米国のGDPは大幅に下方修正される。

米国経済は依然力強さを残しています。しかし、景気後退の足音は確実に忍び寄っているようです。先日発表された米国の個人消費の指標は大幅に下方修正され、米国の経済を支える個人消費が大きく落ち込んでいることが分かりました。米国のGDPの約7割は個人消費で占められています。そこが大きく減少するのですから影響は避けられないでしょう。そういう意味でも今後は景気後退の可能性はさらに大きくなるのではないかと思われます。というわけで今日はそれらのニュースについてみていきます。

1-3月期のGDPは大幅に下方修正

米商務省が29日に発表した、米国の1-3月期のGDP確定値は大幅な下方修正となりました。

1ー3月(第1四半期)の米実質国内総生産(GDP)確定値では、個人消費が新型コロナウイルス禍からの回復過程で最も低い伸びとなった。改定値からは大幅下方修正となり、従来の想定以上に米経済が弱い足取りとなっていたことが示唆された。 米経済の最大部分を占める個人消費の1ー3月確定値は前期比で年率1.8%増。改定値は同3.1%増だった。

引用:Bloombergより

このように米国の個人消費は大幅な落ち込みを見せ始めました。新型コロナからの経済活動再開を受けて堅調に推移していた個人消費ですが、ここにきてインフレや金融引き締めの影響が出てきたものと思われます。依然として労働市場などは堅調ですが、もはやそれらをもってしてもこの高いインフレを吸収することはできなくなってきたということでしょう。そういう意味でも今後の先行きは非常に懸念されます。

パウエル議長も現状の困難さを認める

FRBのパウエル議長も現状非常に厳しい状況になっていることについて認めています。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は米経済が「力強い状態」にあり、FRBは堅調な労働市場を維持しながらインフレを2%に低下させることができると述べた。しかしここ数カ月、この任務は難しさを増していると認めた。パウエル議長は29日、欧州中央銀行(ECB)がポルトガルのシントラで開いた年次フォーラムで、経済の軟着陸は可能だとの見解を繰り返したがその達成はかなり厳しいと認めた。「米経済は実際のところ、かなり力強い状態にある」と評価しつつ、需給は現実にバランスを欠いており、インフレを低下させるためにはその均衡を取り戻す必要があると述べた。

引用:Bloombergより

以前はインフレをコントロールすることについて自信を持っていたような発言も多かったですが、さすがに最近は難しいということを公言するようになってきました。それだけ難しい状況ということでしょう。実際、現在の経済の置かれている状況を考えると、とても楽観できるようなものではありません。パウエル議長の言う通り、うまくコントロールして、景気を減速させずにインフレを鎮静化することは可能といえば可能なのでしょう。しかし、その確率というのは日に日に小さくなっていることは確実ではないかと思います。少なくとも今年の春ごろの状況に比べると明らかに悪化しています。そして今後もその傾向が大きく変わることはないでしょう。

為替市場も動き出す

パウエル議長の発言もあり、外国為替市場は再び大きく動き出すかもしれません。ドル円は一時1998年以来に1ドル137円に迫る勢いを見せました。

29日の外国為替市場で円がドルに対して下落し、1998年以来の安値を付けた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長ら中央銀行当局者のタカ派的な発言が後押しした。ドルは前日比0.6%高の136円99銭となり、直近の高値を更新。損失覚悟の円売り・ドル買いなどが背景にある。

引用:Bloombergより

今回のパウエル議長の発言は今後もより厳しい金融引き締めが続いていくことを想像させるのに十分なものです。対して日銀はいまだに金融緩和の手を緩める気配がありません。よって今後はさらに日米の金利差は開いていくことでしょう。であれば為替はよりドル高に向かうのは必然といっていいのかもしれません。少なくとも現状のドル高というのは米国のインフレという状況を考える限り、FRBは容認してくるものと思われます。インフレ抑制という観点から見ればドル安よりもはるかに物価抑制に働くと思われるからです。つまり米国からの円安ドル高修正の動きはまず考えられないということになります。この動きが変わるとすれば日銀の政策が変化する兆しが見えた時でしょう。今のところその気配はありませんが、このまま円安が続いていけばもしかしたら日銀の姿勢にも変化が出てくるかもしれません。正直今の黒田日銀が金融緩和の姿勢を変えるとはあまり思えませんが、少なくともそのような状況にならない限り、今の円安ドル高の流れが変わることはないでしょう。

まとめ

今日は米国のGDPから為替の動きについてみてきました。米国経済は景気後退の雰囲気を徐々に見せ始めています。現状を考える限りこの流れは変わることはなく、今後も進んでいきそうです。注目ポイントとしては景気をあまり減速させることなくインフレを抑制できるのかというところですが、パウエル議長が公開の場で難しいという発言をしているところを見ると、かなり厳しいのではないかと思われます。また、為替市場についても米国側から何か現状を変えようという動きが出てくる状況ではありません。帰るなら日本が動く必要があると思いますが、なかなかそのようにはならないでしょう。そういうわけで為替は円安がさらに進んでいく可能性も十分にあるのではないかと思います。これらの点については常に頭に入れておく必要があるでしょう。