2月の消費者物価指数は市場予想に反して大きく上昇

インフレの抑制と利下げの開始までの道のりはまだまだ険しそうです。昨日発表された2月の消費者物価指数は市場予想を大きく上回る結果となりました。そのため、今後の金融政策に対する期待もやや後退する形となっています。これまで慎重姿勢を貫いてきたFRBですがその行動を正当化するような結果ということで、慎重姿勢を崩すことは当分ないだろうという感じです。

2月の消費者物価指数は市場予想を上回る

昨日発表された2月の消費者物価指数は市場予想を上回る結果となりました。

2月の米消費者物価指数(CPI)統計では、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前月に続き、市場予想を上回る伸びを示した。利下げに対する米金融当局の慎重姿勢を補強する内容となった。

  エコノミストは、基調的なインフレの指標として、総合CPIよりコア指数を重視している。2月の総合指数はガソリン価格によって押し上げられた面がある。

  CPI統計は1月も強めの数字となっており、今回2月のデータによってインフレが根強く続いている兆候が新たに示された。米金融当局は時期尚早な利下げを警戒している。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げを始めるのに必要な確信に近づいているとの見方を示唆。ただ一部の当局者は、より広範な物価上昇圧力の後退を目にしたいとの認識を示している。

  過去3カ月のコアCPIは年率4.2%上昇と、昨年6月以来の大幅な伸び率。

  チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「今回のCPIは恐らく、政策をもうしばらく据え置く根拠と見なされるだろう」と指摘。「インフレの鈍化トレンドは、変動を経ながら横ばいになりつつあるようだ。FOMCとしては、利下げする前にインフレの鈍化継続を目にしたいと考えている」と述べた。

  市場では利下げ開始は6月の可能性が高いとなおみているが、その織り込み具合はやや後退した。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏は「コアCPIは2月も強かったが、1月の帰属家賃(OER)の大幅な伸びが一時的な逸脱だったことが分かり、それはやや安心材料だ。住居費はディスインフレの傾向が続いている。厄介なのは、財のコア価格でのディスインフレが停滞しているように見受けられることだ」と指摘した。

  発表元の労働統計局によれば、総合CPIでは前月比での上昇のうち60%余りを住居費とガソリンが占めた。このほか中古車や衣料品、自動車保険、航空運賃も上昇。航空運賃の前月比での伸びは2022年5月以来最大だった。

  サービス分野で最大の項目となる住居費は前月比0.4%上昇と、前月から伸びが鈍化。持ち家の所有者が賃貸料を支払っていると仮定した計算上の家賃である帰属家賃も上昇ペースが減速した。

  1月の帰属家賃については、労働統計局が同月の統計発表後に、急上昇の一因は価格上昇ではなく、基になる計算手法の変更によるものだと説明していた。

  ブルームバーグの算出によれば、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.5%上昇と、伸びは前月(0.8%)から鈍化。政策当局者らは米国のインフレ軌道を見極める上で、このメトリックに目を向けることの重要性を強調しているが、実際には別の指標である個人消費支出(PCE)価格指数に基づいてそれを算出している。

  PCE価格指数はCPIほど住居費に重点を置いていない。PCE価格指数が当局の2%目標にかなり近づきつつあるのはそれが一因となっている。

  サービスとは異なり、財の価格はこの1年の大半において持続的に下落し、消費者に一定の安堵(あんど)感を与えてきた。だがその傾向が変化し始めている可能性がある。食品とエネルギー商品を除く財のコア価格は昨年5月以来の上昇となった。

  労働市場の強さもFOMCが利下げへの慎重姿勢を維持する理由の一つだ。別の統計によれば、実質平均時給は前年同月比で上昇が続いた。

引用:bloombergより

このように米国のインフレは未だ健在であり、まだまだ落ち着く気配はないというのが実情でしょう。当初から今回のインフレは非常に粘着性が高いと見られていましたが、そのことを今回も裏付けるような結果であり、紙上の基体をあざ笑うような結果であると言っていいのかなという感じです。いずれにせよ今回の結果を持って、利下げ期待が高まるということはありませんでした。今の所、6月の利下げ予想というのは大きく変わっていないようですが、それがいつまで持つのかも非常に微妙な情勢と言っていいような気はします。

市場の期待は裏切られ続ける

消費者物価の強さというのはある意味予想されていたもののように思います。いつものことですが、市場はなぜか楽観的な憶測で行動することが多く、最近ではかなり自分たちの都合のいいように物事を解釈しがちなような気がします。そういう意味では今回の結果というのは当然といえば当然と行っていいと思います。何度も言いますが今回のインフレは粘着性が非常に高く、なかなか落ち着くとは思えません。いつかは収束するとは思いますが、その道のりというのは想像以上にこんなものとなる可能性が高いと思いますし、今回の結果によってそれは更に高くなったと思います。そういう意味では今後も市場の期待通りに推移するとは到底思えないというのが正直なところです。おそらくは利下げは今年中に行われるとは思いますが、それは今我々が想定しているよりも相当後退する可能性は高いのでしょう。そのことはしっかりと認識しておく必要があるのかなという感じです。

まとめ

今日は2月の消費者物価指数について見てきました。インフレは相変わらず健在です。市場が期待するようなシナリオというのはおそらくは外れてしまうのだろうと思います。そして予想外に金融政策が引き締められ続けた結果として経済が疲弊してしまう可能性も十分あるのだろうという感じがします。