米国経済の過熱感は徐々に落ち着いてきたのかもしれません。今週の新規の失業保険申請件数は予想に反して増加し、労働市場の過熱感は和らいできた感があります。急速に引き上げられた政策金利により異常に過熱した米国経済はようやく落ち着きそうな感じがしてきました。そういうわけで今日は今週の米国新規失業保険申請件数についてみていきます。
新規失業保険申請件数は予想外に増加する
先日発表された今週の米国の新規の失業保険申請件数は市場の予想を裏切り、増加しました。
- 2日終了週の米新規失業保険申請件数は前週比4000件増加し、23万5000件
- エコノミスト予想の中央値は23万件
- 前週は23万1000件、速報値から修正されず
- 6月25日終了週の失業保険の継続受給者数は138万人に増加
- 9週間ぶりの高水準、依然として過去最低付近
引用:Bloombergより
これまでは高いインフレやFRBの利上げによる引き締め政策にもかかわらずタイトな労働市場でしたが、ようやくその変化の兆しが見えてきたのかなという感じです。もちろんまだまだ先行きは不透明だということには変わりありませんが、今後はこれまでとは違った形に変化していくのだろうと思わせるものではないかと思います。各種経済指標についてもだんだんと過熱感が収まってきたような数値も散見されるようになってきているので、年後半に向かって米国経済はまた新たな展開を見せるのではないかと思います。
FRBはまだ引き締めをやめるつもりはない
過熱感がやや収まってきた感が出てきてはいますが、まだ引き締め政策をやめるということはないようです。FRBのウォラー理事は7月の利上げについて0.75%での利上げを支持すると述べています。
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で2会合連続となる75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを支持する考えを示した。また9月会合では「恐らく」50bpの利上げを支持すると語った。借り入れコストの上昇で米経済がリセッション(景気後退)に陥るリスクがあるとの見方について、ウォラー理事は極めて高いインフレを落ち着かせる必要があると強調。「インフレは経済活動に負担を強いる」とし、リセッション懸念は「行き過ぎだ」と述べた。
引用:Bloombergより
このようにFRBはまだ引き締め政策を緩めるということはないでしょう。やや落ち着きを見せた様には見えますが、まだまだインフレが異常に高いということには変わりなく、ウォラー理事のように強力に引き締めるべきだという意見が大勢を占めるのは間違いないでしょう。しかし、今後については少し緩めていくのかもしれません。上記にもある通り、9月は0.5%を支持すると述べています。これまでは9月以降も0.75%の利上げがあるのではないかとか1.0%での利上げがあるのではないかという話も出てきていましたが、さすがに最近はそこまでの利上げの可能性については聞かなくなったような気がします。過熱感がやや落ち着いてきたという感覚はFRB内にもあるのではないかと思います。パウエル議長も今後は柔軟に対応していくと述べている通り、今後についてはまだ状況によってどのようにも変化する可能性があると思っていた方がいいのでしょう。
まとめ
今日は米国の新規失業保険申請件数について見てきました。米国経済はFRBの引き締め政策によって確実に冷やされてきています。今後はそれをうまくコントロールし、景気後退をせずにインフレを抑制できるのかということが焦点になってくるでしょう。その可能性は十分にあるとは思いますが、簡単ではないことは確かです。そのことはパウエル議長をはじめ多くの専門家も認めているところです。そういう意味ではまだまだ予断は許さないといっていいのだろうと思います。