人員削減が続く中でも新規失業保険申請件数は依然として低調。

米国の労働市場は非常に堅調ですが、それはいつまで続くのかというのが非常に注目されるところです。景気後退が意識され、金利も今後も高止まりすることが予想されるため、労働市場がいつまでもつのかということは非常に重要な問題となることでしょう。

人員削減が非常に大きくなる

1月は多くの人員削減のニュースが飛び交いましたが、それがデータでも非常に大きいものであったことが明らかになりました。

米国の雇用主が1月に発表した人員削減数は、2020年以来の多数となった。再就職会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスがまとめたデータで明らかになった。

  1月の人員削減数は10万2943人。前月の2倍を上回り、前年同月比では440%増加した。テクノロジーセクターが削減全体の41%を占め、小売りや金融機関でも1年前から増えた。

  チャレンジャーのシニアバイスプレジデント、アンドルー・チャレンジャー氏は「数年に及ぶ新型コロナウイルス禍での雇用活況は過ぎた」と発表文で指摘。「企業は景気減速に備え、従業員を削減し、採用を減速している」と続けた。

  米全体の雇用削減はまだ総じて低い水準にとどまっているが、企業による人員カットの発表は過去数カ月に相次いでいる。テクノロジーセクターが特に深刻で、ペイパル・ホールディングスやグーグル親会社のアルファベット、アマゾン・ドット・コムなどは大規模な削減計画を発表した。

  チャレンジャーの統計によれば、テクノロジー企業は昨年11月以降に11万793人の人員カットを発表した。

引用:bloombergより

このように米国の企業は現在の業績悪化や今後の経済状況を見込んで人員整理を続けているようです。これまではコロナ化からの回復需要もあり、非常に強い雇用状態というのは続いてきましたが、この流れも変わってきたようです。

新規失業保険申請件数は依然として低調

しかし、依然として労働市場は強いといっていいのかもしれません。1月28日までの新規失業保険申請件数は依然として低調であり、雇用は力強さを維持していることがわかりました。

米労働省が2日に発表した1月28日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は3000件減の18万3000件と、2022年4月以来、約9カ月ぶりの低水準だった。減少は3週連続。金利上昇や景気後退への懸念の高まりが起きているにもかかわらず、労働市場は引き続き堅調に推移している。

ロイターがまとめた市場予想は20万件だった。

市場予想に反して減少したことで、景気後退に陥った場合でも緩やかで短期間にとどまるとの慎重な楽観論を高めた。

調整前の申請件数は872件減の22万4356件だった。ケンタッキー州、カリフォルニア州、オハイオ州でそれぞれ申請件数が大幅に減った。ジョージア州とニューヨーク州では増加した。

申請件数は今年に入ってから低水準で推移し、労働市場の逼迫が続いている傾向と合致している。

今年1月21日までの1週間の継続受給件数は前週比1万1000件減の165万5000件だった。

今回のデータは今月3日に発表される1月の米雇用統計の調査期間と重なっていない。

労働省が今月1日発表した22年12月末時点の求人件数は1100万件。失業者1人当たりの求人件数は1.9件だった。

FWDBONDのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「失業率が過去数十年で最も低い水準を維持しているため、エコノミストは近いうちに2023年にリセッション(景気後退)に陥るとの見方を取り下げることになるだろう」と述べた。

ハイフリークエンシー・エコノミクスの米国チーフエコノミスト、ルベーラ・ファルーキ氏は「労働市場は金利の急速な上昇に対して有意な反応をまだ示していない」とした。

一方、国際的な再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは2日、米国に拠点を置く企業が1月に公表した雇用削減が10万2943件になったと発表した。前月比では2倍以上、前年同月比では5倍以上に急増し、2年超ぶりの高水準。リセッション(景気後退)に備え、ハイテク企業が過去2番目のペースで雇用を削減した。

JPモルガンのエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「失業保険申請件数とチャレンジャーの雇用削減とが発する一見対照的なメッセージを完全に一致させるのは難しい」と指摘。「この相違を説明する一つの可能性は、解雇された人々が失業保険を申請していないことだ。これは、簡単に再就職できているためか、退職金を受け取ったことにより失業保険を申請できる段階になるのが遅れているためかもしれない」とした。

引用:ロイターより

このように新規失業保険申請件数は依然として低調なようです。これだけ人員整理が起きているのにもかかわらず、失業保険が申請されないというのはかなり不思議な状態といっていいでしょう。記事の中では失業してもすぐに再就職できていたり、退職金等資金に余裕があるために失業保険を申請していないのではないかという予測がされていますが、本当のところはどうなのかわかりません。しかし、労働市場が堅調であるということには変わりなく、リセッションリスクというのは考えられているよりも低いのではないかと思われます。

とりあえずは推移を見守るのがいいでしょう

この矛盾する二つの結果というのはどうとらえればいいのかというのはよくわからないという感じです。おそらくは人によって楽観的にとったり悲観的に見たり様々なのかなと思います。個人的にはどちらの可能性も十分にあるし、今のところ確定するのは難しいかなという感じなので、今後の推移を見守りたいという感じです。おそらくは失業してもすぐに就職先が見つけられていたり、そこまで資金的に困難な状況でなかったりと様々な理由があるのでしょう。いずれにせよ労働市場が強いということでFRBは今後も厳しい引き締めを行っていくことになるでしょう。

まとめ

今日は労働市場の動きについてみてきました。労働市場が堅調ということは間違いないとは思いますが、矛盾する結果ということでやや困惑する状況かなという感じです。いずれにせよ我々のような個人投資家は安易な判断はしない方がいいでしょう。とりあえず今後の推移を見守りながら、あらゆる可能性を考えておきましょう。