今後の利上げの予定は全く読めない状況

インフレや金融不安など経済を取り巻く環境は日々悪化していると言っていいでしょう。その中で、どの様な金融政策が実行されるのかというところは非常に気になるところです。今後も引き続き引き締めが継続されるのか、もしくは一時的に利上げは見送られるのか、その判断によって市場は大きく動くことになるでしょう。そして昨日はその多くのヒントを与えるような発言がFRB内部から多く上がっていました。

ブラード総裁は今年あと2回の利上げの必要性を主張

セントルイス連銀のブラード総裁は、イベントにて今後も引き続き利上げを行っていく可能性について言及しました。

米セントルイス連銀のブラード総裁は22日、インフレ沈静化のために連邦公開市場委員会(FOMC)は今年あと2回利上げを余儀なくされるだろうと述べた。

  「インフレに十分な下押し圧力を与え、物価上昇率をタイムリーに目標水準に押し戻すためには、政策金利を引き上げざるを得なくなるだろうと思う」とブラード総裁はフロリダ州フォートローダーデールで開かれたイベントで発言。

  「今年はあと2回の行動を考えている。具体的にいつになるかは分からないが、遅いよりは早いほうがよいとこれまでにたびたび提唱してきた」と話した。

  FOMCが3月22日に発表した参加者の経済・金利予測では、政策金利の予想中央値は2023年末時点で5.1%だった。金利は今月すでにこの水準に達した。FOMCは6月に新たな予測を発表する。

  3月の予測は米経済がほとんど成長せず、インフレ率が急速に低下する状況に基づいていたが、実際には成長は非常に強く、物価圧力は期待されていたほど急速に緩まなかったとブラード総裁は指摘。

  だからこそFOMCは金利を引き上げる必要があり、失業率が1960年代以来の低さにある今の環境は行動する好機だと主張した。

  「労働市場が非常に好ましい状況にあるのは、インフレと闘い目標水準に戻すのには非常に都合が良い」とし、「この問題を片付けて、1970年代の二の舞にならないようにするべきだ」と促した。

引用:bloombergより

ブラード総裁はこのように述べ、今年はあと2回の利上げを行う必要があるとの考えを示しました。ブラード総裁は比較的タカ派的な意見を主張する人であり、そういう意味では今回もこれまで通り強気な姿勢を貫いているなという印象です。実際インフレは依然として強く、目標の2%はまだまだ程遠いと言っていいでしょう。そういう意味では何もおかしい話ではないのかもしれません。

カシュカリ総裁はまだ判断しかねている様子

しかし、そこまで強気な人ばかりではありません。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は次回の利上げについてはまだ判断しかねている状態のようです。

米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、来月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での追加利上げか見送りかの判断は、同氏にとって「五分五分」と述べた。FOMCはインフレ見通しを注視している。

  カシュカリ氏は22日、米CNBCとのインタビューで「今の段階では、6月会合での追加利上げもしくは利上げ見送りのどちらも判断が際どく、五分五分だ。重要なのは、われわれの作業は終了したと示唆しないことだと考える」と述べた。

  さらに「6月に利上げを見送るとしても、引き締めサイクルが終了したとの意味ではない。さらなる情報入手に努めているという意味だと私は捉える。その後7月に利上げを再開する可能性だってある」と続けた。

  FOMCは過去14カ月間、利上げを積極的に進めてきた。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジはほぼゼロから5-5.25%まで引き上げられた。FOMCは今年に入り、利上げペースを3会合連続で0.25ポイントと、それ以前から減速させた。一部当局者は6月13-14日のFOMC会合で利上げ休止を支持する姿勢を示唆している。

引用:bloombergより

カシュカリ総裁はこのように述べ、利上げについてはまだ中立的であり、判断はしていないということでしょう。おそらくは今後の経済指標次第で変わるという感じだと思われます。おそらくはこの反応が一番多いのかなとは思いますが、至って普通の考えのような気はします。

ボスティック総裁は据え置きの判断

更に現時点で6月は据え置くべきと判断している人もいます。

米アトランタ連銀のボスティック総裁は22日、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では金利据え置きを支持する意向をあらためて示した。一方、リッチモンド連銀のバーキン総裁は政策の選択肢については予断を持っていないとした。

  両総裁はリッチモンド連銀主催の会合に出席。ボスティック氏は「金融政策の効果には時間差を伴う。現在はその遅行効果が生じ始め、引き締まりが表に出始める時期のほんの序盤に差し掛かっているだけだ」と指摘。「大きな変化がない限り、現時点では事態がどう進展するか様子を見ることに違和感はない」と述べた。

  バーキン総裁は「6月会合には予断は持たない」と発言。これまで続けてきた利上げや銀行セクターの緊張に伴う信用基準の引き締まりが需要や物価を冷え込ませるという妥当性の高いシナリオがあるとの見解を示し、「それを確信したいし、そう確信することを引き続き見込んでいる」と語った。

引用:bloombergより

このようにアトランタ連銀のボスティック総裁は述べ、6月の利上げは一旦停止すべきとの見解を示しています。これまで急激に利上げを勧めてきており、その効果を確認すべきということのようです。確かに利上げの効果というのはやや時間差を持って現れてくるものです。そういう意味では早急な利上げというのは時にやりすぎるということもあるでしょう。そういう意味ではこの判断は非常にまっとうなものとも言えそうです。実際パウエル議長も据え置きの可能性について言及しており、その確率は低くはないのでしょう。そういう意味ではこの様な決定になる可能性も十分に否定できないのかなと思われます。

今のところまちまち

現在のところ、FRB内部ではこの様な意見があるようで、一言で言えば全くわからないというところでしょう。タカ派からハト派まで様々な意見が存在し、混沌としているという感じがします。これまでは高すぎるインフレを抑えるべく引き上げに対しては比較的意見が一致することが多かったように思います。多少のスピード感については異論はあっても引き上げに対して反対ということは少なかったのだろうと感じています。しかし、これからは強弱だけではなく方向性も違った意見があり、多くの議論を巻き起こしそうな予感がします。そういう意味では非常に不透明感が増したところかなと感じます。

まとめ

今日はFRB内部での今後の金融政策のスタンスについて見てきました。今の所次回の利上げについて、幅広い意見があり、なんとも言えないというのが現状でしょう。引き上げや見送りなどの姿勢を決定している人はおそらく少数だと思いますが、全く正反対の意見であり、まとめるのは大変そうな感じがします。ただ、多くはやはり今後の経済指標次第であり、その行方でタカ派にもハト葉にも変わると言った感じだと思われます。そういう意味では今後のインフレ指標の行方が大きく結果を左右するという状況に変わりはないのかなという感じです。