米国はソフトランディングは可能か?

米国の経済が今後どうなるのかについては非常に注目が集まるところでしょう。多くの識者は米国は大幅なリセッションは避けられないとみています。しかし、一部にはまだソフトランディングの可能性について排除していない人も見られます。FRB関係者の中には比較的そのような人が多いような気がします。まあ、金融当局の人間が強力な悲観論を述べるというのは影響が大きすぎるので、仮にそう思っていたとしてもダイレクトにそのようなことを言うことはないとは思います。なので本心で言っているのか、希望的観測を述べているのかはわかりませんが、今後の経済の考えるうえでは聞いておいて損はないでしょう。そういうわけで今日はFRB関係者の今後の見通しについてみていきます。

ソフトランディングは可能か?

アトランタ連銀のボスティック総裁は今後の経済の見通しについて以下のような発言をしました。

米アトランタ連銀のボスティック総裁は雇用市場の強さを指摘し、インフレ退治としての利上げにもかかわらず、経済は「比較的、秩序ある形で」減速することが可能だとの見解を示した。

  ボスティック総裁は25日、CBSの番組で経済のソフトランディング(軟着陸)見通しについて、「厳しい状況が予想される。容易ではない」と発言。「雇用がいくらか失われる可能性は高い」と述べた。

  「しかし極めて深い痛みを避けられるよう、米金融当局はあらゆる可能な措置を講じるだろう」と述べ、それを可能にするための「シナリオが複数」あると話した。ボスティック総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で議決権を持たない。

  ボスティック総裁以外にも、複数の米金融当局者が米経済の需要が縮小する必要性を指摘している。同総裁はこの日、需要の縮小は始まっているとして、インフレ抑制による「配当が開始される」と述べた。

  「雇用は月間ベースでなおも大量に創出されている。従って経済には米金融政策を吸収し、比較的秩序ある形で減速することが可能だと私は考えている」と話した。

引用:Bloombergより

ボスティック総裁はこのように述べ、米国は非常に厳しい状況に置かれてはいるが、ソフトランディングは今でも可能であるとの見解を示しました。今後については非常に厳しい状況が訪れることが予想されるとしながらも、それらに対してうまく対応できればソフトランディングは可能ということです。そしてそのための手段も複数用意しているということで、これが本当であれば大変喜ばしいことですし、ぜひともそのようになってほしいと願うばかりです。

それは相当に困難な仕事となる

では本当にそうなるのかというのはわかりません。それは正に神のみぞ知るといったところでしょう。実際多くの識者は今後の米国経済に対して非常に悲観的です。ボスティック総裁のような比較的明るい未来を予想している人というのは少数派でしょう。これはFRBがインフレを甘く見すぎているという人もいれば、インフレ対策を過剰に行ってしまうという逆の意味での悲観論を言う人もいます。そういう意味でもこの状態をうまくコントロールするというのは相当難しいといわざるを得ないのかなという印象です。足りないのであれば当然ダメですが、やりすぎてもダメという状況は本当にハンドリングは困難な状況だろうということです。

何とかそうなってほしいとは思うがなかなか難しい

個人的にはさすがにソフトランディングは難しいのかなと思いますが、それでもその希望を抱かせてくれる要因というのは堅調な雇用環境が続いているということでしょう。ここまで急激な引き締めを行い、インフレも高止まりしているというのにもかかわらず、雇用は全く衰える気配を見せません。ボスティック総裁も述べているようにこの雇用が維持できているうちはソフトランディングという可能性もあり得るのかなという印象です。なのでもし今後、雇用が大幅に減速するような事態が起きればソフトランディングの希望は確実に打ち砕かれることになるでしょう。雇用が大幅に減少するということになればさすがにFRBもこの厳しい引き締め政策を維持することはできずに緩和という方向にかじを切らざるを得なくなると思います。そうなれば当然インフレは抑制することは困難になるはずです。なので今後、米国経済のソフトランディングが可能なのかどうかというのは雇用環境を維持できるのかというところにかかっているのかなと個人的には思っています。

まとめ

今日はボスティック総裁の発言から今後の米国経済について考えてみました。個人的にはソフトランディングの可能性はなくなったとは言いませんが、かなり厳しくなったのかなという印象です。もちろん私の予想が間違っていることの方が経済にとっても私自身にとってもいいので、ぜひともそうなってほしいと願うばかりです。しかし、なかなかそのような希望は持ち続けづらいなという印象です。その最後の望みというのは雇用環境が好調を維持し続けられるのかというところにかかってくるでしょう。おそらくは今後はこのような好調な雇用環境は維持できないと思います。問題はそれがどの程度の減少になるのかというところです。対して大きな影響が出ないのであればFRBもインフレ抑制のための政策を続けるでしょう。しかし、予想外に大幅な雇用環境の悪化が起きればそれは難しくなるといわざるを得ません。そうなれば米国経済は急激に減速していくことになるでしょう。そうならないことを切に願うばかりです。