ESG投資はあまりうまくいかないのかもしれない

ESGという概念はずいぶんと一般的になったように思います。環境対策等をしっかりやっている企業に投資したいという投資家にとってはESG投資というのは非常に魅力的に見えているのでしょう。しかし、そのESG投資に変化の兆しが出ているようです。それは新しい商品にはつきものの変化のような気がしますが、興味を持っている人にとっては重要なことでしょう。そういうわけで今日は最近のESG投資についてみていきます。

ESG投資にパフォーマンスはあまりよくない

ESG投資というのはここ数年、非常に大きな規模に成長してきました。環境や人権、統治機構等の対策がしっかりしている企業に投資したいという投資家の思いをうけ、順調に成長してきました。しかし、ここ最近はあまりパフォーマンスがよくないようです。

ESG業界における亀裂はあちこちに広がっているようだ。これまで3年連続で膨大な資金を呼び込んできたが、ESGへの需要は足元で冷えつつある。モーニングスターのデータによると、グローバルで見たESGファンドへの資金フローは1-3月(第1四半期)に36%減少。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストらの報告によれば、これはパンデミック(世界的大流行)開始前以降で最悪で、4月も落ち込んだ。ブルームバーグ・インテリジェンスの推計では、米国のESG関連上場投資信託(ETF)からの資金流出が、5月には単月として過去最大を記録した。ESGのリターンもおぼつかない。6月の2週目までで見ると、欧州のESG株式ファンドのリターンが平均でマイナス14%となった一方、ストックス欧州600指数はマイナス11%だった。米国のESG関連ファンドはマイナス16%と、S&P500種をわずかにパフォーマンスが上回る程度だった。

引用:Bloombergより

理由としてはいろいろあるのかもしれませんが、一つにはESG投資というものが非常に不透明なものであるというところです。実態がよくわからず、何に投資をしているのかがわからないいい加減なものが多く出てきているようです。これは大きなブームを起こしているものにはよくあることです。安易にその流れに乗ろうとして粗悪な商品を市場に提供してしまい、顧客の不評を買ってしまうということは株式投資の世界でも起こりえるということでしょう。

ESG投資の中には粗悪なものも多くなっている

また、自分の投資したくない銘柄が多く取り入れられているということにも不満を持つ人もいるようです。今でいえば化石燃料銘柄や大手のテック企業など、あまり評判が良くない企業が取り入れられているために投資できないとなっていることもあるようです。

ニール・ベーカー氏(37)は2年近く前にESG投資について調べ始め、内情が分かるにつれて幻滅したという。「私はESGのより倫理的な側面に資金を投じていたつもりだった。そして実際に見てみて、なぜフェイスブックが組み入れられているんだろうと思った」。彼が絶対に持ちたくないと思っていた株式の一つが、フェイスブックを運営する米メタ・プラットフォームズだった。しかし、巨大テクノロジー企業が投資先に含まれていないESGファンドを見つけ出すのはほぼ不可能だったと、ベーカー氏は言う。

引用:Bloombergより

このように投資家が描くESG投資と運用会社がやろうとしていることには大きな乖離があるのかもしれません。理由はわかりませんが、いずれにせよそれでは投資家から資金を集めることはできないでしょう。このような状態が続くようではESG投資というのは今後はあまり広がらないのかもしれません。

利益が出ないのであれば話にならない

結局のところ、そのような理想的な投資商品というのは存在しないということなのかもしれません。それに何といっても投資家としては利益を出すことが最優先であるはずです。個人的にはそう思っていますし、多くの投資家はやはりそう思っているようです。

個人投資家のベーカー氏は結局、ESG関連の投資を一切やめ、より幅広い銘柄が含まれているインデックスファンドに投資することにした。英国の個人投資家の66%は、サステナブル投資かどうかを気にしているわけではなく、ただリターンの最大化を望んでいるという、チャールズ・シュワブの最近の調査結果もある。

引用:Bloombergより

結局のところ、あまり個別銘柄を選別するよりもインデックス二投資をしている方が確実であり、簡単であるということです。もちろんインデックスを宇和間あることは可能だとは思いますが、それは並大抵のことではありません。そして一個人がそれを成し遂げるということはまず不可能ではないかと思います。

まとめ

今日は最近のESG投資についてみてきました。その概念自体は素晴らしいものであり、何ら否定するつもりはありませんが、現状投資の世界におけるESGというのはまだまだ不完全なもので、投資には値しないのだろうと思います。これからもこの商品が存在できるようになるにはより投資家との対話を重視し、透明性の高い商品となっていく必要があるのでしょう。ただ、投資家にとっては利益を上げることが大事であり、その目的を達成するという意味ではあまり特定の銘柄に重心を置くようなことはせずに、幅広く投資していく方がいいのではないかと思います。