くとどまっている現在においては厄介な問題であると言わざるを得ません。FRBは金融不安を解消するためにも今後はやや引き締めの手を緩めてくる可能性があります。しかし、今回の結果はその決断を躊躇させるのに十分だと思われます。労働市場を始め、各種のインフレ指標が多少なりとも軟化の兆しを示していれば一旦利上げの停止の決断もしやすかっただろうと思います。しかし、雇用がこれだけ強いとなるとその決断には勇気がいることとなるでしょうし、反対意見もそれなりに出てくることでしょう。そういう意味では今後の金融政策の行方には非常に注目が集まるところです。

まとめ

今日は4月の雇用統計について見てきました。米国の労働市場は相変わらずの強さです。この強い雇用というのは本当に困ったものと言う感じでしょう。FRBも相当対応には苦慮しそうです。そんな中で起きてきた金融不安にどう対処するのか。非常に興味があるところですが、当事者のFRBにとっては頭の痛い難問だと思います。