日銀審議委員の交代によって金融政策が大きく変わることはないだろう

25日に新たに日銀審議委員に就任した高田創氏、田村直樹氏の記者会見が行われました。日銀審議委員というのは日銀の金融政策を決定する非常に重要な機関です。そういう意味では非常に重要な役職であり、株式市場でも注目されていました。退任される片岡氏と比べると高田氏は金融緩和には積極的ではないため、日銀の金融政策に変化が出るのではないかという懸念もありますが果たしてそうなのでしょうか。というわけで今日は先日行われた日銀審議委員の記者会見についてみていきたいと思います。

新たに日銀審議委員に就任した高田氏、田村氏の会見が行われる

先日、25日に新たに日銀審議委員に就任した高田創氏、田村直樹氏の記者会見が行われました。前任の片岡氏、鈴木氏の後任としてどのような提言をされるのか非常に注目されるところです。田村氏についてはいわゆる大手銀行から出される枠として固定されているため、あまり注目はされていません。問題は片岡氏の後任が誰になるのかというところでした。その後任に選ばれた高田氏ですが、片岡氏のような金融緩和派の論者ではなく、財政健全化論者ということでいわゆるリフレ派からは懸念されていました。その高田氏ですが、会見では以下のような発言をしています。

日本銀行の審議委員に就任した高田創氏(元岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長)は25日の記者会見で、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策に関連し、上下0.25%の長期金利の許容変動幅はある程度の市場機能を維持しながら従来の政策も継続でき「持続性のある状況」だとの認識を示した。現行の緩和策に一定の評価を与えた格好だ。高田氏は、2%の物価目標を「気長に、丹念に、持続性を持った対応をしながら何とか実現していく」と強調。「経済物価へのプラス効果と金融市場への影響の両面を議論しながら、適切なイールドカーブを考えていく」と表明した。マイナス金利も含めた現行の緩和策については、貸し出し金利や市場での調達コストの低下を通じ、物価や経済環境の改善を促したと評価。一方、低金利環境の長期化に伴う金融機関の利ざや低下や国債市場の機能度低下といった課題も挙げ、今後も「タカかハトかを決めつけずに、局面によって考えていくのが私自身のスタンス」だと話した。金融緩和からの出口政策に関しては「今の時点でそういう状況ではない」としながらも、「常に考えておくべき論点」だと話した。為替については「政府が対応すること」としつつ「安定させていくことが必要」と述べるにとどめた。

引用:Bloombergより

会見を見る限り、少なくとも今の金乳緩和政策を批判しているということはなさそうです。ただ、金融緩和の問題点も指摘しており、現在の政策について懸念しているようにも見えます。物価安定のための金融緩和を支持しながらも、それを続けていくことによる副作用もきちんと考えなければならないということでしょう。確かに言っていることはその通りです。いわゆるリフレ派という人たちの中でも一部の極端な人たちを除けば現在の緩和政策を永遠に続ける手も大丈夫と思っている人はいないでしょう。いつかは政策転換をしなければならないと思っているはずです。要はそれがいつなのかというのが違うというのです。退任された片岡氏はその出口戦略を考えるのはまだ先だとして、とにかく今打てる手は出し惜しみをせずにやっていこうという人だったのだと思います。対して高田氏は、金融緩和の必要性は認識しつつも出口戦略もきちんと考えなければならないといった意見なのかなと感じました。よく言えばバランスを考えて大局的な考え方を持っているといえるのかもしれませんし、悪く言えばどっちつかずの風見鶏というのかもしれません。

注目は来年の総裁人事

いずれにせよ日銀の審議委員が変更したことにより、今後の金融政策がどのようになるのかが注目されますが、個人的にはあまり変わらないのだろうと思います。当然ですが、日銀の政策は一人の人間によって決定されるものではありません。なので今回の二人の審議委員の変更をもっていきなり今の政策が変わるということはないでしょう。ただ、今後についてはどうなるかはわかりません。特に来年には日銀総裁人事が控えています。ここがどうなるかというのが非常に重要であり、それに向けた人事が今回行われたのではないかと思います。そういう意味では来年の日銀総裁人事によって、それ以降の金融政策は大きく変わる可能性が出てきたのだろうと思います。高田氏は先ほども言ったように強硬に自分の意見を主張するような人ではないように思います。周りに合わせて意見がうまくまとまるような行動をするのでしょう。だとすれば今は金融緩和にそれほど抵抗しないかもしれませんが、他の委員からそこまで緩和に積極的な意見が出てこなければそちらに合わせていくということも十分に考えられます。そうなれば来年の今頃は日銀の金融政策が大きく変わっているということも十分にあり得るのではないかと感じています。

まとめ

今日は先日行われた日銀審議委員の会見についてみてきました。とりあえずは大きな政策変更はないのだろうと思いますが、長期的にはやはりその可能性はあるのだろうと思います。特に来年の総裁人事以降は大きく金融政策が変わる可能性もあり、注意した方がいいでしょう。そういう意味では今回の審議委員の交代というのは始まりに過ぎないのかもしれません。