8月の生産者物価はエネルギー価格の上昇により大幅に増加

米国のインフレ圧力はまだまだ続きそうな勢いです。8月の生産者物価は大幅な増加となり、依然として物価圧力が高いことを示すものとなりました。しかし、その大半はエネルギー価格の上昇に伴うものであり、額面通り受け取っていいものかはなんとも言えないところです。

エネルギー価格が大幅に伸びる

8月の生産者物価は非常に大幅な伸びとなりました。

米国では8月に生産者物価指数(PPI)が約1年ぶりの大幅な伸びとなった。エネルギーと輸送のコスト上昇が全体を押し上げた。

  8月はガソリン価格が20%急伸。指数全体の上昇の大部分を占めた。食品とエネルギーを除くコアPPIは前月比0.2%上昇。

  サプライチェーンの正常化に加えて多くの諸外国での景気減速もあり、生産者レベルでのインフレ圧力は全般的に緩和してきている。しかし原油価格の上昇でこれまでの改善が脅かされる恐れが出ている。前年同月比でのPPIは1年にわたって減速トレンドが続いていたが、7月と8月は2カ月連続での伸び加速となった。

  エネルギーの項目で8月に上昇したのは、ガソリンのほかにジェット燃料やディーゼル油、暖房油など。サービス分野では住宅、貨物のトラック輸送、機械・機器の卸売りが上昇した。

  財の価格は2%上昇。ただエネルギーと食品を除いたベースでは0.1%増にとどまった。サービス価格は0.2%上昇(前月は0.5%上昇)。

  ポートフォリオ管理やヘルスケアなどPPI統計のカテゴリーのいくつかは、今月発表される個人消費支出(PCE)物価指数の算出に使われる。連邦準備制度理事会(FRB)はPCE物価指数をインフレ指標として重視している。

  7月はPPIのポートフォリオ管理・投資顧問のカテゴリーが7.3%上昇と大きく伸び、FRBが注視する重要なサービスインフレ指標の加速につながった。8月のポートフォリオ管理は0.5%上昇にとどまった。

  生産過程における比較的早い段階での物価を反映する中間財のコストは2.1%上昇。食品とエネルギーを除いた中間財コストは3カ月連続での低下となった。

引用:bloombergより

このように8月の生産者物価は非常に大きく伸びました。これはエネルギー価格の上昇が非常に大きく影響しており、それ以外のものは小幅な伸びにとどまっている印象です。全体の物価動向を見るときには変動の大きいエネルギーや食品などは覗いて計算されるため、インフレ圧力としてはあまり強くはないのかなという感じがします。しかし、エネルギー価格がこれだけ上昇しているということは企業活動や家計に与える影響も小さくなく、景気を左右しかねない重要な問題であると言っていいのかもしれません。

ソフトランディングはなかなか簡単には行かないだろう

インフレは鈍化傾向にあることは間違いないのかなと思いますが、その勢いというのはやはり緩やかであると言っていいのだろうと思います。そのためインフレとの戦いは長期間に渡るという覚悟が改めて必要になってくるでしょう。また、エネルギー価格の高騰というのは非常に頭の痛い問題です。エネルギー価格が高騰すれば当然ながら企業活動や家計に対して大きなダメージを与えることになります。そうすれば経済失速のリスクも出てくることも考えなければなりません。もし、失速の懸念が出てくるとなれば金融政策も緩和方向へと舵を切りたくもなりますが、依然としてインフレは収まっておらず、その判断は非常に難しいものとなるでしょう。うまくコントロールできればソフトランディングの可能性も十分にあるでしょうが、一歩間違えば経済も失速し、インフレも高く維持されるという最悪の事態も招きかねないということもあるのだろうと思います。

まとめ

今日は8月の生産者物価についてみてきました。インフレは落ち着いてきたとはいえまだまだ高水準です。その中でエネルギー価格も高止まりしているということは非常に厄介な問題だと言えるでしょう。ソフトランディングへの期待が高まる中、舵取りを間違えれば経済の失速も招きかねないということを気づかせるような問題だなと感じました。