米国の労働市場は依然堅調。

インフレがピークを付けた可能性が出てきてはいますが、まだとても安心できる状態ではありません。今後も米国経済は深刻なインフレと景気後退の問題を抱えることになるでしょう。しかし、そのような中においても依然として労働市場は堅調なままであることが示されています。先週の新規失業保険申請件数は依然として低い水準を保っており、雇用は比較的安定していることが確認できました。このことは厳しい金融政策をとっているFRBにとっては安心材料となるとともに、インフレ抑制がなかなか難しいという意味も含んでいるところなので複雑な心境といったところでしょう。そういうわけで今日は米国の労働市場についてみていきます。

労働市場は依然堅調

先週発表された新規失業保険申請件数は市場予想を下回る結果となり、依然として米国の労働市場は安定していることが確認できました。

先週の米新規失業保険申請件数は予想外に若干減少した。歴史的な低水準近くにとどまり、労働市場の強さを示した。

  連邦公開市場委員会(FOMC)が高インフレを抑制しようと積極的な利上げを進めているものの、企業は力強いペースで雇用を進めている。10月の雇用者数は予想を上回り、9月には失業者1人に対する求人件数はなお2件近くあった。

  ホワイトカラー産業ではこの流れにひびが入り始めている。ただ、アマゾン・ドット・コムやメタなど有名企業による最近のレイオフの波は労働市場全体の状況を示していないと、エコノミストはみている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期にハイテクセクターは雇用を拡大したが、製造業や娯楽、ホスピタリティーなどの産業は求人を満たすのになお苦慮している。

  より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は22万1000件に増加した。

  季節調整前の失業保険申請件数は約6100件減少し、19万9600件となった。州別ではケンタッキーやジョージア、フロリダで減少した一方、ミネソタやノースカロライナで伸びが目立った。

  先週はベテランズデーが含まれ、祝日前後は数値が荒れる傾向がある。

引用:Bloombergより

このようにインフレが高止まりする中において、企業業績も悪化してきてはいますが、労働市場は依然として堅調といっていいでしょう。求人件数も非常に多く、労働市場はインフレをものともせず動いているといった感じです。ここまで労働市場が強いというのも正直すごいなという印象があります。このことは厳しい金融政策を続けるFRBにとっては引き締めを続ける良い材料となることは間違いありません。雇用が安定しているのであれば物価の安定に対して全力を投じることができます。雇用があまりにも不安定になればいくら物価安定を重視するといってもなかなか無視できなくなるところでしょう。そういう意味ではいいニュースだと思います。しかし、雇用があまりにもの強いということはインフレがなかなか落ち着かないということにもつながります。そういう意味では非常に困った状況といっていいのかもしれません。

市場はインフレのピークを織り込み済み

インフレはまだどうなるかわかりませんが、市場はすでにインフレがピークを打ったことを織り込み始めています。株価は上昇し、為替ではドルが大きく下落しました。また、住宅ローン金利も大幅に下落し、今後の金融政策の行方をすでに決めてしまった感があります。もちろんまだどうなるかはわかりませんが、現状その可能性は日に日に強くなっているのかなという印象です。本当にこのまま雇用が安定を保ちながら物価が落ち着きを取り戻すことができればソフトランディングも夢ではないのかなという感じです。しかし、今後数年は金利は高止まりすることも予想されており、しばらくはこれまでのような急激な成長というのはなかなか期待できないのではないかという感じがします。まあ、これまでがあまりにもうまくいきすぎていた感じもするのでもう少しゆっくりとした成長をしていくというのも悪くはないだろうという気もします。

まとめ

今日は米国の労働市場についてみていきました。相変わらず労働市場は堅調です。これが吉と出るのか凶と出るのかは何とも言えませんが、少なくとも悪いことはないのかなという印象です。インフレの抑制には時間がかかるかもしれませんが、雇用が安定しているのであればまあ何とかなるだろうという楽観的な予想ではあります。ただ、株式市場にとっては回復に時間がかかる可能性も出てきており、どちらがいいのかなといった感じです。いずれにせよ、雇用が安定していることは米国経済の力強さを示すものでもあると思うのでいいことなのだろうとしておきます。