今後の金融政策は経済指標次第

インフレと金融不安という非常に難しい問題が残る米国経済ですが、今後の金融政策については今後の経済指標ということになりそうです。先週末に発信されたFRBからのメッセージはいずれも今後の金融政策については今後の経済指標次第というものであり、今の時点でどうこう言えるということではないようです。しかし、インフレに対しての警戒感は依然として強く、可能な限りインフレ抑制のために金融は引き締めていく方向であるということは間違いないところだと思われます。

引き続き引き締めが必要

先日、セントルイス連銀のブラード総裁はイベントにて米国は依然としてインフレが強く、厳しい金融政策の必要性について訴えていました。

米セントルイス連銀のブラード総裁は5日、インフレ率を下げるには政策金利をさらに引き上げなくてはならないだろうと述べつつ、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でどのような行動を取るべきか決める上では、これから出てくるデータを待ちたいと話した。

  ミネアポリスで開かれたイベントに出席後、「この15カ月における積極的な政策がインフレ率の上昇を抑制してきたが、(2%目標への軌道に)乗っているかどうかはあまりはっきりしていない」と記者団に述べた。これから出てくる経済データを精査したいと考えているが、利上げがもう必要ではないと確信するには「インフレ率の有意な低下」を確認しなくてはならないだろうと話した。

  同総裁は講演で、米金融当局が著しい景気低迷を招くことなくインフレ率を目標の2%に戻し、経済をソフトランディング(軟着陸)させるのはなお可能だと考えていると述べた。

  「経済はリセッション(景気後退)入りするかもしれないが、それは基本シナリオではない」と指摘。「恐らくは労働市場の幾分の軟化とインフレ率低下という低成長が基本シナリオだと考える」と述べた。「そのシナリオに最も重きを置くべきではないか」と促し、インフレ率を下げるのに失業率が急上昇する必要は無いとの考えを示した。

  ブラード総裁は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で投票権を持たない。

  同総裁はこの日発表の雇用統計が予想を上回る強さを示したと述べたほか、求人件数も新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前に比べて依然かなり高い水準だと指摘。

  「労働市場は非常にタイトだ。冷え込むにはしばらく時間がかかるだろう」とし、「その側面では忍耐強くなければならず、それを理解することが求められる」と語った。

引用:bloombergより

このようにブラード総裁は今後についてもインフレ抑制のために厳しい金融政策の必要性を指摘しています。先日発表された雇用統計の数値が予想外に強いものであったことも指摘し、インフレ抑制には非常に時間がかかるだろうとも述べています。そういう意味では厳しい金融政策は今後も続くものと見られます。

今後の経済指標を注視

また、シカゴ連銀のグールズビー総裁は今後の政策金利の動向については現時点で決定していることはないとの発言をしています。

米シカゴ連銀のグールズビー総裁は5日、来月6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での政策金利を巡って判断を下すのは時期尚早だと述べた上で、銀行セクターの緊張が金融当局の仕事の一端を担う可能性もあるとの見方を示した。

  グールズビー氏はFoxニュースのインタビューで金融セクターの混乱について、「それによって少し立ち止まらなければならないだろう。そうした展開は景気を減速させる可能性が高く、そのことを考慮する必要があるのは確かだ」と語った。

  「現在見られているような信用状況は、過去にはリセッション(景気後退)や信用収縮と相関があり、金融引き締めのような効果を持ったことを承知している」とし、「われわれはデータを注視する必要がある」と指摘した。

引用:bloombergより

グールズビー総裁はこのように述べ、今後の金融政策は今後の経済指標次第であることを述べています。相次ぐ金融機関の破綻により、米国経済は大混乱に陥っています。その影響を当然ながら無視できるものではなく、金融政策にも大きな影響を与えることでしょう。それも考慮しつつもインフレ抑制のための行動を行っていく用意があるということだと思われます。

全ては今後次第

FRBとしてはまだインフレは十分に抑制されておらず、引き続き可能な限り引き締めていく必要があると考えているものと思われます。ただ、金融不安を無視することはできないと考えており、その状況によっては柔軟な金融策を実行していく考えであるということでしょう。そういう意味ではまだ強いインフレを意識して今後も利上げは継続する見込みではありますが、金融機関の状況などをきちんと踏まえた上で金融政策を柔軟に変更していくものと思われます。そういう意味では最悪な事態にはならないのかなとは思いますが、とても安心できる状態ではないということに変わりはないと思います。そういう意味では引き続き注意が必要ということでしょう。

まとめ

今日は今後の金融政策について考えてきました。今後については今後の経済指標次第と言ったところです。それによって引き締め継続なのか、一旦停止なのかが決まってくるでしょう。何も問題がなければインフレ抑制のために金利は引き上げられる可能性が高いでしょうし、予想外に経済が悪化すればそれに応じて緩めるということも十分にありそうな感じがします。