4月の米国雇用統計は依然堅調。賃金の上昇は鈍化。これはインフレが落ち着いてきた兆しなのか。

6日、株式市場が注目していた米国の雇用統計の発表がありました。結果としては市場予想を上回る伸びを示し、改めて米国の労働市場が堅調であることが裏付けられました。しかし、賃金の伸びは鈍化しており、インフレが徐々に落ち着きを見せてきたようにも見えます。まだ何とも言えない状況ですが、とりあえずは大きな変化はないように思います。そういうわけで今日は米国の雇用統計についてみていきます。

労働市場は堅調、賃金の上昇はやや鈍化傾向

6日米労働省が発表した4月の雇用統計は前月比で42万8千人増という結果となりました。

[ワシントン 6日 ロイター] – 米労働省が6日発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比42万8000人増加した。市場予想(39万1000人増)を上回る堅調な伸びとなった。第1・四半期の国内総生産(GDP)は縮小したものの、米経済のファンダメンタルズが依然堅調である可能性が示された。

引用:ロイターより

市場予想は39万1000人だったので、それよりも良い数字となりました。改めて米国の経済は堅調に推移していることが示されたのだと思います。しかし、賃金の増加ペースについてはやや鈍化の傾向が出てきました。

平均時給は前月比0.3%増と、エコノミスト予想に達しなかった。前月は上方修正された。前年同月比では5.5%増。これが賃金上昇の持続的な鈍化傾向の始まりなのか、あるいは一時的な減速に過ぎないのか、判断は難しい。

引用:Bloombergより

このように賃金上昇は市場予想を下回っています。もし、これが一時的なものでないというのであればインフレがようやく落ち着いてくる兆しを見せたということになり、経済にとっては明るい兆しとなるでしょう。そのことはサマーズ元財務長官もBloombergのインタビューで述べています。

サマーズ氏は同統計の発表後、「賃金の伸びは私の予想より若干鈍った。もしかするとインフレに関して明るい兆しであるかもしれない」と指摘。その上で「ただ、そう判断できるのはまだ先のことだろう」とブルームバーグテレビジョンで述べた。

引用:Bloombergより

賃金の上昇は大方の予想よりも鈍いようです。そのため、これをインフレ抑制がうまくいっていると考える人にとっては朗報となるでしょう。慎重な人にとってはこれは一時的なものである可能性があるので様子見となるのかもしれません。いずれにせよ、高いインフレ率がようやく落ち着いてくるかもしれないという期待を持たせることができるかもしれません。

株式市場は下落。0.75%の利上げの可能性について考え始めたのか?

しかし、6日の株式市場は下落をしてしまいました。特にハイテク銘柄の多いナスダックは2020年来の安値を更新し、下落は止まりそうもありません。賃金の上昇率鈍化というニュースはあまり市場の期待値を押し上げる効果はなかったようです。それよりも、好調な雇用統計の結果を受けて、FRBが今後0.75%の利上げの可能性について市場は考えるようになったのかもしれません。先日のFOMCではパウエル議長は0.75%の利上げの可能性について完全に否定しました。かなり強い口調での否定だったので個人的にはその可能性はなくなったのかなと思いますが、市場はそうではないようです。ただ、あそこまで完全否定しておきながらやっぱり違いましたとなると、完全にFRBの信用というものは失墜してしまうような気がします。もうそんなものはないだろうという人もいるかもしれませんが、ここまであからさまな行動をされるとさすがに今後はFRBの発言に誰も耳を貸さなくなるような気がします。なので個人的には0.75%というのはないような気がします。まあ、どうなるのかは何とも言えませんが。

まとめ

今日は先日発表された雇用統計についてみてきました。内容としては非常に米国市場はいまだ堅調であるということだと思います。賃金の上昇が本当に落ち着いてきたのか、それとも一時的なのかというところは何とも言えませんが、今のところ市場はあまりインフレが収まってきたとは思っていないように思います。なのでしばらくは軟調な展開が続くのかもしれません。利上げについてはさすがにこの状況であれば先日のパウエル議長の発言もあるので0.75%の可能性はないとは思いますが、どうなのかなといった感じです。いずれにせよ、しばらくは軟調な展開というのは続きそうです。