不動産市場は明るい兆しも見えるが依然低調

物価の上昇がようやくピークを迎えたように見え、市場にも安ど感が漂っていますが、まだまだ経済は厳しい状況下にあることは変わりありません。特に不動産市場の減速は顕著であり、経済正常化へ向けての大きな足かせとなっています。ここが回復してこないと企業業績も個人消費にも大きな力強さは戻ってこないことでしょう。そういう意味では非常に重大な問題です。そういうわけで今日は最近の不動産市場についてみていきます。

中古住宅販売は依然低調

全米不動産業者協会(NAR)が発表した10月の中古住宅販売件数は、統計開始以降で最長の9カ月連続減となった。住宅ローン金利の急上昇が引き続き住宅市場に打撃を与えている。

  販売減は2月から続いており、統計でさかのぼれる1999年以降で最長の減少局面となった。米金融当局のインフレ抑制に向けた取り組みが金利の急上昇を促し、需要を圧迫。多くの世帯は住宅に手が出せなくなっている。

  NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は発表資料で「10月は住宅ローン金利の上昇により、より多くの潜在的買い手がローン審査をクリアできなくなった」と指摘。「住宅ローン金利が11月半ばのピークから下がっているため、現行の住宅市場サイクルで販売が底入れする日は近いのかもしれない」とも記した。

  10月の中古住宅販売在庫は122万戸と、3カ月連続で減少。販売に対する在庫比率は3.3カ月。1年前は2.4カ月だった。同比率は5カ月を下回る場合に在庫がタイトだと見なされる。NARのユン氏によれば、販売された物件の約4分の1は希望価格を上回る値で売れており、在庫の不足や、複数の購入オファーを受ける物件もまだ一部ある状況を浮き彫りにしている。

  中古住宅価格(季節調整前、中央値)は前年同月比6.6%上昇し、37万9100ドル(約5310万円)。

引用:Bloombergより

このように米国の中古住宅販売は依然として低迷しています。これは金利の急激な上昇による住宅ローン金利の負担が重しとなっているためであり、FRBの金融引き締めの影響の一つです。このため住宅市場は長きにわたって低迷を続けており、しばらく回復の見込みも立っていません。

住宅ローン金利は急低下

しかし、最近の物価の動きを受けて先行き金利の見通しもやや穏やかになってきた影響で、住宅ローン金利も落ち着きを見せ始めました。

米住宅ローン金利が週間ベースで約41年ぶりとなる大幅低下を記録した。フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の17日発表によると、30年物固定金利は平均6.61%と約2カ月ぶり低水準。前週は7.08%だった。

  今回の結果は算出方法の変更も反映している。フレディマックは現在、ローンの貸し手への聞き取り調査の代わりに、システムで収集したデータを使って平均金利を算出。この変更により、住宅ローン市場をより広範かつ正確に把握できるとしている。

  フレディマックのチーフエコノミスト、サム・ケイター氏は「住宅ローン金利は今週、インフレがピークを付けた可能性を示すデータによって急低下した」と説明。「住宅ローン金利低下は歓迎すべきニュースだが、住宅市場にはまだ長い道のりがある。インフレ率は依然高く、米金融当局は金利を高く維持する公算が大きく、消費者はその影響を引き続き受けるだろう」と述べた。

引用:Bloombergより

このように今後、FRBはこれまでのような引き締め政策を行わないだろうという期待感から、金利は急激に低下傾向にあります。そのため住宅ローン金利も急低下をしており、このことは不動産市場にとっては大きなプラスとなる可能性もあります。

依然不透明感は強い

不動産市場の動きというのはまだまだどうなるかわかりません。特に住宅ローン金利は金融政策の影響を大きく受けるため、今後も大きく動く可能性があります。そのため今のところいい感じにはなっていますが、この流れが続く保証というのはどこにもありません。むしろ景気の先行き等を考えると、あまりよくないような気がします。仮に金利が引き下げられたとしてもその時は景気が悪いということでしょうから、金利が低くなったとしても住宅はあまり売れなくなるかもしれません。そういう意味でも今後の不動産市場というのはなかなか厳しいといわざるを得ないのかなといった感想です。

まとめ

今日は米国の不動産市場についてみていきました。急激な金利上昇により、長期間にわたり低迷を続けており、その流れは全く変わっていません。住宅ローン金利がやや低下傾向にあることは良いことですが、まだ不確実な部分も多く、景気の先行きを考えるととても楽観的に離れそうもありません。そういう意味ではしばらく不動産市場も厳しい時間が続くもと思われます。