12月の雇用統計も相変わらず好調。しかし、賃金はやや鈍化傾向。

注目の雇用統計の結果が発表されました。内容としては依然として強い雇用を確認するものとなりましたが、賃金の伸びは鈍化しており、やや労働市場も軟化傾向にある可能性が示唆されました。これによって金融政策が大きく変わることはないような気がしますが、それでも強い労働市場がやや落ち着いてくる気配を見せたことは変化の兆しなのかなという感じです。

12月の雇用統計は好調な中にも鈍化の傾向を見せる

12月の雇用統計は引き続き好調な労働市場を再確認することとなりました。しかし、賃金の伸びは鈍化してきており、好調な労働市場もそろそろ限界が近い可能性を見せた形になります。

昨年12月の米雇用統計では雇用者数が引き続き力強い伸びを示したが、賃金の伸びが鈍化。近くリセッション(景気後退)入りする可能性を排除しつつ、米金融当局に利上げペースを減速させる余地を与えた。

  平均時給は前月比0.3%増(市場予想0.4%増)、前年同月比では4.6%増加した。11月は共に下方修正された。平均時給の伸び鈍化は金融当局に歓迎される可能性が高い。当局はインフレ率を目標の2%に戻す上で、特にサービス業の賃金圧力が大きな障害になっているとみている。

  雇用の伸びはヘルスケアや社会扶助、娯楽・ホスピタリティー、建設などの分野が主導した。一部のセクターは前月からほぼ変わらず。

  米連邦準備制度理事会(FRB)元理事で現在はシカゴ大学ブース経営大学院の経済学教授であるランドール・クロズナー氏は「金融当局は雇用減速を望んでいるわけではない。望んでいるのは賃金上昇率の低下だ。それは持続的なインフレを懸念していることが理由だ」と指摘。この統計により、2月と3月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では「50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ではなく25bpの利上げが実施される可能性が高まったかもしれない」と述べた。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、アナ・ウォン、イライザ・ウィンガー両氏は「12月の非農業部門の統計は熱過ぎず、冷た過ぎないゴルディロックス的な内容のようだ。労働力人口が増える中でも雇用が力強かったため、失業率を押し下げたが、賃金の伸びは鈍化した。労働市場の勢いは昨年末にかけて若干弱まったが、再び加速している可能性がある」と指摘した。

  全般的に求人件数が高水準を維持し、レイオフ数は低いものの、テクノロジーや不動産など一部のセクターでは労働市場の弱さが目立ち始めている。今回の統計では、非耐久財の製造業や人材派遣、情報処理の分野で雇用者が減少した。

  週平均労働時間は新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)になった直後以来の低水準となった。

  今週に入り、アマゾン・ドット・コムが従業員1万8000人強をレイオフする計画を明らかにし、不動産仲介会社コンパスも追加のレイオフを発表した。民間再就職会社チャレンジャー、グレイ・アンド・クリスマスが発表した12月の人員削減数は前月比では減少したものの、前年同月からは129%増加した。

  労働参加率は62.3%に若干上昇。25歳から54歳までの労働参加率も上昇した。

  家計調査に基づく就業者は71万7000人増加した。前月は減少していた。

引用:Bloombergより

引用:Bloombergより

このように労働市場は依然として堅調です。しかし、賃金の伸びは鈍化してきており、Amazonのように大幅な雇用調整を行う企業も相次いでおり、今後はこれまでのような雇用の安定というのはやや難しくなってくるのかなという印象です。今回のように失業率は低下傾向を維持しながら賃金が鈍化していくことが金融当局にとっては目指す目的のようですが、果たして今後もそのようにうまくいくのでしょうか。もしそれがうまくいくのであればリセッションを回避しつつインフレを抑制できるのかもしれませんが、そう簡単にはいかないでしょう。

大きな流れは変わらないだろう

労働市場が相変わらず堅調であるということですが、賃金の伸びは鈍化しており、やはり変化の兆しは出てきているように思えます。もちろんまだこのデータのみで何が言えるということはありませんが、少なくとも去年のような雰囲気とは違ったものとなるでしょう。労働市場が落ち着いてくればインフレ抑制にも大きく寄与するとみられるため、今後もさらにこの傾向が続くのかが注目されます。今のところはまだこの結果をもってしても金融政策の大きな変更の可能性というのはまだないのかなという印象です。確かに賃金はやや鈍化してきてはいますが、依然として高い物価上昇は健在であり、とても金融政策の変更という話にはならないでしょう。株価も一時的には上昇する局面もあるとは思いますが、大きな流れは変わることはないでしょう。

まとめ

今日は12月の雇用統計の結果についてみてきました。労働市場は相変わらず好調です。しかし、やや鈍化の傾向はみられるため、そろそろ好調な米国経済にも陰りが見えてくるのかなという印象です。ただ、依然としてインフレは健在で非常に強いものがあり、正常化までの道のりは険しいといわざるを得ません。やはり今年はあまりよい結果を期待できないのだろうという印象です。