パウエル議長の発言を聞く限り、現状そこまでタカ派ではない印象

今後の金融政策を占う上で市場が注目していたパウエル議長の講演が行われました。結果としてはそれほど厳しい発言はなく、よりタカ派にシフトしていることは現段階ではないのかなという印象です。しかし、追加利上げの可能性についてもしっかりと言及し、安易な楽観論に市場が走ることのないよう釘を指すことも忘れていませんでした。

パウエル議長の発言

昨日は市場が注目していたパウエル議長の講演が行われました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は19日、連邦公開市場委員会(FOMC)は政策の道筋を検討する上で慎重に進んでいると指摘。その上で、強靱(きょうじん)な経済成長の兆候がさらに見られた場合には追加利上げに動く用意があると説明した。

  パウエル議長はニューヨーク・エコノミック・クラブで講演。事前に配布された原稿によれば、「不確実性とリスク、そしてこれまで実施してきた措置を踏まえ、委員会は慎重に進んでいる」とし、「追加の政策引き締めの度合い、そして景気抑制的な政策を維持する期間については、入手するデータと変化する見通し、リスクバランスの全体像に基づいて判断する」と述べた。

  議長はまた、長期債利回りの上昇がもたらしている金融環境の引き締まりにも言及。「金融環境の変化が根強く続けば、金融政策の道筋に影響を与え得る」と説明した。

  FOMCが10月31-11月1日の会合で前会合に続いて政策金利を据え置くと、市場は予想している。今回のパウエル議長の発言を受けてそうした見方が強まりそうだ。実際に据え置きとなった場合、1年7カ月前に始まったインフレ抑制を目指した利上げキャンペーンにおいて、初めて2会合連続での利上げ見送りとなる。

  パウエル議長が話し始める前、会場に抗議活動を行う人が複数侵入し、イベントを妨害。議長が関係者に付き添われて一時退場する一幕があった。抗議者らは互いに腕を組み、「化石燃料ファイナンスを終わらせよ」と声を上げていたが、強制的に退出させられた。

  講演でパウエル議長は、追加引き締めの可能性を排除しないよう慎重に言葉を選んだ。

  「経済成長の強靱さと労働需要の底堅さを示している最近のデータに、われわれは留意している」と議長は指摘。「経済成長が継続的に潜在成長率を上回っている兆候、ないし労働市場の引き締まりがもはや緩和していない兆候が新たに見られた場合、インフレに関する一層の進展にリスクが生じる可能性があり、金融政策の追加引き締めが正当化され得る」と語った。

  講演後に行われた司会者との質疑応答では「政策が現在引き締め過ぎである兆候はないと考えている」と述べた。

  FOMCについては、インフレ率を時間とともに2%へと持続的に押し下げる上で十分に景気抑制的な政策スタンスを達成し、インフレがその軌道に乗るまで、政策をその水準で維持することにコミットしていると説明した。

  その上で、「インフレはなお高過ぎる。インフレがわれわれの目標に向けて持続的に低下しているという確信を得るには時間が必要で、数カ月の良好なデータはその始まりに過ぎない」と述べた。

  同時に、利上げが経済に下向きの圧力をかけている兆候が出ており、「有意な引き締めがなお控えている可能性はある」と述べた。

  このほか、地政学的な緊張は「極めて高い状態にある」としてその重要なリスクに言及。イスラエルへの攻撃を「凄惨(せいさん)」と表現し、さらに多くの人命が失われる見通しも恐ろしいことだと話した。

引用:bloombergより

このようにパウエル議長は述べ、今後の金融政策についてやや落ち着いたトーンで発言しました。最近の経済の強さを示す指標を考えると、ややタカ派的な発言も出てくるのかと思いましたが、そこまで厳しい発言はなかったように思います。しかし、今後の利上げについてもしっかりと言及しており、状況によっては躊躇なく利上げを行うことは十分にありえるだろうという感じです。全てはデータ次第ということであり、このスタンスはこれまで通り変わることはないようです。そういう意味ではFRBの姿勢というのは何も変わらず、一貫していると言っていいのかなと感じます。

そこまでタカ派ではないのかなという印象

とりあえず今のところは次回のFOMCにて利上げが行われる可能性というのは思っているほど高くはないのかなという感じがします。現状でこのような発言をするということはそこまで厳しく現状を判断しているわけではないのでしょう。あと10日ほどでFOMCになりますが、その間によほどの強い経済指標が発表されない限り、FRBが利上げを決定することはないのかもしれません。しかし、何度も言うように全てはデータ次第です。確定したことは何もありません。そのことは肝に銘じておくべきでしょう。

まとめ

今日は現在の金融政策についてのパウエル議長の発言について見てきました。個人的には思ったほどタカ派ではなかったなという印象です。そういう意味では次回FOMCでのりあげの可能性というのはやや下がったのかなという印象です。それでもデータ次第でなんとでも変化しますし、12月にもう一回FOMCは開催されます。そういう意味では年内の利上げの可能性はまだまだあると思っておいたほうがいいでしょう。