サマーズ元財務長官はインフレ鈍化は一時的と警告

インフレの鈍化を市場は確信しているような雰囲気になってきていますが、まだまだそのことに疑問を持つ声は多くあります。実際、FRB関係者からも慎重な発言が多く聞かれており、まだまだ楽観はできないというところでしょう。

インフレ鈍化は一時的

先日、サマーズ元財務長官はインタビューにて以下のような発言をしています。

サマーズ元米財務長官は15日、米国のインフレが自身の予想以上に鈍化している一因として「一過性の要因」を挙げた。

  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で「経済がいかに力強く推移してきたかを踏まえると、インフレに起きていることには依然として驚きがある」と語った。

  こうした状況には「ボトルネックによってインフレを押し上げていた一過性の要因が、今では平均回帰してインフレを押し下げている」ことに一因があるという。

  この発言の前日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)では、食品とエネルギーを除くコア指数の上昇率が予想を下回った。コアCPIは前年同月比4%上昇と、昨年9月のピーク(6.6%上昇)から伸びが鈍化した。

  ハーバード大学教授のサマーズ氏は、インフレ加速を予測して、「一過性チーム」の主張を批判することで知られていた。

  サマーズ氏はここ1年のインフレ鈍化について「いろいろ考えた」と説明。同氏が最初に挙げた主因は、米金融当局が予想以上に政策を引き締めたことだ。「これはインフレ懸念に根拠がなかったわけではなく、人々がその懸念を真剣に受け止めたことを意味する」と述べた。

  インフレ率を連邦準備制度の目標である2%に戻す道のりは、投資家の想定以上に困難となる可能性があると同氏は警告。そして、大幅な景気低迷なしに物価上昇率が2%に戻るような経済の「ソフトランディング(軟着陸)」はなお見込めないとあらためて指摘した。

  インフレ調整後の所得が最近好調であることなどの要因を考慮すると、2024年1-6月(上期)にリセッション(景気後退)入りする確率は20-25%にとどまるという。ただ、「一部の勝利宣言は若干時期尚早のように思われる」と述べた。

  リセッションが懸念材料から外れたとの期待から今週に入り小売株が上昇したことは、市場の反応としては賢明とは思えないとし、「一部の人々は『マザー・フェド(母なる連邦準備制度)』を過信しているのかもしれない」と語った。

  「特に原油や他の幾つかの商品を巡る地政学リスクを踏まえると、今後2年間のインフレ率が市場の期待ほど良好な数字になるとは確信できない」というのが同氏の見立てだ。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は現在のインフレ鈍化は一時的なものであり、まだまだ油断はできないとしています。実際、FRB内部からも慎重な声は多く上がってきており、市場が期待するような楽観的な空気はまったくないと言っていいような気がします。もちろん利上げの可能性が低下したことは事実だとは思いますが、このまますんなりとインフレが目標の2目標の2%へと収束するとは限らないことは覚えておいたほうがいいでしょう。

なぜ市場はいつも楽観的なのか

相変わらず市場は楽観的な考えを持っていますが、サマーズ氏のような考えは悲観的な論者はもちろん、金融当局の中からも多く聞こえてきています。そういう意味では利上げが終了したと断言するのはかなり時期尚早だと言えるでしょう。ウクライナ情勢も全くどうなるかわかりません。中東問題もまだまだ収束が見通せる状態ではないということを考えると、特に食料やエネルギーなどは急激に上昇するリスクは非常に高いと言わざるを得ません。そして欧米はまだまだインフレに苦しんでおり、しばらくは成長の力はかなり落ちるものと見られます。また、中国も最近は以前のような姿は見えず、非常に厳しい状況に陥っています。そういう意味では世界的な成長の鈍化の可能性も大いにありえるでしょう。そういう意味ではやはり楽観的なシナリオというのは改めたほうがいいのでしょう。

まとめ

今日はサマーズ元財務長官の発言について見てきました。サマーズ氏は以前よりFRBに対して厳しい見方をしていましたが、その姿勢というのは変わっていません。そしてその厳しさはFRBだけではなく、市場に対しても現れており、過度な楽観論に対して牽制をしているというところです。その考えについては全くの同意であり、今の市場の楽観論はやはり行き過ぎていると言わざるを得ないと言っていいのかなと感じます。