新たに貴族株の仲間入りを果たした企業、エンブリッジ

最近は原油価格が高騰を続けています。一時、2014年11月以来、7年ぶりに1バレル80ドル台を超えてきました。経済再開に伴い、需要が増加しているところに液化天然ガスの価格高騰、OPECが原油の増産を見送ったりと、様々な要因が重なってのことでしょう。それを受けて原油関連株は上昇傾向にあります。これからもこの流れが続くかどうかはわかりませんが、しばらくは以前のような安値にはならないのではないかと思います。エネルギー関連株といえばエクソン・モービルやシェブロンなどが有名ですが、それ以外にもたくさん有望な株はあります。その中で今日は、エンブリッジという企業を見ていきたいと思います。エンブリッジは今年、見事に連続増配年数25年を達成し、貴族株の仲間入りを果たしました。そういうわけで、以前から注目していたのです。

事業内容

エンブリッジ(Enbridge Inc.) は、原油、液体、天然ガスのパイプライン、規制された天然ガス配給ユーティリティ、再生可能発電のネットワークを含むビジネスプラットフォームを持つエネルギーインフラストラクチャ企業である。【事業内容】5つの事業セグメントで構成される。液体パイプライン事業は、各種のグレードの原油及びその他の液体炭化水素を輸送するパイプラインと関連するターミナルで構成される。ガス伝送とミドストリーム事業は、天然ガスパイプラインと、米国のガス・トランスミッション、カナダのガス・トランスミッション及びミドストリームを含む収集及び処理施設への投資で構成される。ガス分配事業は、天然ガスユーティリティ事業を行う。グリーン電力と送電事業は、再生可能エネルギー資産と送電設備への投資で構成される。エネルギーサービス事業は、物理的な商品マーケティング活動と物流サービスを引き受ける。

引用:investing.comより

エンブリッジは北米最大のエネルギーインフラ企業で、石油・天然ガスパイプライン、天然ガス公益事業、再生可能エネルギー事業などを主に行っています。化石燃料に対する風当たりは、かなり強くなっている現在、エンブリッジはクリーンエネルギー事業への投資を拡大しているようです。欧州などでは大型洋上風力発電プロジェクトを進めていて、収益構造の多角化を進めています。今は再生可能エネルギー事業は収益全体の約3%ほどですが、将来的にはもっと大きくなることは確実でしょう。化石燃料についても、今後は下火になっていく可能性は高いですが、しばらくは重要なエネルギー源であることには変わりありませんし、なくなることはないと思います。化石燃料もきちんと維持しつつ、次世代エネルギーに大きな投資をしていることは正しいのではないでしょうか。

通期業績推移

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

概ね右肩上がりのグラフを描いています。去年は大きく落ち込んでいますが、これは新型コロナウィルスパンデミックの影響ではないかと思われます。そうであれば、今後についてはそこまで深く考える必要はないかもしれません。そういう意味でも、今年、そして来年度の決算は非常に注目でしょう。そこで大きく落ち込むようだと、大変なことになるかもしれません。

株価の推移

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

株価はほぼボックスチャートを描いています。あまり市場からは評価されていないようです。高い配当を継続的に出し、売り上げも右肩上がりですから、なぜなのかなとは思います。やはり、化石燃料を扱っているということで、ネガティブな印象を持たれているのかもしれません。実際、化石燃料やたばこなど世間的にあまりよく思われないような業界は、業績や株主還元がよくても株価があまり評価されないことがあるような気がします。もしそうだと、たとえ業績が上がっていっても株価はあまり上がらないのかもしれません。ただ、配当は業績が良ければ支払われるでしょうから、配当狙いの投資家にはあまり関係ないでしょう。これから、風力発電プロジェクトなど、再生可能エネルギー関連の事業が軌道に乗ってくれば株価も上昇するかもしれません。

セグメント構成

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

このグラフを見るとやはり、原油と天然ガス関連の事業が大部分を占めているようです。再生可能エネルギー関連事業もありますが、非常に微々たるものです。今後はこの分野への投資も増えるでしょうから、構成比は少しずつ変わっていくものと思われます。

セグメント業績推移

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

去年はエネルギーサービスが大きく落ち込んでいます。やはり、コロナウィルスパンデミックの影響がこの分野には大きく影響したようです。最近一番伸びてい事業もこのエネルギーサービスなので、ここが回復しないことには大きな業績の伸びは期待できないのかもしれません。

年間配当履歴

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

配当は非常に順調に伸びています。毎年10%前後は伸びているようなので、とても素晴らしいと思います。21年度はまだ出ていませんが、四半期ごとの結果を見る限り、上昇することは間違いないでしょう。

配当利回り 配当性向

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

配当利回りは6.4%と非常に高水準です。高いに越したことはありませんが、ここまで高いと何か悪い材料がある可能性を考えてしまいます。今のところ、欧州の洋上風力発電プロジェクトの投資案件くらいが大きな懸念材料かなと思います。それがうまくクリアできれば状況は改善するのではないでしょうか。配当性向も非常に高いです。これも大型投資の影響でフリーキャッシュフローが少ない影響ではないかと思います。

PER

引用:マネックス証券 銘柄スカウターより

PERは非常に大きく動くようです。5年間でだいたい15~50くらいまで変動しています。そのなかで現在は非常に低水準です。そういう意味では投資するいいチャンスかもしれません。各種懸念材料をきちんと考慮したうえで検討した方がいいでしょう。

貴族株指標

  • 増配年数 25年
  • 配当利回り 6.55%
  • 1年増配率 8.91%
  • 3年増配率 9.02%
  • 5年増配率 10.47%
  • 10年増配率 11.34%
  • 配当性向 109.96%
  • PER 16.79

参照:U.S.DividendChampions 2021/09/30より

増配年数25年は、新たな貴族株の仲間入りです。これからも長く貴族株でいられることを願うばかりです。配当利回りは6.55%と非常に高い利回りです。配当狙いの投資家からすると、とても魅力的に映るのではないでしょうか。増配率についても比較的良い数字を残していると思います。これだけ高い配当と、増配率を維持できるというのは非常に素晴らしいです。配当性向については100%を超えていて少し心配になります。利益以上の現金を配当に回しているということですから、この状態が長く続けば会社は確実に潰れてしまいます。なので、減配や無配という自体に陥る可能性があるということです。現在、欧州での風力発電プロジェクトなど、膨大な投資案件をかかえているため、余剰資金が少なくなり、このような状態になっていると思われます。プロジェクトが成功し、利益を継続的に生むようになれば、この状態は改善されてくると思われます。PERについても比較的低めです。PERが低いのはいいことですが、先程の大型投資の件もあり、投資家からは少し距離をおかれているのでしょう。投資するときは十分考慮する必要がありそうです。

まとめ

今回はエンブリッジについてみてきました。化石燃料については非常にネガティブなニュースが多いので、投資対象としては慎重になっている人も多いのではないでしょうか。しかし、エネルギー関連企業も次世代エネルギーにきちんと投資をしているところもありますし、こういうところは投資対象として検討してもいいと思います。それに、今後、本当に化石燃料がなくなるのかはわかりません。未来のことに絶対はありませんから、少しこのような企業もポートフォリオに加えておくのもいいと思っています。

配当利回りも高く、増配率もいいので配当狙いとして持ってみたいという人もいると思いますが、エンブリッジに投資する際には注意しなければならない点があります。実はエンブリッジは米国株ではなく、カナダ株なのです。そして、カナダ株は現地で利益のうち、15%源泉徴収されます。米国株は現地で徴収されるのは10%ですから、5%分多く損をすることになります。米国株は、日本株よりも税金で不利な状況ですが、カナダ株のほうがもっと不利な状態なのです。ですから、カナダ株に投資する際は、税金のことを十分に考慮しなくてはなりません。しかし、エンブリッジは現在、非常に配当利回りが高いので、15%の税金を考慮しても十分に投資する価値はあるのではないでしょうか。そして、欧州の洋上風力発電プロジェクトなど、先行投資分がしっかり実を結んでくれば、配当とともに、株価上昇も狙えると思います。そういう意味では、株価があまり高くない現在、投資しておくのはいいのかもしれません。