新規失業保険申請件数は大幅に増加。

米国の労働市場は徐々に軟化しているようです。先日発表された先週一週間での新規失業保険申請件数は大幅に増加し、労働市場の悪化を示唆する内容でした。先週は祝日を含む一週間だったために、やや数字をそのまま受け取るわけには行きませんが、労働市場がなんかしていることには変わりないでしょう。そういう意味ではインフレも少しずつ落ち着いてきているのかなという印象です。

新規失業保険申請件数が大幅に増加

先週申請された新規失業保険申請件数は非常に大幅な伸びを見せ、労働市場の一段の悪化を示唆するものとなりました。

先週の米新規失業保険申請件数は2021年10月以来の高水準に増加した。増加している企業のレイオフ発表が実際の雇用削減につながり始めた可能性が示唆される。

  失業保険の継続受給者数は5月27日終了週に3万7000人減の176万人と、2月中旬以来の低水準となった。

  申請件数のデータは特に祝日前後には変動が大きくなりやすい。6月3日終了週にはメモリアルデー(戦没者追悼記念日)の祝日があった。より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は23万7250件に増加した。

  サンタンデールUSキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は統計発表後にリポートで、「メモリアルデーの祝日のために通常より営業日が短かったことを反映している。今回の急増は何らかのシグナルというよりノイズであったとの疑念を抱かせるはずだ」と指摘。「来週発表されるデータを見てから結論を導き出したいと強く思っている」と記した。

  今回の統計は労働市場がおおむね堅調なものの、冷え込みの兆候も見え始めたことを浮き彫りにした。米企業が発表したレイオフの件数は、今年最初の5カ月で既に昨年通年の規模を上回った。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「新規失業保険申請件数が急増し、2021年10月以来の高水準となったことは、われわれの分析と整合的だ。われわれはレイオフ急増の可能性に注意を促していた。失業率は米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の予想中央値で年末までに4.5%となっているが、その水準に達する可能性はますます高くなっている」と述べた。

  申請件数は季節調整前ベースでは21万9391件に増加した。州別ではオハイオ、カリフォルニア、ミネソタでの増加が特に目立った。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は徐々に軟化しています。このような兆候は以前より多くありました。IT企業を中心に多くの企業が人員整理を実施してきています。そういう意味では失業者の増加というのはある意味必然であると言えるのかなと思います。それがようやく結果として現れてきたということでしょう。そういう意味では強かった労働市場にもようやく悪化の傾向が顕著になってきたと言っていいのかもしれません。ただ、今回の結果はやや誤差が多くなっている可能性があることも考慮しておくべきでしょう。先週は祝日を含む一週間でした。このような場合、指標はやや誤差が大きくなる傾向があります。そういう意味では今週の結果だけを鵜呑みにするのは危険です。なので移動平均で見たり、来週の結果を待って判断するという方が懸命でしょう。

程よい軟化は悪いことではない

米国の労働市場は確実に悪化してきています。その傾向は更に強くなっているのかなという感じがします。一時期はいくら金利を引き上げても、企業業績が悪化しても労働市場だけは堅調という感じでしたが、流石に息切れしたというところかなと思います。まあ、当然といえば当然かもしれませんが。いずれにせよ、インフレが高く推移している現在、ある程度の労働市場の冷え込みというのは歓迎すべきものでしょう。労働市場が冷えてくれば金融政策をそこまで引き締める必要はなくなる可能性があります。そうなれば経営が苦しい金融機関にとっても朗報ですし、景気悪化を緩める効果も期待できるところです。まだ今回の結果だけでどうこう言えるものではありませんが、とりあえずは良い方向なのかなと思います。

まとめ

今日は新規失業保険申請件数について見てきました。米国の労働市場は緩やかにあっかしているという感じです。あまりに極端に悪化するのはよくありませんが、この程度の悪化であればインフレを落ち着かせるという意味でも歓迎すべきものなのかなという感じです。そのバランスがどの程度かということは正直良くわかりませんが、少なくともそんなに悲観するような状況ではないと感じています。そう入ってもしばらくは米国市場はパットしないとは思いますが。