マーケットに漂う楽観論を否定するFRB

最近は消費者物価の鈍化や雇用の悪化傾向など金融政策の変更を期待させる指標が多く発表されており、それを市場も織り込んできているような感じがします。ようやくインフレが終息に向かっているのかと期待してしまいますが、依然、歴史的に見ても高水準にあることは間違いなく、やや楽観的な気がします。FRBもそのように感じているようで、最近市場の楽観論にくぎを刺すような発言が相次いでいます。そういうわけで今日は最近のFRB関係者の発言についてみていきたいと思います。

セントルイス連銀総裁が市場の楽観論に対してくぎを刺す

セントルイス連銀のブラード総裁はインタビューにおいて、最近の市場はやや楽観的過ぎるという発言をしました。

米セントルイス連銀のブラード総裁は、米金融当局がインフレ抑制のために来年、一段と積極的に利上げを行う必要が生じる可能性を金融市場が過小評価していると指摘した。

  ブラード総裁は28日、マーケットウオッチとバロンズによるインターネット配信のインタビューで、インフレが自然に落ち着くとの期待が「依然かなりある」と述べた。

  同総裁は、米金融当局が政策金利を少なくとも5-7%レンジの下限に引き上げる必要があるとの見解もあらためて表明した。

引用:Bloombergより

このようにブラード総裁は最近のマーケットはやや楽観的な期待に基づいて動いていると注意をしています。

クリーブランド総裁も同調

また、クリーブランド連銀のメスター総裁も同じような発言をしています。

米クリーブランド連銀のメスター総裁は、「政策が景気抑制的な領域に入り始めていることから、われわれとしては利上げのペースを落とし、その効果を評価する機会を得ている」と述べた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が総裁とのインタビューを28日に報じた。

  メスター総裁は政策引き締めについて、「一時停止が近いとは考えていない」と発言。「良好だったのは10月の消費者物価指数(CPI)一つだ。私としては同様の統計をさらに複数目にする必要がある。インフレが一段と鈍化し、さらにはコアのサービス価格が低下すればなお良い。労働市場のバランス改善も必要だ」と述べた。

  その上で、「明るいニュースにのめり込むのは非常にたやすいが、希望的観測が真に説得力ある証拠に取って代わるのは望ましくない。時期尚早に停止した場合の代償は極めて大きい。この点についてわれわれは極めて入念でありたい」と語った。

引用:Bloombergより

メスター総裁はこのように述べ、依然インフレは高止まりしていることは事実であり、今後も引き締めを継続していく可能性について言及しました。

ニューヨーク連銀も同じ意見

さらにニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も同様の意見を述べています。

米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日、インフレ抑制に向け連邦準備理事会(FRB)には行うべきことが残っていると述べた。また、物価対応のための金融引き締め政策の結果、失業率の顕著な上昇が予想されるとの認識を示した。

ウィリアムズ総裁はニューヨークのエコノミック・クラブでの講演原稿で「インフレ率はあまりにも高い。インフレが高止まりしていることで米経済が潜在能力を完全に発揮する能力が損なわれている」と指摘。インフレ低下に進展の兆しが見られるとしながらも、インフレ率をFRBの目標に戻すため、一段の措置が必要との考えを示した。

その上で「一段の金融引き締めで需給バランスが回復し、向こう数年間でインフレ率を2%に戻す一助になる」とし、「金融引き締めで需要が低下し、インフレ圧力が下がり始めている。時間はかかるが、持続的な物価安定に戻ると確信している」と述べた。

同時に、米経済は景気後退(リセッション)入りを免れる可能性が高いものの、失業率は上昇すると予想。来年末には4.5─5.0%に上昇する可能性が高いとの見方を示した。

引用:ロイターより

このようにウィリアムズ総裁も今後の金融政策についてまだやるべきことが残っており、金融政策の変更を期待するマーケットの考えとは違う発言をしました。

マーケットはいつも先走ってしまう

このようにFRB関係者が相次いで市場の動きを落ち着かせるような発言をした背景には最近の株価上昇などの金融政策変更を期待した動きをけん制する意図があったのでしょう。消費者物価の鈍化が明らかになってからかなりその期待というのは膨れ上がってきたように思います。株価も一時の下落傾向からやや上向きになってきていました。それだけ期待が大きいということでもありますが、現実はそんなに簡単ではありません。彼らの言う通り、一時的に鈍化の動きがみられるとはいえ、依然として消費者物価の値は歴史的に見ても高水準であることは変わりありません。そういう意味でも今すぐ政策変更を行うという可能性は思っているほど高くはないでしょう。現在の金利水準で停止するということとはさすがに考えづらく、この先もこれまでのようなハイペースということはないかもしれませんが、しばらくは上昇を続けていくと思われます。それほど今のインフレというのは深刻だということです。そういう意味でも今のマーケットはやや楽観的な空気が支配しており、FRBの考えとは違っているということなのだと思います。

まとめ

今日は相次ぐFRBからのマーケットへの警告についてみてきました。最近のマーケットというのは私の目から見てもやや楽観的だったと思いますし、FRBからもそのような声が出てくるということはやはりそうだったということなのでしょう。来年の成長見通しも米国は非常に低いとみられています。そういう意味では少々明るい兆しが見えたような気がするくらいで楽観的になれるほど状況は良くはないということです。いつものことですが、マーケットはやや先走った動きをします。そういう意味でもあまりその動きにつられることなく、しっかりと先を見据えて行動していきたいものです。