11月の民間雇用者数も悪化。労働市場の鈍化は確実なものに

労働市場の鈍化がより確実なものとなってきました。昨日発表されたADPによる民間雇用者数は大幅に落ち込み、労働市場の下落がほぼ確実なものとなったと言っていいでしょう。連日、労働市場の鈍化を匂わせる経済指標の発表が相次いでいますが、今回もその流れに沿った形となっています。今週末には雇用統計の発表も控えており、おそらくはそれも同様の流れになるのかなと思われます。

ADPリサーチでも労働市場の悪化が示される

昨日発表されたADPによる民間雇用者数は11月も大きく落ち込みを見せました。

ADPリサーチ・インスティテュートによると、米民間企業の雇用は11月に増加ペースが鈍った。製造業の雇用者数は2022年初め以来の低水準に減少。労働市場の熱が下がってきている新たな証拠となった。データはADPとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同で算出した。

  教育や医療サービス、貿易、輸送といったサービスセクターの伸びが全体を押し上げた。雇用の伸びは製造業や建設業、娯楽・ホスピタリティーでの削減に抑えられた。新型コロナウイルス禍後の雇用回復を率いてきた娯楽・ホスピタリティーでは、2021年2月後で初めて雇用者数が減少した。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「そうした押し上げ効果は終わった。娯楽・ホスピタリティーが過去のトレンドに戻ったことは、経済全体での雇用と賃金の伸びが来年に鈍化することを示唆する」と述べた。

  この日の統計は、労働者の需要が徐々に後退していることをあらためて示した。雇用の創出は依然健全で、賃金の伸びも再びインフレ率を上回ったものの、借り入れコストの上昇と長引く物価圧力を受け、雇用主は採用ペースをますます落としている。

  データは賃金の増加ペース減速をあらためて浮き彫りにした。同じ職にとどまった人の賃金は中央値で前年同月比5.6%、転職した人の賃金は8.3%それぞれ上昇。いずれも2021年以来の低い伸びだった。

  地域別では北東部と南部に雇用増加が集中した一方、西部では減少した。

  8日に発表される11月の雇用統計では、民間雇用者数の16万人増加が予想されている。5日に発表された10月の米求人件数は21年3月以来の低水準となり、労働市場の冷え込みが広がっていることを示唆した。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場の軟化はほぼ確定的と言っていいでしょう。これまで厳しいインフレや引き締めにおいても米国の力強さを支えてきた労働市場がようやくここへ来て力を失い始めたというところです。労働市場の軟化は米国経済に大きな影響を与えることになるでしょう。雇用が不安定になれば消費者の財布の紐は当然ながらきつくなります。よって消費の減退も避けられないものと思われます。米国GDPの大部分を占める個人消費が大きく落ち込む可能性が出てきたとなれば経済にとっては大きなマイナスとなるのは確実です。そういう意味では企業業績のさらなる悪化や株価の低迷という事態も来年は起こりうるかもしれません。

ソフトランディングが可能かどうかはわからない

労働市場の鈍化はほぼ確定的であると言っていいでしょう。金曜日には雇用統計の発表があるのでその結果を待ちたいところですが、ここまで連日のように労働市場の悪いニュースが続いていれば、雇用統計だけが異常に強い数値を出すというのはなかなか考えられません。そういう意味ではこの流れはほぼ間違いないものであり、雇用統計でそれをさらに強固なものにするという流れになりそうです。何れにせよ米国の経済はかなり厳しい状況になってきたと言っていいでしょう。労働市場の悪化は確実に消費に影響を与え、それは企業業績へと波及し、株価を押し下げることになると思われます。そういう意味では今後株式市場は厳しい時間が長く続きそうな感じです。そこで金融政策による景気刺激策を期待したいところですが、今はインフレ抑制を最優先としているFRBがどの程度後押しをしてくれるかは疑問が残るところです。市場では早期の緩和期待というのが大きくなっていますが、正直そこまで期待したほど金融政策は緩まないのかなというのが個人的な感想です。もちろん今後のことはどうなるかわかりませんが、楽観的にも悲観的にもなりすぎないことが重要でしょう。

まとめ

今日はADPによる民間雇用者数について見てきました。労働市場の鈍化はほぼ確実という状況になりました。今後は景気がどの程度悪化していくのか、そしてそれがリセッションまでいってしまうのかというのが気になるところです。うまく行けばソフトランディングも可能だとは思いますが、そんなにかんたんなことではないでしょう。そのあたりはFRBに懸命な仕事を期待したいところです。