今後の金融政策は未知数であり、マーケットが望むような緩和が行われる保証はない。

市場では今後の金融政策についてはやや緩和的に見る向きが強いような気がしますが、実際はそこほどかんたんには行かないように思います。実際、FRB内部でも意見の相違はあるようであり、まだまだ結論は出ていないと言っていいでしょう。にもかかわらず、市場では緩和期待が先行しているということはやや危険な兆候だと思います。

FRBは今後の金融政策についてどう考えているのか

昨日、複数の連銀総裁が講演を行い、今後の金融政策に対する見解を述べました。

米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、経済面でサプライズがない限り、連邦公開市場委員会(FOMC)は利上げを終了できる可能性があるとの見解を示した。ただ政策金利は当面、現在の高水準に据え置く必要があるとも指摘した。

  総裁は8日、フィラデルフィア・ビジネス・ジャーナル主催のイベントで講演。事前に配布された原稿によれば、「今から9月半ばまでに憂慮すべきデータが新たに出てこなければ、われわれは辛抱強くなって金利を据え置き、これまで実施した金融政策が機能するのを待てる状況になるのではないかと、私は考えている」と述べた。ハーカー氏は今年のFOMC会合で投票権を有する。

  一方、リッチモンド連銀のバーキン総裁は同日、9月のFOMC会合で追加利上げが適切となるかどうかを言うのは時期尚早だと論じた。

  バージニア州ラウドン郡の商工会議所で開かれたイベント終了後、「私は9月まで決定を待つ方向に傾きつつある」と発言。それまでにインフレ統計が2つ発表され、その1つは10日に発表されるなどとし、「予断を持つ理由は一切見当たらない」と述べた。バーキン氏は今年、FOMC会合での議決権は持たない。

  FOMCは7月会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を22年ぶり高水準の5.25-5.5%に引き上げた。  

  ハーカー総裁は講演で「金利を据え置ける状況になった場合、その水準でしばらく維持する必要があるだろう」とし、「政策金利を直ちに引き下げるような状況は想定していない」と語った。

  同総裁はその後、フィラデルフィアの公共ラジオ局WHYYで「いつか、恐らく来年に利下げを開始することになるだろう」と述べた。

  米金融当局者の全てが、利上げサイクルを近く終える可能性があるとの考えで一致しているわけではない。米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は7日、物価安定の完全回復に向けて一段の利上げが必要になる可能性があるとの考えをあらためて表明した。

  ハーカー総裁はインフレに関しては、金融当局が注目する個人消費支出(PCE)コアインフレが、2023年末までに前年比で4%をやや下回る水準に低下し、24年末までに3%未満、25年には当局目標の2%に下がるとの予想を示した。

  「緩慢なペースながらも確実なディスインフレと整合する形で、経済活動は緩やかな減速にとどまると考えられる」と総裁は指摘。「言い換えれば、われわれ全員が望みつつ過去には実現の可能性が非常に不明瞭だったソフトランディングへの軌道を現在進んでいると私はみている」と付け加えた。

引用:bloombergより

このように現在のところ、緩和を決定づけるようなものはないように思えます。ハーカー総裁は条件次第ではありますが、金利はもう引き上げる必要はないかもしれないと発言しています。反対にボウマン理事は引き続き物価安定のためには利上げを行うべきと主張しており、真っ向から意見が別れています。もちろん全ては今後のデータ次第だとは思いますが、少なくとも今後速やかに緩和が行われるという保証はどこにもないように思います。

何も決まっていることはない

結論から言えば全ては今後のデータ次第ということでしょう。少なくとも現状で利上げ終了や、緩和へ進んでいくとはとても言えないということはよくわかります。なのに市場では緩和期待が異常に高まっているというのはやや理解に苦しむというところです。そういう意味では今後大きなしっぺ返しが来そうで非常に怖いなという感じがします。

まとめ

今日は今後の金融政策について考えてきました。何度も言うようですが、現在のところ何も確定的なことはありません。よって、利上げが行われるとか緩和が行われるなどと決めつけて行動することは非常に危険であることは認識しておきましょう。少なくとも市場が見ているような緩和期待というものはFRB内部には存在しません。まったくないと言うのは言いすぎかもしれませんが、少なくともそうと決まっていないことは確実です。そこはきちんと認識しておいたほうがいいでしょう。