利下げに対してやや慎重な姿勢に転ずるも、まだまだ想定の範囲内。

FRBは利下げのタイミングをかなり慎重に見極めるつもりです。最近の当局者の発言を見ると以前にもまして利下げに対して慎重な物言いが増えてきたように思います。それは確実にインフレを抑制したいという姿勢の表れでもあると思いますが、市場の期待とは裏腹に、その慎重姿勢は利下げのタイミングを想像以上に後退させるかもしれません。

やや慎重な物言いが増える

最近のFRB関係者の発言は非常に慎重な発言が増えてきたように思います。

一部の米金融当局者は、利下げに向けた新たな基準を設定しつつあるようだ。その基準とは、より広範な物価圧力の後退だ。

  リッチモンド連銀のバーキン総裁とボストン連銀のコリンズ総裁は先週、インフレ鈍化が継続するだけでなく、住宅や他のサービス分野にしっかりと広がることが望ましいとの考えを示唆した。これは、最近のインフレ鈍化が財の分野でより見られていることが背景にある。

  トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズの米経済責任者、マイケル・スコーデレス氏は「ゴールポストを変えて、新たな基準を作っているのだろうか。どうやらそのようだ」と分析。「辛抱強くあるために地面に杭を打つ十分な論拠を彼らは見つけた」と述べた。

  金融当局者らはインフレ率が目標の2%に向けて低下しているという確信を強めたいと考えており、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は既に、3月の利下げの可能性は低いとの見解を示している。ディスインフレが大きく広がるのを待つということであれば、利下げ開始の時期はさらに先延ばしされる可能性もある。

  消費者物価指数(CPI)を見ると、食品と燃料を除いた財の価格は2023年に前年比0.2%上昇にとどまった一方、エネルギーを除くサービスの価格は同5.3%上昇した。

  バーキン総裁は先週の講演で、「私は希望を抱いている。だがそれでも、インフレの鈍化が広がりを見せ、持続可能であるという確信を強めたいと考えている」と発言。またブルームバーグテレビジョンのインタビューでは、今後「さらに数カ月」のデータを入手していく中で、そうした傾向が「継続し、広がっている」ことを目にしたいと述べていた。

  13日には1月のCPIが発表される。市場では総合CPIについて、前年比での上昇率が約3年ぶりに3%を下回ると予想されている。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米経済担当責任者、マイケル・ゲーペン氏は「ディスインフレにおいて財価格下落の占める部分があまりに大きいことを彼らは懸念しているようだ。財価格の下落は持続しない可能性がある」と述べた。

引用:bloombergより

このようにバーキン総裁やコリンズ総裁のように利下げに対しては以前にもまして非常に慎重な発言をする人が増えてきたように思います。責任あるものの発言としては当然といえば当然ですが、かなり慎重なスタンスになってきたような気がしないでもないです。一時期はパウエル議長の緩和に対する想像以上に前向きな姿勢から、利下げ期待がかなり高まってきましたが、最近の底堅い経済指標やこれらの慎重な発言によってその期待もかなり後退したように思います。記事中にもある通り、以前は3月にも利下げという期待がありましたが、今では早くても5月だろうと修正をマーケットはしてきています。今回の慎重な発言を見る限り、その予想というのは間違ってはいないのでしょうし、さらなる修正というのも十分にあるのだろうと思います。

当初の予想通り

慎重な姿勢というのは以前からそうであったようにも思いますが、それでもやや最近はその傾向が強くなったように思います。そういう意味ではFRBはかなり緩和に対して慎重になっているのだろうという印象です。これまでのインフレを考えればここから再加速をさせてはならないというのは当然ですし、慎重になるのもわかりますが、やや行き過ぎているような気もしないでもありません。しかし、当初から早期の利下げはないだろうと予想していた一人としては、その変化は別にしても利下げ開始が5月以降になるだろうというのは全く持って予想の範囲内であり、さらなる後退であっても何も驚くようなことではありません。そういう意味ではいつものマーケットの楽観論の修正が起こっているだけであって、当初のまっとうな予測からは何も変わっていないのかなという感じです。

まとめ

今日は当局者の発言から今後の金融政策について来ました。発言がやや慎重になってきているなと感じますが、それでも利下げのタイミングがおかしくなったということはないように思います。そもそも早期の利下げ期待というのがやや無理筋であったというだけであり、常識的に考えれば利下げのタイミングはそんなものでしょうというだけの話です。そういう意味では起こっている事自体は何も変なことはないのだろうと思います。