来年の円高予想に待ったをかける?

日米の金融政策の先行きから、来年は大きく円高ドル安へと為替市場は進んでいくことが予想されています。程度の差こそあれ度、概ねその傾向は変わらないのかなという印象です。しかし、中にはその姿勢に疑問を示す声もあるようです。

これまで円高予想は何度も打ち砕かれてきた

来年の為替市場では円がドルに対して強く推移するだろうという予想は多く聞かれますが、その予想に警告を発している人がいます。

円上昇に賭ける為替トレーダーに対し、そうした流れに心を奪われることがないよう、ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏(ニューヨーク在勤)は警告している。

  円は対ドルで11月の安値からは6%余り上昇している。だが、過去の事例を参考にすれば、円のポジショニングは上昇基調が終わりに近づいているとのシグナルを発していると、ベクテル氏は指摘する。過去1年間を振り返ると、機関投資家が円に強気になると、その後すぐに下落に転じているのが分かるためだという。

  ベクテル氏は調査リポートで、「これは信じ込もうとしているマーケットだ」とコメントした。これに先立ち発表された米商品先物取引委員会(CFTC)のリポートによれば、資産運用会社は19日までの1週間に円売り持ちから、5月以来初となる買い持ちに転じた。

  世界の他の主要国・地域の中央銀行が利下げに転じようとしている状況にあって、日本銀行はマイナス金利解除の方向にあり、強気派は円上昇に期待を寄せている。

  ベクテル氏はCFTCのリポート内容に関し、「どちらかといえば今年1月と3月に目にしたように、完了に近づきつつあることを示唆している可能性がある」との見解を示した。

  円が1月初めに上昇した後、資産運用会社は弱気から強気に転じた。しかし、その後の数週間に円は約8%下落し、3月にも同様のシフトが見られた。

  2023年に予想されていた円急伸は実現せず、むしろ下落に見舞われた。円は今年、対ドルで約8%下げ、G10通貨の中で最悪のパフォーマンスとなっている。

  ただ、過去3年の下落基調を経て、来年には円が上昇に向かうとの予想が再び浮上している。日銀はマイナス金利解除に近づいていることを示唆しているものの、早期の政策転換の期待を押し返すととともに、具体的な時期について何ら明確にしておらず、投資家は緊張状態に置かれている。

  ベクテル氏は、円に強気であるならば、スイス・フランを対円でショートにするよう勧めている。

引用:bloombergより

このようにベクテル氏は円の強気相場はそこまで継続しないだろうと予想しています。これは過去にも同様な動きが幾度となく起きていることであり、今回もそのようになるだろうというものです。確かにこれまでも何度も円の強気相場というのは予想されては裏切られるということが続いていました。そういう意味では今回もそうなるであろうという考えはわかる気はします。実際どうなるかはわかりませんが、ほとんどの参加者が円高ドル安を予想する中でこのような指摘が出てくるというのは貴重な意見といっていいでしょう。

今回はこれまでとは明らかに違っている

これまでの事実を見れば確かにこの警告というのは正しいといえるでしょう。実際、そのようになって来たことは事実であり、今回もそうなるのではないかと警戒するのは自然なことです。しかし、今回ばかりはそうならないのではないかと個人的には思っています。つまりは、来年についてはドル円はそれなりに円高ドル安に動くだろうということです。その幅についてはいろいろ言われてはいますが、多くの人がそのように予想しているので、そう思っている人も多いのではないでしょうか。これまでは確かに円高予想というのは裏切られ続けてきました。しかし、それは実体経済を無視したあまりに楽観的過ぎる予想に基づいたものだと思います。日銀はそろそろ金融緩和政策を変更するだろうとか、米国の経済はリセッションに陥るはずだとか、結局は起こらなかったことを必要以上に警戒したことによって予想が外れただけといっていいと思います。そういう意味では今回はさすがに違うような気がするのは私だけではないでしょう。日本はこれまでのようにデフレ真っただ中という状況ではありません。理由はどうあれ物価は上昇を確実に続けており、賃金も来年には上昇することがほぼ確実に見込まれています。そういう意味では明らかに経済状況に変化が起きているといっていいでしょう。対して米国もこれまで苦しめ続けてきたインフレが確実に鈍化の兆しを見せており、経済もこれまでのような力強さは大きく後退しています。その中で両国の中央銀行の政策も明らかに変化の可能性を示唆するようになってきています。そういう意味では現在は過去に起こってきた状況とは明らかに違うといっていいでしょう。そしてそれが実現すれば確実に円は強く、ドルは安くなります。その可能性はかなり高いのではないのかなと個人的には感じています。

まとめ

今日は来年の為替市場について考えてきました。円の上昇は続かないと予想する人もいるようですが、これまでの状況とは今回は明らかに違います。そういう意味では程度の差こそあれど、円高ドル安へと進むのはほぼ間違いないのかなという印象です。もちろんそうならない可能性もゼロではないでしょうけど、なかなか考えづらいのかなと思います。