金融政策の変更の可能性は徐々に高くなっているような気がする

インフレや景気の先行きが懸念される中、FRBの金融政策がどうなるか問うのは最も注目される事項です。そのため日々発信されるFRB関係者からの発言というのは非常に投資関係者からも注目されています。そして先日も新たな発言がありました。今日はその発言についてみていきます。

金融政策の効果が出てくるのには時間がかかる

サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は講演で金融政策が効果を発揮するには時間差があるとし、そのことに留意すべきだという発言をしました。

米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、インフレ鈍化に向けて一段の利上げを進める中、金融政策の効果が経済に行き渡るには時間差が伴うことに当局者らは留意する必要があると述べた。また、政策金利が少なくとも5%に達するとの見方をあらためて示した。

  総裁は21日、カリフォルニア州のオレンジ郡ビジネス協議会で講演。事前に配布された原稿によれば、「政策を十分に抑制的なスタンス、つまりインフレを鈍化させ物価の安定を回復させるのに必要な水準にすべく取り組む上で、われわれは留意する必要がある」とし、「調整が足りなければインフレは高過ぎる状態が続くが、調整が行き過ぎれば、不必要な痛みを伴う景気低迷を招きかねない」と述べた。

  講演後に行われた記者団との電話会見では、自身はあらゆる利上げの選択肢を携えて12月13、14両日の会合に臨むことになると述べた。また政策金利のピークは少なくとも5%になるとの予測をあらためて示した。

  「今何を行うべきか、どこにリスクがあるかを考える中で、私はいわゆるタカ派寄りになりがちだ」とした上で、「5%は私にとって良いスタート地点だ」と述べ、必要に応じて高くなる可能性に言及した。

  デーリー総裁はインフレが「容認できないほど」高いとし、自身を含め金融当局者はインフレ押し下げに向けてまだやるべき仕事があるとの認識をこれまでに示したと指摘。ただインフレの減速が示された直近の消費者物価指数(CPI)統計については、「期待が持てる」と語った。

  インフレ鈍化に向けて金融当局は利上げを続けているが、金融政策の要素は政策金利だけではないとデーリー総裁は説明。現在進めているバランスシートの縮小と将来の政策の道筋に関するフォワードガイダンスも、引き締めのメカニズムとして効果を発揮するとし、それは金融環境に反映されているとの認識を示した。

  「フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は3.75-4%だが、金融市場は6%程度の水準にあるような反応を示している」と総裁は語った。

  「さらなる金利調整について判断を下す上で、FF金利と金融市場の引き締まりとの間の乖離(かいり)を意識し続けることは重要だ」とし、「それを無視すれば、引き締め過ぎとなる可能性が高まる」と述べた。

引用:Bloombergより

デーリー総裁はこのように述べ、金融政策が行き過ぎることに対する懸念を述べました。最近はやや落ち着きを取り戻した感のある物価動向ですが、それでもなお引き締めを続けるべきという声は多くあります。それをやや抑えるような発言といっていいのかもしれません。デーリー総裁はインフレ抑制のために現状の政策は支持してはいますが、きちんとその効果を検証しないと経済を殺しかねないという懸念を表明したということでしょう。

引き締めが行き過ぎる可能性

このことについてはかねてより懸念されていることです。インフレ抑制を意識するあまり、必要以上に金融を引き締めすぎてしまい、景気を大きく後退させてしまうというものです。現状、どちらが正しいのかは何とも言えませんが、インフレがやや落ち着きを見せているということは事実です。そして景気の先行きについても非常に懸念が出ています。来年の成長見通しというのは米国は日本よりも低いとみられており、かなり厳しい状況が予想されます。そういう意味ではそろそろ景気に対する配慮もしていかないといけないという感じなのかもしれません。デーリー総裁の発言はそのようなポジションの人たちの意見を代弁したものとみていいのかなという感じです。

何が正しいのかは歴史が証明する

そうはいっても本当にインフレがこのまま落ち着くのかどうかというのはわかりません。消費者物価についても落ち着いてきたといってもまだまだ高すぎるといっていいくらいの数値ですし、今後高止まりする可能性だって十分にあるでしょう。そういう意味では少々の景気後退を覚悟してでも一気に物価を落ち着かせた方がいいということもあるのかもしれません。もちろんその影響というのは小さいものではないと思いますが、結果的に早く、被害も小さくできる可能性もあるのでしょう。おそらくは強硬派の人たちはそのようなシナリオを描いているのでしょう。正直私にはどちらが正しいのかはわかりません。しかし、現状ではFRBはやや引き締めを緩める方へ行きそうな感じはしてきています。

まとめ

今日はデーリー総裁の発言をもとに今後の金融政策について考えてみました。個人的にはタカ派とハト派のどちらが正しいのかはわかりません。緩めても問題ないかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。強く引き締めればインフレは終息することは間違いないでしょう。しかし、その影響で経済や社会に与える影響がどれほどのものになるのかというのは想像しづらいと感じます。だからこそ慎重にならざるを得ないということでしょう。私には何が正しいのかはわかりませんが、今のところやや緩やかになりそうだということは感じています。それが正解であることを祈るばかりです。