今後は雇用統計よりも消費者物価の方が重要視されるのかもしれない

9月のFOMCに向けて今後の金利動向には非常に注目されるところですが、クリーブランド地区連銀のメスター総裁は9月の利上げ幅についてはまだ決めかねているとの発言をしました。そしてその決定にはインフレ指標を重要視し、雇用統計については重要視しない旨の発言もしました。通常は最重要視される雇用統計ですが、インフレ抑制を第一目標とした現在、雇用統計よりも消費者物価等、物価動向の方が金融政策に与える影響が大きくなっているようです。そういうわけで今日はメスター総裁の発言についてみていきます。

今後は雇用統計よりもインフレ指標の方が重要

市場が注目していたジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言ですが、もちろんパウエル総裁だけが講演したのではありません。多くの関係者の発言があり注目されています。その中でクリーブランド地区連銀のメスター総裁は今後の金融政策について雇用統計よりもインフレ指標の方を重要視する発言をしました。

米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は27日、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で3回連続となる75ベーシスポイント(bp)利上げを支持するかどうかについて、市場の関心が高い雇用統計ではなく、インフレ指標に基づいて決定すると述べた。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は26日に経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で行った講演で、成長鈍化などの「痛み」を伴ったとしてもインフレが抑制されるまで「当面」金融引き締めが必要との見解を表明。ただ、9月の利上げ幅については「入手されるデータ全体と見通しの動向次第」と述べ、明確な手掛かりは示さなかった。

米労働省は9月2日に9月の雇用予想を発表し、9月20─21日のFOMCの1週間前に米消費者物価指数(CPI)の予想を公表する。9月16日にミシガン大学が発表する消費者信頼感指数も注目される。

ジャクソンホール会議に参加していたメスター氏はロイターに対し、利上げ幅について「現時点で何の方向性もない」と述べ、インフレ指標とインフレ見通しが自身の判断材料になると発言。「インフレ率が低下基調にあると私が納得する証拠はまだ見られない。私はインフレがピークに達しているとも確信していない」と語った。

メスター氏はまた、2023年初めまでにFRBがフェデラルファンド(FF)金利を4%を少し上回る水準まで引き上げ、その後23年いっぱいはその水準を維持することを想定していると述べた。FRBは現在、FF金利を2.25─2.5%に設定している。

同氏は「FF金利が来年に再び引き下げられるとは思えない」とし、小幅な利下げを織り込む市場予想と反する見解を示した。

また、労働市場の需給が非常に逼迫しているため、リセッション(景気後退)は予想していないと発言。同氏は、現在3.5%の失業率が4.25%以上に上昇するとは考えていないとした。

メスター氏は、失業率の上昇は家計に打撃を与えるが、現在のインフレ率は受け入れがたいほど高く、FRBが行動を起こさなければ事態はさらに悪化すると述べ、パウエル議長と同じ見解を示した。

引用:ロイターより

メスター総裁はこのように発言し、今後の金融政策については雇用統計よりも消費者物価などのインフレ指標を重要視するとしています。パウエル議長をはじめ、FRB関係者は雇用や経済成長よりもインフレ抑制を重要視する発言をたびたびしています。そして今回のジャクソンホールでパウエル議長が明確に発言したことにより、その方向性というのはかなり強くなったのだろうと思います。そうであれば雇用などの経済指標というのはそれほど意識しなくなるというのはあり得ることなのだろうと思います。このインフレがある程度落ち着いて制御可能な段階になるまではインフレ指標がFRBの金融政策に与える一番大きなものとなるのかもしれません。

CPIがより注目される

今週は雇用統計やISM製造業景況指数の発表など通常であれば非常に重要視される経済指標の発表がありますが、今回はそれほど重要なものではないのかもしれません。しかし、雇用の安定というのもFRBの重要な政策の一つであり、全く無視するということはないでしょう。しかし、以前より述べているようによほどの悪いものでない限り雇用統計は今後の金融政策に影響を与えないのだろうという感じです。それよりもFOMC前に発表される消費者物価などの方が大きな影響を与えることとなるのでしょう。そして多くのFRB関係者は9月の利上げについてはまだ決定的なことは述べていません。そういう意味でも9月に発表される消費者物価の値というのは非常に注目されるものとなるでしょう。

まとめ

今日はメスター総裁の発言をもとに今後の金融政策について考えてみました。雇用統計があまり重要視されないというのは非常に珍しいような気がします。いつも雇用統計の発表には市場が大きく反応するものですが、それがなくなるかもしれないというのはなんか不思議な感じです。もちろん全く影響がないということはないとは思います。特に株式市場は一時的には大きく乱高下はすることでしょう。しかし、それはすぐに収束し、のちの消費者物価の発表へと関心が移っていくのだと思います。そういう意味でも9月の利上げというのは最後の最後までどうなるかわからないといったところです。