8月の消費者物価は予想外に強いものとなり、ソフトランディングへの期待はかなり削がれることとなる。

インフレとの戦いはまだまだ続きそうです。8月の消費者物価指数が発表され、予想外に強い数値に市場は動揺する形となりました。最近はインフレ鈍化の傾向が続いていたためにややサプライズと感じた市場関係者が多かったようです。いずれにせよインフレは落ち着いてきたとはいえ、2%の物価目標へと向かう気配はまだ見えません。そういう意味ではインフレとの戦いの終焉というのは暫く先の話になりそうです。

8月の消費者物価は予想外の強さを見せる

昨日発表された8月の消費者物価指数は市場予想を上回るものとなりました。

8月の米消費者物価指数(CPI)統計では、食品とエネルギーを除くコア指数が前月比で予想を上回る伸びとなり、米金融当局による追加利上げに余地を残す格好となった。

  コア指数の伸びが前月比で加速するのは6カ月ぶり。前年同月比の伸びは市場予想と一致し、約2年ぶりの小幅な上昇率にとどまった。

  エコノミストらは、基調的なインフレを見る上では総合指数よりもコア指数の方が適していると考えている。総合指数は前月比の伸びがここ1年余りで最大となり、前年同月比の伸びは市場予想を上回った。エネルギー価格の上昇を反映した。米労働統計局(BLS)によると、総合指数の上昇分のうち、ガソリンが半分以上を占めた。

  今回の統計は、米経済の勢いが増し、物価上昇圧力が再燃しているとの懸念を強める内容だ。米金融政策当局者はリセッション(景気後退)に陥ることなくインフレを抑制できるとの楽観的な見方を強めているが、インフレが再び加速すれば、さらなる利上げを余儀なくされ、その過程で景気低迷を招きかねない。

  CPIは米金融当局者が来週の連邦公開市場委員会(FOMC)前に入手できる最後の主要データの一つとなる。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は先月、金利を高水準に維持し、景気とインフレが落ち着かなければ追加利上げもあり得るとの認識を示している。

  市場は依然として来週の会合で金利が据え置かれるとみているが、11月会合については利上げをほぼ五分五分の確率で織り込んでいる。

  特に家賃、自動車保険料、航空券の値上がりがCPIの押し上げ要因となった。新車価格は5カ月ぶりに上昇。中古車価格やコンサート・映画の入場料は下がった。

  最大のサービス項目で総合CPIの約3分の1を占める住居費は0.3%上昇にとどまった。ホテル宿泊費の下落が全体を抑制した。コアインフレの持続的な鈍化には、住居費の上昇ペース減速が不可欠だ。

  ブルームバーグの算出によれば、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.4%上昇と、ここ5カ月で最大の伸び。前年比では4%上昇した。パウエル議長をはじめとする金融当局者は、インフレの軌道を精査する上でこの指数に注目しているが、金融当局は別の指標からインフレ軌道を算出している。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、アナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏は「米金融当局者はエネルギー価格の上昇はそこまで重大視しないだろうが、輸送サービスについても同様の対応を取るかは分からない」と指摘。航空券価格は変動が大きいとして重視しないかもしれないが、自動車保険料については数カ月にわたって上昇が続いていることを指摘した。

  米家計の大半は依然として厳しい状況にある。エネルギー費用は幅広く上昇し、特にガソリンは先月10%余り跳ね上がった。光熱費も上昇した。食品価格も上昇したが、前年比の伸びはここ2年で最も小さかった。

  一方、財の価格の伸びは減速しており、インフレ率の低下に寄与している。食品とエネルギーを除いたコア財価格は3カ月連続で下落した。

  インフレ期待は安定しており、雇用市場もおおむね底堅いが、米消費者は経済に対して悲観的な見方を強めている。とりわけ生活必需品の価格は高止まりしており、多くの人がクレジットカードや貯蓄に頼らざるを得ない状況にある。また、学生ローンの返済再開が間近に迫っており、多数の借り手にとって新たな負担となるだろう。

  賃金上昇率はようやくインフレ率を上回ってきたが、その差は縮小し始めている。13日に公表された別のデータによると、インフレ調整後の平均時給は前年同月比0.5%増と、2カ月続けて伸びが減速した。

引用:bloombergより

このように8月の消費者物価は市場予想を上回る結果となり、インフレが未だ健在であることを示した形となっています。今回の結果はFRBが金融政策を大きく変更させるようなものではないとは思いますが、インフレ圧力がいまだ強いことを示す十分なものであり、今後については引き続きタカ派を維持するのに十分な内容であったと言っていいでしょう。そういう意味では年内にあと1回の利上げの可能性がかなり高くなり、状況によっては2回の利上げということも十分に考えておかなければならない状況ではないかと思います。そういう意味では今回の結果というのは市場にあふれる楽観論を牽制するのに十分なものになったのではないかと思います。

インフレ鈍化まで経済が持つのか

やはりインフレはそう簡単には収まらないということでしょう。最近では良好な経済指標を背景に楽観的な論調が目立っていましたが、そう簡単には行かないということです。おそらくはインフレは相当程度居座り続ける可能性があり、そのため金融政策も緩和されるということはなかなか期待できないのではないかと思われます。その結果として経済が持ちこたえられず、失速するという可能性も十分に出てきたと考えるべきでしょう。今のところは労働市場などが堅調なために景気失速の懸念もないという感じですが、この状態が永遠に続くということはありません。必ずどこかのタイミングで失速するはずです。問題はインフレが失速するのが先か、労働市場が悪化するのが先かということであり、どちらになるかで大きく展開は変わってくるでしょう。予想外に強い労働市場が果たしてどこまで持ちこたえてくれるかということが非常に気になるところではありますが、ここまでしつこいインフレが落ち着くまで持ってくれるかというのはなかなか言い切れないのではないかという感じがします。

まとめ

今日は8月の消費者物価について見てきました。インフレはやはりそうかんたんには鈍化していかないでしょう。かなりの長期戦となるはずです。そしてそれが終焉するまで経済が持ちこたえられるのかというのはなかなか難しいのではないかと思います。予想外に強い米国経済と特に労働市場に期待したいところですが、流石にこれ以上を望むというのは難しいのではないかと感じています。