ISM製造業総合景況指数は低調であり、景気減速を改めて示すものとなる

米国経済は依然として先行きが不透明です。先日発表されたISM製造業総合景況指数も低調なものとなり、景気減速が改めて確認された形となっています。しかし、インフレ抑制には必要な過程であり、これを経済正常化の過程とみることもできるようです。そういうわけで今日は先日発表されたISM製造業総合景況指数についてみていきます。

ISM製造業総合景況指数は予想通り低調なもの

7月1日に発表されたISM製造業総合景況指数は最近の経済指標と東洋に低調なものとなりました。

米供給管理協会(ISM)が発表した6月の製造業総合景況指数は2年ぶりの低水準となった。新規受注が縮小を示し、財への需要が弱まっている新たな証拠となった。新規受注は6ポイント近く低下して49.2と、2020年5月以来の低水準。当時の米経済は新型コロナ禍によるリセッション(景気後退)からの脱却を図っていた。受注減はインフレの影響で鈍化した個人消費と在庫増を反映している。在庫の指数は56と、2010年以降の最高水準近くに上昇した。

引用:Bloombergより
  • ISM製造業総合景況指数は6月に53に低下
  • 前月は56.1
  • ブルームバーグがまとめた市場予想の中央値は54.5
  • 同指数は50が活動の拡大と縮小の境目を示す

引用:Bloombergより

このように米国の財への需要というのは確実に低下してきています。高まるインフレが消費にようやく影響を与えてきたというところでしょう。また、消費が物から事へ移行しているということも影響していると思われます。コロナによる活動抑制が解除されたこともあり、レジャー等観光需要の方は旺盛なようで、航空業界などは先行きについて強気な見方をしています。このようにすべての業種で先行きが悪いというわけではないですが、製造業などはそろそろ景気後退の足音が近づいてきたといっていいのだろうと思います。

元財務長官のサマーズ氏は景気後退が早まると予想

元財務長官のローレンス・サマーズ氏は最近の状況を見ると、景気後退入りが予想よりも早くなるとの見解を示しています。

サマーズ元米財務長官は、自身が予測したリセッション(景気後退)入りがより早期に始まるリスクが高まっていると指摘、景気後退が現実となった場合にはインフレは減速する可能性があるとの見方を示した。サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンの番組で「2022年にリセッション入りするリスクは、私が6-9週前に判断していた時に比べて格段に高まっている」と述べ、「今後6-9カ月間にリセッションに入れば、インフレ圧力の低下が見られるだろう」と指摘した。

引用:Bloombergより

サマーズ氏は以前から米国の景気後退が起こることを予想していました。その予想通りに米国経済は動いているように思えますが、サマーズ氏はより早く景気後退が起こるかもしれないと最近指摘するようになってきました。財務長官も務めたサマーズ氏の発言だけに市場や投資家に与える影響も大きいだろうと思います。実際、ここ最近の動きというのはサマーズ氏の発言通りの動きなので、無視することはできないでしょう。ただ、やはり景気後退が起こればインフレは収まっていくとの見解はしています。パウエル議長は何とか景気後退を起こさずにインフレを抑制しようと頑張ってはいますが、その可能性はやはり低いといわざるを得ないでしょう。おそらくは多くの市場関係者が景気後退をせずにインフレを抑制できるとは思っていないはずです。そういう意味では今後の景気後退というのはよほどの物でもない限り金融当局や投資家は大きな動揺をするということはないのでしょう。我々もそのように覚悟しておく必要がありそうです。

まとめ

今日は先日発表されたISM製造業総合景況指数についてみていきました。米国経済は徐々にリセッションに向けて動き出してきた感じがします。何とか景気後退せずにインフレを抑制してほしいと思うところですが、なかなか厳しそうです。サマーズ氏の発言もそれを裏付けるようなものでした。おそらく金融当局はもちろん、多くのプロの投資家はすでに景気後退についてある程度織り込んでいるでしょう。そして、最後に個人投資家が慌てて売り込んだあとに、安くなった株を底値で買おうと狙っているはずです。なのでそのことはきちんと頭に入れておくべきです。そうでないといいカモにされてしまうだけです。