ウォラー理事の発言により利下げ期待はさらに後退

強いインフレ指標の結果を受けて、市場では利下げ期待が大きく交代していますが、それをさらに後押しするように当局からも同じような発言が相次いでいます。以前、アトランタ連銀のボスティック総裁が今年の利下げについてこれまでよりも弱いものになる可能性を示唆したことをお話しましたが、ウォラー理事も同じように利下げに対して慎重な姿勢を示しており、利下げ期待はより大きく後退してきています。

利下げ期待は大きく後退

今後の金融政策について市場の期待とは裏腹に、それほど緩むことはない可能性を多く示唆する事態となっています。

ドルは1-3月(第1四半期)、四半期ベースで2022年遅く以来最大の上げとなる勢いだ。これには、このところ市場に広がる利下げ観測を米金融当局者が押し返していることも背景にある。

  ウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事による27日のタカ派寄りの発言を受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策緩和を急がず、最終的には利下げ開始が他の主要中央銀行よりも遅くなるとの観測が強まった。これを受け、市場では米利下げ開始のタイミングに関する織り込みが後退し、ユーロは1カ月ぶりに1ユーロ=1.08ドルを下回った。

  ドルは年初以降に主要通貨に対し3%上昇し、四半期として22年7-9月(第3四半期)以降最大の上げとなっているが、3月末までにドルをさらに押し上げ得る要素が控えている。29日には米金融当局が重視する個人消費支出(PCE)コア価格指数が発表されるほか、パウエルFRB議長の講演も予定されている。

  リチャード・マグワイア氏らラボバンクのストラテジストは、顧客リポートで「あすのPCEコア価格指数発表に対して、市場は非常に非対称的な反応を示す可能性がある。コンセンサスを上回った場合、急激な織り込み直しの動きが見られそうだ」と分析した。

  FOMCによる利下げ開始が他の主要中銀より遅くなるとの見方が、ドルの相対的な魅力を高めている。先週はスイス国立銀行が他の主要中銀に先駆けて利下げを実施。一方、イングランド銀行(英中銀)では、タカ派の委員2人が利上げ主張を撤回し、5会合連続の据え置きに賛成した。

  マネックス・ヨーロッパの外国為替分析責任者、サイモン・ハーベイ氏は、欧州は景気循環的に見て相対的に弱いとし、欧州中央銀行(ECB)は「今年の金融緩和に関して、FOMCを極めて大きく上回るペースで進める」必要があるだろうと指摘した。

  ハーベイ氏は、ドル上昇が見込まれることから、ユーロは数日内に1ユーロ=1.07ドルに向かう可能性もあると予想した。

引用:bloombergより

このようにFRBのウォラー理事は述べており、利下げに対してそこまで積極的ではないことを示しています。最近は予想外に強い経済指標により、市場の利下げ期待は大きく後退しています。そしてそれをより強固なものとするように、連日FRB内部からも同じような発言が出てきているという感じです。先日のボスティック総裁の発言でも従来よりもやや弱い利下げになるだろうという発言は出ていましたが、今回のウォラーリ時の発言はその可能性をより強固なものとすることになるでしょう。市場では利下げ時期の後退や利下げ幅の縮小など今年の金融政策に対する期待は更に修正されるものとなるでしょう。

現状の米国経済を考えるとそこまで利下げを急ぐ必要はないだろう

最近の経済指標を見る限り、そこまで利下げを急ぐ必要はないとFRBが考えるのも無理はないという感じがします。米国経済は想像以上に堅調であり、底堅い推移をしています。そういう意味ではなにか金融政策によって支えなければならないという状況ではないことは確かです。そういう意味ではより確実にインフレが落ち着くことを確認するまで引き締めを継続しようと考えるのも当然なことなのかなという感じがします。何度も言いますが今回のインフレは非常に粘着性が高いです。厳しい引き締めにもしっかりと耐え抜き、今なお厳しい物価圧力を維持しています。そういう意味でFRBとしては失敗をしないためにもより確実にインフレが落ち着くのを確認するまで金融政策を緩めるという選択はしないでしょう。おそらくはこのあと行われるパウエル議長の発言でもそのようなことが聞けるのだろうと思います。そういう意味でもまだまだインフレとの戦いは続くのだろうと感じています。

まとめ

今日は相次ぐ利下げ否定論について見てきました。インフレは未だ健在であり、好調な米国経済のことも合わせて考えると、そこまで急いで利下げを行う必要はないのだろうと思います。そういう意味でも今年の利下げというのは当初思っていたよりも相当程度縮小されたものとなるでしょう。日銀もおそらくは市場が期待するほどに張り上げはしないと思われますし、ドル円は意外とそこまで円高には触れないのかなという感じがします。