2024年の米国株式市場にはまだリセッションの可能性があるのか

株式市場では今後の金融緩和期待やソフトランディング期待などによりやや期待に満ちた展開になってきているように思います。実際、インフレは落ち着きを見せ始め、経済も想定よりは悪くなってはいないということで、当初予想されていたような大幅なリセッションの懸念は大きく後退しているように思います。しかしながら、依然としてそのリスクは存在しているとして警告を発する人もいます。

リセッションの可能性

ヘッジファンド、ブレバン・ハワードのチーフエコノミスト兼調査責任者であるジェーソン・カミンズ氏は今後のリセッションの可能性について市場で考えられているほど低くはなく、警戒が必要だということを述べています。

2023年は金利の大幅引き上げが成長を圧迫するだろうという予想を裏切り、米経済はリセッション(景気後退)を免れた。

  24年初頭の現状は、米国の株価は史上最高値の付近で取引され、失業保険申請件数は1年余りで最低の水準に低下し、小売売上高は依然として好調で、インフレ率は連邦準備制度が目標とする2%に近づく傾向にある。このため、米経済は失業率が上昇することなくインフレ率が低下するソフトランディングを実現できるだろうという新しいコンセンサスが生まれている。

  しかし、ヘッジファンド、ブレバン・ハワードのチーフエコノミスト兼調査責任者であるジェーソン・カミンズ氏によれば、24年においても23年と同様に、世間一般の見方は間違っている。

  カミンズ氏はブルームバーグのポッドキャスト「オッド・ロッツ」とのインタビューで、米労働市場は既に急激に減速しており、金融政策は極めて景気抑制的な状態にあると主張。この組み合わせでは、次のリセッションが避けられないとの見方を示した。

  米連邦準備制度は健全な労働市場と安定したインフレを維持するという二つの使命のうち、雇用面に関しては既に「火遊び」をしているという。

  「今の労働市場を注意深く見れば、雇用が止まったことが分かる」とカミンズ氏。「もし労働参加率が前回の報告で0.3ポイントという大幅な低下をしていなければ、失業率は0.3ポイント上昇して4%になっていただろう」と同氏は説明した。

  一方、フローに関する家計調査のデータによれば、労働力人口外から雇用に移る人の数は大きく減少しているとカミンズ氏は指摘する。

  もう一つの使命であるインフレについてカミンズ氏は、金融当局がその持続性を大幅に過大評価し、政策が危険なほど引き締まる原因になっているとみている。昨年6月に発表された米連邦準備制度理事会(FRB)の経済予測サマリーが、インフレ率見通しを見誤る重要な出発点だったと言う。

  「19人のメンバーから成る委員会の予想中央値は、個人消費支出(PCE)価格指数のコアインフレ率が3.9%だった」とカミンズ氏は指摘。その後のデータはこれとかなり隔たっており、ブレバン・ハワードは26日発表されるデータで同指数のコアインフレ率は3%に近づくと予想している。わずか6カ月の期間にしては大きなずれだ。

  カミンズ氏は、インフレ率の水準と当局が金利を維持している状況を踏まえると、金融政策は歴史的に見てタイトであり、通常なら景気後退につながるレベルにあると論じた。

  「この先どうなるかを考えるに当たって、今の金融政策はリセッションの瀬戸際にあった過去のどの時期よりもタイトだ。当局の言うことを真に受ければ、長期中立金利は2.5%だ。つまり、今の金利は中立金利を300ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)も上回っている。そのような場合、1984年のわずかな例外を除けば、常に景気後退が起きている」とカミンズ氏は解説した。

  金利が過去数十年で最も高い水準にあるにもかかわらず、米国の金融環境は比較的緩やかだ。

  だが、カミンズ氏によれば、一見した金融環境は当てにならず、急激に変化しやすい。

  「ブレバン・ハワードの歴史の中で、私が最も弱気だった時期の一つは、2008年の金融危機の前夜、ベアー・スターンズが買収された直後だった。経済は絶対に崩壊すると思っていた」と同氏は振り返る。

  当時は市場が実体経済と同調するまで、しばらく時間がかかった。

  「ベアー・スターンズが破綻した後、4月と5月には毎月25万人の民間雇用が失われていた」が、それでも「株価は上がり、クレジット市場も順調だった。金融商品も金融市場も、悪くなるまではうまく行くことが多い」とカミンズ氏は話した。

引用:bloombergより

このようにカミンズ氏は述べ、今後も依然としてリセッションリスクが存在していることを警告しています。今の所、インフレの落ち着きや労働市場などを見る限り、そこまでリセッションの可能性は低いような感じがしますが、詳細を分析すればそこまで楽観的に離れないということだと思います。実際、どのようになるのかはわかりませんが、その可能性についてもしっかりと認識しておく必要はあるのでしょう。

そういう意識を持つことはとても大事

このような忠告というのは今は非常に貴重なように思います。現状では将来の利下げ期待によりかなり市場は期待が満ちているように思います。株価は非常に強気であり、投資家の心理もかなり改善が見られるのかなと思います。しかし、過去を振り返ってみれば誰しもが期待に満ち溢れ、株価上昇期待がこれ以上ないと高まっているときこそ株価のピークだったということは非常によくあることでした。そういう意味では今のような期待が非常に高まっているときというのは危険があると認識しておくことは重要でしょう。個人的には流石に今年はそこまで悪くはならないのかなとは思いますが、その可能性もないわけではないだろうと思います。去年だって、年初ではとても暗い一年になりそうな感じでしたが、実際には大幅な株価上昇が起こり、良い意味で期待が裏切られる一年だったことは、まだ覚えている人も多いでしょう。その逆のことが今年は起こったとしてもおかしくはありません。そういう意味ではこのような警戒感もしっかり持っておくことが必要です。安易な楽観論には飛びつかないことが重要です。

まとめ

今日は今年のリセッションの可能性について考えてきました。個人的にはその可能性は低いとは思いますが、その可能性はゼロではないと思います。特に現在のように誰もが株価が上昇することを信じて疑わず、熱を帯びているときこそ注意が必要だと思います。そういう意味では非常に重要な視点かなと思います。