来年度も予想よりも金融政策は厳し目になる可能性

FRBは金融政策の変更に関しては一貫して慎重な姿勢を示していますが、マーケットではすでに利下げ観測が大きくなってきています。市場の楽観論はいつものこととはいえ、ここまで乖離してくると今後の株式市場の展開が非常に心配になるところです。そしてそのような懸念をエコノミストの中でも持つ人が多くなってきています。

来年度も金融政策は厳し目を維持

先日発表された調査によると、エコノミストの間では今後のインフレは想定よりも緩慢な下落となり、予想よりも金融政策が高く維持されるリスクについて想定されるようになってきているようです。

米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数のうち、変動の大きいエネルギーと食料品を除くコア指数は鈍化のペースが緩慢と見込まれ、当局は金利をより高くより長く据え置くことになりそうだ。

  ブルームバーグがエコノミスト73人を対象に今月17-22日に実施した最新調査でこのような見通しが示された。それによれば、2024年末時点のPCEコア指数上昇率予想は前年比2.5%と、前月調査の2.4%から上方修正された。

  一方、PCE総合価格指数と消費者物価指数(CPI)は24年半ばまでに前回見通しよりも速いペースで鈍化するとの予想が明らかになった。両指標ともエネルギー価格の低下を主因に過去数カ月はディスインフレ傾向が強まっている。

  最近発表のインフレ統計では、物価上昇圧力が緩和しつつあるとの心強い兆候が見られるものの、金融当局者はインフレ退治で勝利宣言する前に持続的な緩和のサインを目にする必要があると繰り返し示唆している。

  エコノミストはパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局が来年4-6月(第2四半期)に金融緩和に着手すると引き続き予想する一方で、当局が25年末まで金利を高めに維持するとみている。

  ネーションワイド・ライフ・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は「このところのインフレ率や雇用の伸び、個人消費支出の鈍化は現行サイクルにおける米利上げが完了したとの当社の判断を支えるものだ」と指摘した。

  「ただ、インフレ率が高止まりし、鈍化ペースも緩慢と見込まれるため、米金融当局は24年半ばまで利下げを待ち、緩和も徐々に進められるだろう」との見方を示した。

  エコノミストは今年10-12月(第4四半期)の実質GDP(国内総生産)を年率1.2%増と予想し、前回見通しの0.7%増から上方修正した。力強い個人消費と政府支出が短期的に景気を支えると見込まれる一方、民間投資の大幅鈍化が25年初めまで成長を抑制するとエコノミストは予測している。

  労働市場が広範な力強さを維持し、個人消費は総じて底堅く推移しているものの、労働力需要はゆっくりと軟化し始めている。エコノミストは失業率が4.4%でピークに達し、その後の改善には一段と時間がかかるとみる。さらに、25年末まで就業者数の増加幅も平均で少なめになると予想している。

  INGフィナンシャル・マーケッツのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は、家計の実質可処分所得がマイナスに転じ、低所得層の間で新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期の貯蓄が使い果たされた兆しもあるなどとして、金融当局が来年4-6月期から利下げで対応すると見込まれると話した。

引用:bloombergより

このように多くのエコノミストは現在のインフレについて鈍化傾向にあることは確かだが、その勢いというのは思っているほどではなく、非常に緩やかに鈍化していくと見ています。そのため金融政策も思っているほど緩和されることなく、長期間に渡り金利は高く維持されるだろうとのことです。この予想については個人的には非常に同意するところであり、これまでの経緯を考えればインフレがそんなにかんたんに鈍化するということは中ななないのかなという感じです。そうであれば当然ながら金融政策も緩和されることなく、厳しいままで維持される可能性が高くなることでしょう。そういう意味では非常にまっとうな予想のような気がします。

マーケットはいつも楽観的

以前よりマーケットは楽観的すぎると言ってきましたが、今回のものはそれを裏付けるようなものという気がします。FRBはパウエル議長を始め、多くの関係者はインフレ抑制に全力を注ぐことを明言し、そのためのあらゆる選択肢を排除しないという姿勢を見せています。それはタカ派もハト派も同様です。そういう意味では今後の金融政策が緩和へ向かうという期待はやや行き過ぎているという感じがしていました。そういう意味で今回の発表というのはエコノミストも同じように感じているようで、市場の楽観論に警鐘を鳴らしているような気がします。今回のインフレは当初から言われていましたが、非常に粘着性が高く、なかなか落ち着くまでには時間がかかるものと見られています。非常に厳しい引き締めにも関わらず、消費も労働市場もなかなか鈍化しませんでした。それだけ今回のインフレはしつこいということです。それがようやく落ち着きを見せたからと言って急激に鈍化していくということはなかなか考えられないのかなという感じがします。そういう意味ではこの記事にもあるように、来年も厳しい金融政策は維持されるのだろうと思います。

まとめ

今日は今後の金融政策に関するエコノミストの意見について見てきました。多くのエコノミストも今後のインフレについては厳しい見方をしています。そういう意味ではマーケットだけがやや楽観的に動いているような気がします。そういう意味では今後はやや厳しい展開になる可能性もあるような気はします。過度な楽観論には気をつけたいところです。