米国の個人消費は力強さを残したものの、その勢いは確実に鈍化しているようです。8月の小売売上高は市場予想は上回ったものの、やや衰えを見せるものでした。前回、前々回のデータも下方修正されており、米国の個人消費の力は若干衰えてきているようです。
8月の小売売上高は力を見せるも陰りも見える結果
8月の米小売売上高は市場予想を上回りましたが、その勢いは陰りを見せ始めています。
8月の米小売売上高は市場予想を上回ったものの、減速の兆しも示した。ガソリン価格上昇を背景に、裁量支出が抑制された。
データは7月分に加え、6月分も下方修正された。ガソリンを除いたベースの小売売上高は0.2%増。
8月は13カテゴリーのうち、衣料品店や家電販売店など半数余りが増加した。とはいえ、食料品店や百貨店など大半で前月から幾分の鈍化が示された。
今回の統計は個人消費の底堅さをなお示唆しつつも、特にガソリンスタンドなどでの価格上昇が痛手となりつつあることを示した。一部の消費者はクレジットカードや貯蓄に依存しており、緩やかに軟化しつつある雇用市場や学生ローンの返済再開はこの先、支出を抑制する見通しだ。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「実質賃金の増加や資産価値の持ち直しにもかかわらず、8月は強靱(きょうじん)な個人消費が後退したようだ。金利高や燃料価格上昇、余剰貯蓄の減少、雇用の伸び減速が要因だ」とリポートで指摘した。
消費者は借り入れコストの上昇にも見舞われている。前日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)統計では、食品とエネルギーを除くコア指数が前月比で予想を上回る伸びとなり、米金融当局による追加利上げに余地を残す格好となった。
ガソリンスタンドの売上高は5.2%増と、過去1年余りで最大の伸びとなった。
小売売上高で唯一のサービス分野である飲食店は0.3%増で、5カ月ぶりの小幅な伸び。食料品店は2カ月連続で増加した。
国内総生産(GDP)の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高は、前月比0.1%増加にとどまった。
引用:bloombergより
このように米国の個人消費は強さを見せつつも、その勢いは以前ほどではありません。実質賃金は上昇しており、購買力が減少しているということはありませんが、価格高騰などの影響により、消費者はあまり積極的には行動していないようです。そういう意味では力を失っているというわけではなく、タイミングが来ればその力は発揮されるのではないかという感じもします。しかし、信用余力も低下していることや、不動産市場も悪化していることを考えるとそこまで素直に大丈夫とは言えないのかもしれません。
ソフトランディングへの道のりは正しく進んでいるのか
市場はこの結果については楽観的に見ているようです。この日の株式市場は上昇しており、今回の結果を持ってソフトランディングの可能性が高まったと見ているのでしょう。インフレと引き締めの影響により、景気後退の懸念もありましたが、力強さを残した個人消費を見てその可能性を見出したと言ったところです。相変わらずの楽観的なマーケットですが、個人的にはそこまでまだ楽観的に離れないかなという感じがします。おそらく今後も引き締めは継続されるのは間違いありませんし、本当に僅かな力加減を間違えれば景気の急減速というのも十分に起こりえます。そういう意味ではまだまだ油断はできないと見ておいたほうがいいでしょう。
まとめ
今日は8月の小売売上高について見てきました。個人消費は力強さを維持しつつもその勢いは確実に落ちてきています。それがソフトランディングへの良い道のりであればいいのですが、そうならない可能性もあり、なんとも言えないというのが正直なところです。今回の事態が正解なのかどうかは歴史が証明するでしょう。投資家としてはとにかく無難にことがすぎることを祈るばかりです。