日銀が金融政策を変更するのはいつか

日本でも久しくみられなかった継続的な物価上昇が起こってきており、長らく続いてきた金融緩和政策にも変化の可能性が出てきました。実際、どの段階になるかはわかりませんが、そう遠くない将来には日銀は大きく政策を転換することは間違いないのかなという感じがします。マーケットではその可能性についてやや早急に求めているような気がしますが、日銀は非常に慎重に事を進めています。しかし、日銀内では異なる意見が多く出てきているようで、今後の展開については非常に微妙な情勢といっていいのかもしれません。

日銀が早期に金融緩和を変更する可能性はあるのか

日銀は結局、今年中に金融政策を変更することはありませんでした。しかし、内部ではその可能性について多くの議論がなされているようです。

日本銀行が18、19日に開いた金融政策決定会合では、2%の物価安定目標の実現や金融政策の正常化のタイミングについて、政策委員の間で意見が分かれている状況が浮き彫りになった。「主な意見」を27日に公表した。

  ある委員は、賃金上昇が物価上昇に追いつかない日本の状況を踏まえれば、「来春の賃上げが予想よりかなり上振れたとしても、基調的な物価上昇率が2%を大きく上回ってしまうリスクは小さい」と主張。慌てて利上げしないと政策対応が遅れるビハインド・ザ・カーブになってしまう状況にはなく、「少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない」との考えを示した。

  一方、2%物価目標を持続的・安定的に実現する確度について「さらに高まってきており、金融正常化のタイミングは近づいている」との意見も出た。この委員は「巧遅は拙速に如(し)かず」とも指摘し、「物価高が消費の基調を壊し、物価安定目標の実現を損なうリスクを避けるためにも、タイミングを逃さず金融正常化を図るべきだ」と述べた。

  12月会合では、イールドカーブコントロール(YCC)を中心とした大規模な金融緩和政策の維持を決定。先行きの政策指針であるフォワードガイダンスにも変更はなかった。市場には早期の正常化観測も根強いが、植田和男総裁は会合後の会見でマイナス金利の解除などを急がない姿勢を示しており、政策委員間での議論の収れんにもう少し時間がかかる可能性がある。

  ある委員は、これまでのYCC柔軟化措置に伴うイールドカーブのゆがみ解消で、インフレ基調が過度に強まらない限り、「賃金と物価の好循環を通じた2%目標の実現の見極めは十分な余裕を持って行うことができる」と指摘。「千載一遇のチャンスを逃がさぬよう変革の後押しに集中し、当面は現状の金融緩和継続が適当である」とする意見も出た。

  正常化入り後を意識した発言も複数見られ、ある委員は「出口のタイミングやその後の適切な利上げのペース等について、引き続き議論を深めていくことが重要だ」と主張。出口における政策運営能力への信認を維持するため、中央銀行のバランスシートや収益変化のメカニズムについて情報発信する重要性を指摘する声もあった。

  主な意見で日銀が政策正常化を急がない姿勢が示されたとの見方から、27日の東京外国為替市場では円に売り圧力がかかり、一時1ドル=142円85銭と21日以来の安値を付けた。債券相場は上昇しており、新発10年債利回りは前日比2ベーシスポイント(bp)低い0.61%。

引用:bloombergより

このように日銀内部では早期に金利を引き上げ、金融正常化へと向かうチャンスを逃すべきではないという意見もあるようです。実際、今月の金融政策決定会合では金融緩和政策の維持を決めており、このような意見はほとんど反映されていないといっていいでしょう。しかし、このような意見が出てきているということは今後はその傾向がさらに強くなる可能性も十分にあるでしょう。特に今後も物価が継続的に上昇し、賃金上昇や経済成長がプラスを維持しているとなればその傾向も強くなってくるでしょう。市場でも日銀の金融政策の修正期待というのは次第に高まってきており、その色合いというのは時間がたつにつれて強くなるものと思われます。

来年の賃上げを状況次第

今のところ、金融政策の変更はまだないのかなという印象です。一部では年明けにも政策変更があるのではないかと期待している人もいるようですが、その可能性は低いのかなという印象です。内部ではこのような意見も出てきてはいるようですが、慎重論も多くいるようで、少なくとも来年春の賃上げの状況を見極めてからという可能性が一番高いのかなという感じがします。その段階で物価上昇も2%を超えて継続して続いており、賃金も発表されているように大幅な上昇がなされるのであれば、その時は金融政策の変更のタイミングなのかなという感じがします。さすがにそこまで行っても金融緩和を維持するというのはデメリットが多くなるような気がしますし、いいタイミングととらえる人も多いような気がします。そういう意味で、今のところ、政策変更の声も大きくはなってはいますが、それは来年の賃上げの状況をきちんと確認してからということになると個人的には思っています。

まとめ

今日は日銀の金融政策の今後について考えてきました。日銀内部でも金融政策の変更を主張する声が出てきているようで、市場が期待する緩和修正の日も近づいてきていることが感じられます。しかし、多くの意見を聞く限り、来年の賃上げを見極めてから決定されるのだろうというのが個人的な感想です。植田総裁の発言やそのほかの意見を聞く限りその可能性が一番高いのかなと思います。