貴族株、AOスミスが配当8%を引き上げる。

AOスミスは10月11日、配当を8%引き上げ、1ドルあたり0.28ドルにすると発表しました。これにより、AOスミスは連続増配年数を28年に伸ばしたことになります。先月は増配を凍結する企業が多く出ていましたが、きちんと配当を増やしている企業もあるので、しっかりとフォローしていきたいところです。そういうわけで今日は、AOスミスについて見ていきたいと思います。

事業内容

エーオー・スミス(A. O. Smith Corporation)は北米及びその他世界地域の2つの事業を運営する。【事業内容】その他世界地域事業は中国、ヨーロッパ、インドを含む。上記2つ事業は住宅・商業用ガス、ガスタンクレス、電気給湯器及び水処理製品を製造・販売する。北米事業は特殊型商業用給湯器、凝縮・非凝縮ボイラー及び水システムタンク等を製造・販売する他、中国においてインホーム空気浄化製品を製造、販売する。同社は北米の住宅用・商業用最終市場向けに給湯器、ボイラー等の製品を提供する。同社は電気、ガス、ガスタンクレス、ヒートポンプ、ソーラーユニット、コンビボイラー等の製品を中国の住宅市場において提供する。

引用:investing.comより

AOスミスは住宅用および商業用給湯器、およびボイラーの世界有数のメーカーで、北米、中国、インド、およびヨーロッパなどで多くのシェアを獲得しているようです。特に北米と中国が収益の多くの部分を締めています。もともとは自転車部品メーカーとして創業したらしいく、戦争中は爆弾のケースを製造していたりもしたようです。現在は米国での給湯器のシェアが1位と非常に強いブランド力を持った企業で、個人やビジネス向けともに非常に高いシェアを持っています。給湯器は新規での受注や、既存設備での交換など、比較的安定した収益を実現しています。海外では中国市場に力を入れており、海外部門の多くは中国での収益のようです。そしてインドでのシェアを2030年までに2倍にするなど、収益の多角化を進めています。

通期業績推移

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

上昇、下降を繰り返しながら、緩やかに上がってきているという印象です。しかし、ここ数年は減少傾向が続いており、今後に心配は残ります。ここ数年は中国の景気減速や、米中の貿易問題などが浮き彫りになり、中国でのビジネスは厳しくなっているのかもしれません。

株価の推移

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

非常に緩やかではありますが、右肩上がりのチャートを描いていて、投資対象としては問題ないでしょう。欲を言えばもう少し、強い上昇曲線を描いてほしいところです。しかし、最近は株価も大きく下げるなど、業績の低下を受けて、さえない展開をしています。今後の動きには注意が必要でしょう。

セグメント構成

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

給湯器の売り上げが多く締めています。次が海外事業で、残りが少しという感じでしょうか。これを見ると、給湯器と海外事業の二つの大きな柱によって支えられているということがよくわかります。

セグメント業績推移

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

おおむね横ばいから微増という感じですが、海外事業だけ大きく落ち込んでいます。これが、近年の業績不振の原因でしょう。海外事業があまりうまくいっていないようです。その多くは中国ですから、景気減速や、外交問題の影響を大きく受けていることがよくわかります。

年間配当履歴

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

配当の推移は非常にきれいな右肩上がりのグラフを形成しています。ここ最近の業績不振でも配当は削減していないようです。なので、株主還元に消極的ということはなさそうです。しかし、このままの状態が続けばいずれ配当も削減せざるを得なくなりますから、早急な対策が求められます。

配当利回り 配当性向

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

配当利回りは1.6%とあまり高くはありません。毎年、それなりの金額の増配をしてきているのに、この数字というのは元々配当利回りは高くはなかったのかもしれません。配当性向も37.6%と非常に余裕があります。しばらくは心配なさそうです。この辺の数字を見ると、株主還元に消極的というわけではないけど、そこまで無理をしていないという印象です。

PER

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

過去5年で15から40の間を動いています。現在はその平均よりもやや、下を推移しています。そういう意味では株価が割高ということはなさそうです。投資するタイミングとしては悪くはないでしょう。

貴族株指標

  • 増配年数 27年
  • 配当利回り 1.70%
  • 1年増配率 8.89%
  • 3年増配率 20.51%
  • 5年増配率 20.86%
  • 10年増配率 21.92%
  • 配当性向 38.24%
  • PER 22.45

参照:U.S.DividendChampions 2021/09/30より

増配年数27年は立派な数字です。そして、今回の増配により、28年になります。米国には50年以上の増配年数を続ける企業もあるくらいなので、27年は大したことないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。今から27年前はどんな世界だったかを考えれば、時代の変化というものがとても大きく、早く動いてきたことは実感できるのではないでしょうか。テロやリーマンショックなど、事業を続けるには大変な環境もあったと思います。そんな中でも増配を続けることができたのですから、この結果は称賛に値します。配当利回りは1.70%とそこまで高くはありません。しかし、非常に印象的なのは増配率です。ここ1年ほどは9%程度と例年に比べると低くなっています。それでも悪くはないと思いますが、それ以前は20%以上と、とても強い伸びを見せています。過去10年で20%増配し続けているというのは本当にすごいです。これが今後も続くとなれば、現在の配当利回りが低くても、すぐに初期投資に見合うだけの配当利回りに成長するでしょう。配当性向も38.24%と非常に余裕のあるレベルで、しばらくは配当資金の心配はする必要はなさそうです。PERについては平均的でしょうか。安定的な事業や高い増配率を考えれば、投資タイミングとしても悪くないかもしれません。ただ、業績が下降していくことを考えれば、少し慎重になった方がいいかもしれません。

まとめ

今日はAOスミスについて見ていきました。事業内容としては非常に安定していて、長期投資に向いていると思います。ハイテク株などのように、株価が大きく上がるということはないかもしれませんが、安定的な配当と株価を期待できる、非常に良い企業だと思いました。懸念事項としては中国など海外事業でしょうか。中国は最近は景気減速懸念があり、成長率もやや鈍化しています。さらに、米中の貿易問題はAOスミスにとっては大きなマイナスです。この政治リスクはAOスミスに投資するにあたっては無視することはできないでしょう。そのことは経営陣も十分に認識しているでしょうし、だからこそ、インドへの投資を加速するなど対策をしているのでしょう。そういう意味では、中国との問題が解決しないうちは、少し業績は伸び悩むかもしれません。しかし、事業自体は安定的でなので、大きく収益が悪化することはないと思われます。なので今後、大きく株価が落ち込むなどすれば、それは大きな利益を上げるチャンスかもしれません。